《初めての告白の先に見えたあの日の約束69

「そうなんだ。じゃあ、おばさんのだけにしよう」

「……はあ、私自信ないです」

普段朗らかで元気な優香さんがため息をはきだした。

「どうして優香さん?」

「だってですよ? この味を知ってしまったたっくんの胃をどうやって摑めばいいんですか? じゃが……一応得意料理なのに……」

僕の問にそう返答があると、母さんはし考えてから大げさに笑ってみせた。

「心配いらないわそんなこと。隠し味は全て。拓哉君をすればするほど、優香ちゃんの料理ももっと味しくなるし、拓哉くんも私の婆臭い料理より大切な子の手料理を一番味しいと思うわ。だって、私だって元は下手くそだったからね」

「そうなんですか?」

「旦那に好かれる為にたくさん勉強してたらいつの間にか上達してた。別にこれが味しいとは思わないけど、二人が喜んでくれる味を出せる様になった自覚はあるわね流石に。結婚してからもう二十年近くなるし」

誰もは最初からできれば苦労はしない。総締めくくり母さんは自分の食を片し、キッチンの後片付けを始めた。

 

デザートのパンナコッタを二杯平らげた拓哉を先頭に、僕の部屋へ移することになった。

「食った食った、毎日あんなご馳走が食べられるなんて雅は幸せものだな」

「そうかな? 昔からああだからな〜」

「あたしが料理下手なんじゃなくて、おばさんの腕前が異常なの。だから、あたしの料理がああなるのは仕方ないこと」

普通にスクランブルエッグを作っていたのに、皿にのせる頃には黃かったはずの卵が暗黒質も驚きの真っ黒焦げになっていたのは、あれは母さんがスクランブルエッグを作るのが天才的に上手いからで、奈緒の料理の腕がヘッポコなのが原因じゃないのか。そうかそうか、誰のせいで卵が嫌いになってしまったのか、小一時間問い詰めたいくらいだ。

「なに? なんか言いたそうね?」

「別になんでもない。ほら、母さんが言ってただろ、隠し味はだって。きっと奈緒もする人が出來たらめちゃくちゃ上手くなるんじゃないのか?」

花嫁修業って昔から言われる様に、然るべきときが來れば奈緒の致命的な料理音癡もしは直るだろう。奈緒のことだ、一生懸命努力してうちの母さんなんてすぐに追い抜いて立派なママになるはず。第一に、奈緒みたいな気立てのいい子が作った料理を誰が不味いと言って殘すだろうか。鼻くそを食べれるくらいの人間なら容易く完食するに違いない。

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