《初めての告白の先に見えたあの日の約束62

どうせ勝ち目はないのだ。春香を困らせて無駄な時間を使わせる訳にはいかない。何より今から音楽って言う二人の“特技”を研磨して更なる高みを目指す準備をするんだ。素人で何も楽が出來ず、好きな音楽も限りなくゼロに等しい――マニアックなインディーズバンドしか聴かない人間が同行しても邪魔になるだけ。

邪魔にならなくても墓を掘るのが目に見えていたので潔く帰ることを決めた。

「用事あるからさ、今日は二人で練習しなよ。じゃあ、気をつけて」

そう別れを告げ帰路につく。

春香が何か言おうとしたが朋希がそれを制する様に足早に歩き出したものだから結局何も言わず手だけを小さく振った。

日中どれだけ渇したことか、雨が止むのを。今は皮にも傘を差す理由はなかった。

自分は何をしているんだと叱りたくなる。々しくも振り返り、仲睦まじく寄り添うように歩く二人の背中を負け犬の神で見つめる。

時折、朋希が春香の肩をどつくと、それに春香も反撃する様子が伺えた。まるで戯れ合う子貓達の様だ。本當に仲がいいんだ二人は。どこかの誰かさん達の様だって言われたらしっくり來る景といえる。

「だ〜れだ?」

そんな二人の背中が曲がり角を曲がって見えなくなるころ、背後から水しぶきを上げてまで走ってこちらに向かってくる足音が聞こえてきた。そして抵抗する間もなく背中に誰かが抱きついてきて視界が奪われた。

こんなアグレッシブな挨拶の仕方をするのが誰だって? 愚問すぎる。間髪をいれずに即答してやる。

「奈緒だろ。見えいたことを。僕を誰だと思っているんだ」

「せ〜か〜い! みやび相手だからやるんでしょ。どう、驚いた?」

抱きつかれたまま耳元でそう質問される。耳が帯だったら果てていたところだ。

驚いたも何もないだろ。普通なら驚く。が、生憎だがこう言った経験がそれこそ誰かさんのせいで富なので別段特別なリアクションを取る気もない。その代わりと言ったらなんだが、セクハラをすることにした。

「隨分と會わないうちに重くなったんじゃないか? あと、、何か詰めてる? いつもよりデカくない?」

「ぶっ殺す! 今、ここで彼いない歴=年齢のまま地獄を見せてあげるわ!」

コラコラ、一介の子高生が言うセリフじゃないぞ。コブラツイストも今をときめくJKが真っ先に繰り出す攻撃手段ではない。本來なら貓パンチ的なやる気のない攻撃方法を取るべき。コブラツイストはれっきとしたプロレス技だ。

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