《初めての告白の先に見えたあの日の約束42

そんなこんなで最悪の出會いから始まった僕ら三人の職場験學習であるが、僕にとっては度重なるように不測の事態が起こった。予想だにしていない出來事と言っても過言ではない。自分が面倒を見てもらっていた今ではしわがれた頬と手が良い意味で味のある梅先生がこう告げたのだ。

「ハルコちゃんか? あ~え~と、なんだったっけ? あ~そうそう、出張中で期間中は會えんよ」

今にでも折りたたまれてしまいそうな姿勢で自分で言って置きながらどこか不安げにそう言い、春香の手を意味ありげに握った。

「大きくなったね春ちゃんや。ハルコちゃんに似てべっぴんさんになりおって……。ほほ、ピアノの腕前も母親譲りかの?」「ええ、はい、梅先生。あの、ちょっと聞きたいことがあるのですが……母のことで」「おや、なんだい? 奈緒ちゃんから聞いてないのかい?」「え? なんのことですか?」

チラリと僕の顔を見た梅先生であるが春香を連れて別の教室へとっていく。

「じゃあ、若い二人にはまず朝から元気な竹組の子達と遊んでもらおうかな?」「うっす」「は、はい」

ベテランであり、期間中の監督者である梅先生が早々にご退場してしまいまだまだ新人臭が抜けない伊藤先生が戸いつつも僕と朋希を、まだ教室まで十メートルはあると言うのに賑やかな聲がここまで響き渡り鼓を刺激する竹組の教室へ案する。

言ってしまえば嫌な予しかしない。春香や他の子ならともかく、僕は子供が大好きと言う訳でもないし子供と遊ぶのが得意と言う訳ではない。ただ「春香が行くから自分も一緒についてきた」程度の軽い気持ちしか持ち合わせない半端もんだ。

「大丈夫よ、男の子で保育士を目指すような君たちならどうにか耐え凌げるわ」

それはどう意味だと問い返す前に、地獄の門は開かれ、二十人弱の子鬼達により僕らのは酷使されることになったのである。

ああ、春香や早く戻ってきておくれ。若さゆえに許される暴力の嵐、加減と言うモノを知らないパンチ、キック、浣腸の雨あられ。無邪気だからこそ怒ることも出來ない理不盡な悪戯。年上だからこそ怒れない純真無垢な悪魔の微笑み。

初日もしかも五分で僕は自分の軽率な行を悔やんだ。これなら奈緒と演劇の験を選べばよかった――そう思いそうになる瞬間も正直あった。金的を食らわされた時なんて割と本気で帰りたくなった。でも、寸前の思いとどまったのは隣で同じように人間遊と化した朋希が笑顔で子供たちに接しているのを見たからである。

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