《初めての告白の先に見えたあの日の約束46

じゃあ、あいつはどうだ? と、朋希に視線を向けると何やらギターを取り出し始めていた。こんな靜寂と喧騒が紙一重のところで均衡を保っている狀況で、朋希は手慣れた様にチューニングを耳だけで行い誰もが聞き惚れる旋律を奏で始めた。

決して耳障りにならない音量でなおかつ心地良いメロディー。指だけでコードを弾き、最初は何を弾いているのか分からなかったが次第に誰もが知る謡のAメロを弾き始めて寢れなくてぐずっていた園児が一人、また一人と朋希のアコスティックギターの旋律に瞼を重くしていく。

「かっこいいな~やっぱり朋希のギター。ずっと聴いていたい……」

不甲斐ない僕の代わりに園児を寢かしつけた春香がそう呟き座った狀態のまま目を瞑った。全の神経を耳に集中させてまで聞きたいのか。こんな方法を通用するのか甚だ疑問であったが自分も眠気に船を漕ぎそうになっていることに気が付き太ももを抓る。

日本のアニメと言えばまさにこれ! と言われる映畫の主題歌にメロディーは移り変わり、飽きることなく園児たちも大人しく耳を傾け気が付いたら眠りの世界へ。音楽の力とは末恐ろしい。春香の心まで一瞬にしてかっさらっていくほどの威力。やはりあの男は侮れない。

園児全員がスヤスヤと寢息を立て眠りにつくと朋希はその手を止めやり切った様に深く息を吐き相棒のギターをケースにしまってこちらに歩いてきた。

「確かに、お前に敵わないところは沢山ある。春香と出會った時期もそっちの方が早いし大切な思い出もたくさんあるだろう。でも、俺だって春香の馴染だ。絶対に負けないからな」

唐突に何を言い出すのか。周囲にいた先生達から黃い歓聲と言うのか「あらあれ、なに? 春ちゃんの取り合い?」「罪だね~まったくハルコちゃんの娘は」などなど、完全に冷やかしと取れる発言が沸き上がる。

「の、むところだ!」「し! 起きちゃうよ二人とも? なんの話か分からないけど、今は靜かにしてね」

二人の男から好意を抱かれてるとはつゆ知らず。てか、春香もなかなか鈍なところがあるようで、今にでも毆り合いの喧嘩でもしそうな僕らの間に割ってってきて「め!」って言って喧嘩両敗の拳骨を発した。

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