「一応あたしから二人を紹介するね。あたしたちのクラスメイトの拓哉君とその彼で他のクラスの優香さん。多分、ていうか、絶対に勘違いしていると思う。この子は春香じゃないよ？」

「そうなのね――」

奈緒の指摘をすんなり聞きれた母さんは深く頭を垂れた。そして謝罪の言葉を続けてから二人へ改めて挨拶をした。

「勘違いしていたとは言え、不快な思いさせてごめんなさいね。さっきのことは忘れてくれるとありがたいかな？　なんてね、これからは汚名返上に努めます。改めてご挨拶させて頂くわね、雅の母です。愚息が何時もお世話になっております。本日は末なモノしか準備出來ていないけど、ゆっくりしていってね」

「はい！　俺こそ、雅には何時もお世話になってます。サッカー部のこともこいつがいなかったら解決出來なかったし、俺は俺でずっと現実から逃げている駄目人間のままだった。それに、大切な彼ともこうして一緒にいられるのも夢のまた夢だった。だから、いま、こうして笑顔で生きていられるのも、全部雅のおです」

拓哉のその熱い思いに僕のがくなる前に、普段は僕のことを褒めることが一切ない母さんが満面の笑み――気悪いほどの恍惚とした表をして拓哉の手を取り握りしめた。

「バカでお人好しで優不斷で男らしいところなんてこれっぽっちもない愚息だけど、私達の自慢の息子なの。ありがとうね、貞でガキ臭いこんな子をそこまで必要としてくれて……、あらやだ、歳を取ると涙もろくなって嫌ね」

貞は余計だろ。貞は。優香さんが橫目で僕の顔を盜み見てバツが悪そうにしているぞ。その最の息子の評価をドンドン下げているのは紛れもなくあんただ――ってツッコミは心のだけにしておく。

「この親にしてこの子あり。おばさんも素敵な母親だと思います。息子のことなんでも知っているのってそれでけ息子のことを常日頃から気に留めて大切に思っている良い証拠。それに本音をぶつけて叱咤激勵するなんて普通は出來ないと思う」

八割が叱咤であるけど、たしかに母さんの嫌味はそこまで嫌味として捉えたことはない。寧ろ「なんだとコノヤロ！　見返してやる」って毎回反骨神で行している。なるほど、これが母さんのやり方なのか。

そんな母さんの小言を今後は前向きに捉えることを決めた矢先、その老婆心から來るお節介な小言が拓哉＆優香さんカップルにも飛來することになった。