《初めての告白の先に見えたあの日の約束71

「どんな些細なセリフでも一切の妥協がない、どころか句読點の付け方から嘆符まで、どれをとってもまるで生きてるかのよう。あたしなんかと違って、表現のレパートリーが富。ため息だけのシーンでも、喜怒哀楽を表現出來るなんて天才だよほんと。憧れちゃう」

いくらお人好しで誰とでもすぐに仲良くなれる奈緒でも、ここまで短期間で人を褒めちぎる事はいまだかつてない。しかも、相手は男だ。前代未聞と言っても良い。前のめりになりながら興気味に木村竜人を賞賛するその姿に、僕は言いようもないを抱いてしまっている。

「端的に言うと、かっこいい! 惚れちゃう! あんなのずるいよ! ね、優香ちゃん?」

「え、は、はい!」

「やっぱり優香ちゃんもそう思うよね!」

的に返事してしまったが否めない優香さんのその返答にご満悅になる奈緒。尊敬がLOVEに変わったとでも言いたげな一連の言に、この場にいる僕、拓哉、優香さんはしだけ言葉を失った。

僕はこのの奧に湧き上がるなんとも言えないにそれどころではないってのが一番の原因だ。奈緒がここまで男のことを評価するなんて変だ。いくら自分も演劇の道を進みだしたとは言え、相手は自分よりはるか高みにいる雲の上の人間。ファンの言としてはいささが行き過ぎていると思う。

「ほんとさ、みやびもあれくらい素敵な言出來たらよかったのにね! 今後の為にも!」

ああ、なんかイライラする。理由が分からないが今の発言はすげームカつく。なぜ、ここまでイライラするんだろうか。頭を掻き毟りたい衝が半端ない。

「おい、どうした?」

それは無意識な行であった。

何気なしに頬杖をして奈緒の話を聞いていた僕は、持て余している逆手の指で小刻みにテーブルを連打していた。隣に座る拓哉に聲を掛けられるまで指先が痛いことにも気がついていなかったのだから、相當にイライラしていたのだろう。

「あ、優香ちゃん! おばさんがモツ煮の仕込み見せてくれるって! いこ!」

「え、ぜひそれは見てみたいです――」

一方的に話をしていた奈緒のスマホが鳴ると二人は足早に一階へと降りていった。

「で、どうした? 珍しくイライラしてたみたいだけど?」

「わかんない。奈緒があいつの話をするとすげームカつく。普段、あそこまで男を褒めることないのに、なんだよ、くそ!」

子がいなくなったことで大びろげに苛立ちを表に出す。暴にレモンティーのったカップをテーブルに戻し、を尖らせる。典型的な拗ねてますってポーズだ。

      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください