《初めての告白の先に見えたあの日の約束59

どうせ今は全員が春香たちに夢中なのだ。僕一人教室を出て電話に出てもなんら支障はないだろう。

著信相手も確かめぬまま通話ボタンを押す。

「どう? 楽しんでる?」

「ああ、なお……奈緒じゃないか……」

安心する聲だ。どうしてこんなにもこの子の聲は僕に癒やしと活力を與えるんだ。

今一番聞きたかった聲にけない聲で返答する。當然返ってくる言葉は僕を心配するものであった。さすが奈緒である。

「どうしたのよ? 元気ないわね? 何かあったんでしょ?」

「ああ、いや、なんでもないさ! 子供たちが元気過ぎて疲れただけだ! そっちはどうだ? 演技してるのか?」

僕だって男だ。それなりのプライドはある。こうもいちいちの子に心配されていてはいつまでたっても男としてのうだつが上がらない。

全霊、我が持ち得るすべての男らしさを総員して噓をつき誤魔化した。

「……。それがさ! 聞いてよ、あのタカラジェンヌの昂様と一緒にロミオとジュリエットをやることになったのよ! すごいことよこれは! 私昨日から興しっぱなしで変なテンションなのよ」

僕の強がりに最初こそは意味ありげに沈黙したものの、電話口ではさすがの奈緒も噓には気が付かないようで、確かに聲からしてハイテンションなのが伝わるほどに早口でいろいろと報告してくる。

今は奈緒の聲が聞けてしだけでも元気が出ただけ良しとしよう。微量ではあるが先ほどまでの投げやりな敗北も薄らいできた。これならもうしだけ頑張れそうだ。

「あ、そういえばさ、春香は眠そうじゃない? 昨日遅くまで付き合わせちゃってさ、結局お泊り會したんだよ~」

「え、そうなのか? いや、元気そうに朋希と謡歌っているけど?」

「聞いてないの? ああ、てかさ、やっぱりその朋希って人が春香の言ってた子?」

「ああ、しかも馴染だとさ」

春香が昨日奈緒の家に泊まっていた。

門限がある春香がお泊りしてまで奈緒の家に泊まった理由って? 確か春香自も奈緒に用事があるようなこと言ってたし、奈緒も誰かに話したい話題もあって、偶然が重なってお泊りすることになった?

それとなく奈緒に春香がどんな話をしに來たのか聞いてみる。

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