《初めての告白の先に見えたあの日の約束54

「二人の関係もなんとなく分かるよ」「どう思いますか?」

L字の定規の様に腰の曲がる梅先生がニヤっと笑い奧歯を見せる。

「奈緒ちゃんと雅君を見てるみたいだって言ったら分かるかい?」「まあ、そりゃ二人は馴染らしいですからね……」

リズミカルなギターの旋律が聞こえる中で、梅先生はどこか遠い目をして園庭を指さす。

「昔あそこで三人が遊んでいたのを昨日のことの様に覚えている」

三人とは僕、奈緒、春香のことだろう。園庭の隅にある砂場を梅先生は懐かしいモノを見るような眼で見つめている。

「あの時も三人中一人は今の雅君と同じ気持ちを抱いていたんじゃよ? それが何を意味していると思う?」「分かりません。僕が春香を好きだったのはなんとなく想像つきますけど、奈緒がそれに嫉妬するとは思いません」「ぶっぶ~ちょっと違うの~。いや、だいぶ違うのかな? 昔も今も三人はなんも変わらんと思ってる私は。もし、何かが狂ったと言うのならあの日を境にかの」

定年退職を蹴ってまで保育士としての責務を全うする梅先生が今一度遠い目をした。

「あの日って?」「本當に何もかも忘れてしまったんじゃね。あの日のこともあれまでの日々のことも?」「春香のこともついこの間思い出したばかりです。そうだ、ハルコ先生はいつ帰ってきますか?」

今ならハルコ先生のことを聞けると思った。長差的に腰を屈めるより廊下に膝を付いた方が楽なので正座に近い形で座る。

「殘念だが、期間中は會えんじゃろね」「じゃあ、出張終わる日を教えてください。會いに來ますから」「ん~、どうしたものかの」

どうしてもハルコ先生とはどんな人なのかを確認したかったんだけど、梅先生は渋い顔をして口をまごまごさせている。通常勤務に戻る日くらいなら教えてくれてもいいはずなのに、返答に困っている。

「そうじゃよ、私あんまりハルコ先生と仲良くないんじゃ。教育方針の不一致での、喧嘩狀態なんじゃ。だから、ハルコ先生のことは春香ちゃんか奈緒ちゃんに聞くのが一番いい答えがあるよ」

そう言い逃げるように職員室へ歩き去る梅先生。確か、昨日も何か不自然な言をしてから、春香とどこかに消えたよな。

春香と朋希の関係もそうだが、梅先生のハルコ先生への態度も引っかかるものがあり、僕はさらに頭を抱えることになってしまったのであった。

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