《初めての》告白の先に見えたあの日の約束52
翌朝も釣り糸の様に細く窓越しでは捉えにくい程の細雨が降っていた。
昨日の朝みたいに二人だけの時間を作らせない為にも、集合時間の十五分前に門前に到著したにもかかわらず、春香と朋希はすでに途中からはできそうにない會話をしていた。
「え〜そうなの? また新曲出たんだ? どんなじの曲なの?」「新譜としては二曲、オリジナルにアレンジを加えた曲も収録されてて、メローな雰囲気のあるバラードと、やっぱり定番のロックだな」「すごい! 聴きたい!」「そう言うだろうと思って持ってきたぜ。春香なら絶対に気にいると思う。てか、もう耳コピしたから実際に弾くけど聴く?」――件のCDをカバンから取り出し肩に背負ったギターを強調する。
朋希は僕の存在にはさも気がついていませんよ。ってで話をすすめる。
確かに雨音が邪魔で傘を差していることを加味すれば春香が背後の僕に気が付かないのは納得が付く。
だがな、想い人の背を見つけ早歩きになった同じ高校の男子生徒の制服を著用した人間を、そいつを背に背負う形で立つ春香と対面してる朋希が気がつかないわけがない。ましてや、ここには我が學園の人間は三人しか來ないんだ。なんだったら目が合って片方の頬を「ケッもう來たか」って合にピクリとさせたのを僕は見逃さなかったぞ。
「え、いいの〜? 梅先生にし時間もらえないか聞いてみる! あ、みやちゃんおはよう來てたんだ」
敢えて言う事じゃないけど、春香はそんなつもりがなくても軽い口調で付け加えるように言われた「來てたんだ」ってその言葉に深く傷ついた。まるで人數合わせで呼んだ人間にでも聲を掛けた。そんな合に僕はくみ取ったその言葉の意味を。
「よっ――」
僕と春香のやり取りから、朋希も春香の興味が僕から自分に來たことを察したんだろうね。最低限の挨拶だけを済ませて、僕と春香の間に割り込んでくると春香の手を取り歩き出した。
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