《初めての告白の先に見えたあの日の約束79

「みやびせんせーおっそ~い! そんなんじゃボクはつかまんなよ~」「ともきせんせええ! のろまさ~ん! ここまでおいで~」

多勢に無勢。相手は百戦錬磨の遊び人に対しこちらは連攜が全く取れていない自車の車も同じ。點々と設置された遊の周りをグルグル回る子供達を、僕と朋希は別々に追いかけ回すだけで、まるで壊れたやじろべえの重しが回転してお互いを追いかけっこをしているようにしか見えない。

「ああ! もう! そっちだともぉ……」

そういえば面と向かって朋希の事を呼んだことがないことに気が付き、応援要請を中斷してしまう。

「なんだよ! すばしっこい奴らだ! みや……」

向こうも向こうで同じことを思ったようで互いが中途半端に視線を向け合うことに。

「ほら~二人とも頑張れ~! 音楽も遊びも互いの呼吸を合わせることが大事なんだよ~二人も協力しないとみんなを捕まえられないよ!」

無言で互いの出方を伺う二人、子供用の小さなピアノを園庭のベンチでの子達と楽しそうに弾く春香の聲が一層際立ってしまう。

年よ闇雲に走るな。仲間を頼れって、ある人が歌ってる。まあ、クールな君が知ってるわけないか」

春香が音楽の事を例に出したので僕も自分が唯一好きなバンドのボーカル兼ギターが雑誌の取材に答えた時のセリフを、まるで僕の事に興味を示さない朋希にぶつけてみる。

「峰岸達郎。知ってるに決まってる」

そうボソッと言った朋希はまた走り出す。知っているのは意外であるし知っているならなおさらここはお互い協力し合って目標を達させるべきである。

「まあ、向こうがその気がなくても僕はその気があるからな。魂のロックバンド銀ボーイズのファンとして峰岸先生の言葉を蔑ろにするわけにはいかん」

僕には変な拘りがある。好きになったにはとことんのめり込み、陶酔する癖がある。件のロックバンドも青春パンクロックを時代の流れに逆行しながらも長年歌い続けてきている。友を思う気持ち、青春にい焦がれる青臭い歌詞が僕は大好きなのだ。だから、彼らの歌う曲に、彼らの一ファンとして恥ずかしくない生き方をしないといけないのだ。

「朋希! 僕はそっちから追いかけるから、挾撃しよう!」「俺に指図するな!」「僕じゃない、峰岸先生が言ってるんだ! 駆け抜けろ青春を君も聞いてるだろ!」「當たり前だ! あの曲がなければ俺がギターを始めなかった!」「じゃあ、やることは分かってるだろ!」

朋希は何も言わなかった。でも、ここから僕らは二人で効率よく標的を捌いていった。これが大人のケードロだ。ある程度纏まったら門番とハンター役に別れて獲を捕獲するだけだ。正直造作もなかった。が、バリバリのインドア派とアウトドア派のコンビである。簡単に限界が來てしまった。

せっかくコンビネーションが取れ始めたと言うのに寺嶋朋希の足がピタリと止まってしまったのである。

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