《初めての》告白の先に見えたあの日の約束53
「じゃあ、春香行こうぜ」「ふふ、楽しみだな~、昨日の朝も早かったらもしかしてって時間より早くきてよかった」 「俺だって春香ならこの時間には來てるって思った。なんせ、俺達は馴染で以心伝心だからな」
チラリと僕を顧みた朋希の表には「勝った」って書いてあった。
悔しい。何も出來ない自分に憤りをじずにはいられない。どうしてもっと早く起きて誰よりも早く來なかったんだ。一晩寢かせたカツカレーに舌鼓を打っていた自分が憎いぜ。
ハンカチを持っていれば豪快に噛んで引きちぎれるほどの嫉妬を抱き、先を歩く二人の後を追いかける。途切れることの無い會話と笑顔、同じ馴染でも僕にはしたことのない砕けた口調。春香が朋希に心を許していることは明白であった。
これが僕の知らない間の春香の友関係。強いて言うなら男関係か。
梅先生に事を話すと始業時間もまだまだ先で、本日も雨だから外の準備は行わず、ほとんど昨日の狀態のままで教室は使用出來ることもあり、時間まで自由にしていて良いことになった。
正味一時間、春香の興味はCDもといギターもとい寺嶋朋希に集中していたことは言わなくても良いことだ。由々しき事態に奧歯が鳴ることも言わなくてもいいこと。もっと言わなくて良いことは、僕が蚊帳の外であることである。
あまりにも自分だけが蚊帳の外過ぎて、続々と出勤してくる先生達に変な詮索をれられるのも嫌だったから、気で濡れる廊下を雑巾掛けして時間をつぶした。雨腳も強まり外に面する廊下は案外濡れていて、園児たちがって転んだら危ないと「が出るね? 雅先生」って聲を掛けてくれる先生たちへの返答とした。
「おや、雅くんはええのか? そもそも、やるなら三人でやらないと験學習にはならんぞ? 呼んでこようかの」「良いですよ別に。二人は趣味が合うみたいで今はそれどころじゃないですし」「流行りの曲はよくわからんけど、確かに朋希君のギターには才能をじるの。長年先生をやっているから分かるんだよ」
その子にどんな才能があり、どんな人間なのかも。と、梅先生は続けた。
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