《初めての告白の先に見えたあの日の約束81

「……」

「……」

妙にご機嫌な春香に別れを告げ、野郎二人は歩き出し、菅野家恒例の母親からの嫌味もにこやかなにけ流し、父親不在のため3人で食卓を囲んだ時も、嫌な顔一つせず饒舌に菅野家の閻魔様と談笑していた朋希であったが、僕と二人っきりになった途端に魔法が解け言葉を忘れてしまった石像の様にだんまりを決めこんでいる。

「あっと、……お茶飲むか?」

「お、おう、サンキュー」

どうやらけ答えは出來るようだ。朋希は冷たいお茶が波々と注がれたマグカップを僕から取るとそれに頻繁に口を付けている。寒いのだろうか片腕も頻繁にさすっている。挙がとても忙しそうでなんとも落ち著きがない。

「……あ、やっぱり味いな〜このお茶」

ラ○フガ○ド信者が気まずさからの発言をする。お茶なんて數カ月ぶりだった。

「そうだな、こりゃ伊○園の玉のやつだろ? しかも最近新しくなったパッケージだ」

まさかの返答に手元のペットボトルを確認する。

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「え、なんで分かるの? お茶マニア?」

「飽きさせないためにはいろいろ飲まないといけないからな。知っているからこそ提案が出來るんだ」

「そ、そうなんだ?」――、提案ってなんだ? 家でこのお茶がいいって母親にプレゼンするのが朋希ん家の習慣なんだろか?

よく分からない會話をするしかこの沈黙を破る方法はないから、ここは適當に相槌を打っておく。

そりゃそうだ、出會ってからまだ一週間も経っていない。手元にある近なから話題を見つけるしか會話が立しない。だから、僕自も會話がなくなると気まずくなりお茶を必要もないのに飲んだり、寒くも無いのに無駄にかしたりしている。この沈黙が一番怖かったから。

「あ、おかわりあげようか?」

「あ、サンキュー」

そんな僕よりも先にコップを空にした朋希に二杯目の茶を注ぐ。そして、間髪れずそれに口をつける朋希。なんとも忙しない二人である。

「……」

「……」

壁掛時計の秒針が時を刻む音が明瞭に聞こえる。おかしい、いまは丑三つ刻じゃ無い。世間的にいうならゴールデンタイムだ。なんでこんなにも空気が重い。こんなことならかっこつけず春香もえばよかったんだ。後悔しても時既に遅しってね。下で楽しそうにバライティー番組をみて笑っている母へどうやって助けを求めようか思案する。が、當然だがいい手なんか思いつかない。

――、しかし、向に坐る朋希が柄にもなく大聲を発し急に立ちあがり僕の數ない趣味であるインディーズバンドのCDが並ぶと棚に駆け寄った。

「お、おい! これってまさか!? 噓だろ? 今や絶版中の絶版と言われる銀BOYZの貞総ヤングじゃねええか!」

「お、あ、そう! 知ってるの?」

「あたりまえだろ! オレが最初に完コピしたのはこの曲だ!!」

目が走っている。勢い余って涎が口角から垂れている。それにも気が付かないくらいと考えると、まじで興しているようだ。

「しかもこれ、直筆サインってるってことは、まだ駆け出しだったころ金無い峰岸さんが実費でもいいからってCD化してファンに一枚一枚手渡ししてた奴だろ・・・50枚も世に無いって話しだぞ……」

親父から「聴け、今すぐ聴け。そしてべ、踴れ!」って意味不明な理由で譲りけた代なんだけどな。朋希はゴミ捨て場で一億円を見つけた守銭奴の様に震いしながらの半寫真がジャケットとなっている一枚のCDに夢中だ。

「……、あげよっか?」

「――!?」

朋希が人間とはとても思えない聲の聲を上げ、ゆっくりとこちらへ振向くと思考回路が急停止したのかフリーズした。

「お〜い? ともき? お〜い? 大丈夫か? いらないのか?――」

しい! くれ! いや、是非とも頂きたいデス!」

「ぷ、ちょっとお前、キャラ変わりすぎ。良いよ、あげる。本當の価値が分かる人が持ってる方が良いに決まってるよ」

「だって、お前これ、俺がどんなに探してもみつからなかったんだぞ? ありとあらゆる手段を用いてもゲット出來なかったのに・・・それを、おまえってやつは・・・菩薩様か よ……やべー涙出てきた」

まじで泣いているのを見ると本當に思いれがある曲なんだなぁ。まあ、僕自も初めて春香と行った大事なカラオケでも、何一つ悩むことなく當然の様に熱唱してたけどね。あれ、もしかして過激なこの曲をあの時僕が熱唱しても春香がどん引きしなかった理由ってーー。

「実は、これはオレが春香に初めて歌ってやった曲なんだよ。転校してきてばっかで毎日教室の隅で泣いている春香に、どうしても元気になってしくてさ・・・、まあ、完全に選曲ミスってるけど。」

そうだな。曲名通り泣いている子供、しかもの子に歌い聞かせるような崇高な曲では無い。むしろ、思春期真っ只中の中高生に聴かせるべき一曲だ。

「でも、春香、笑ってくれたんだ。その時の笑顔、あれは今でも覚えてるぜ……」

「それで好きになった?」

「嗚呼。その時だ、俺この子の為なら何でもしてやるって思った」

「そっか、そうだったんだ。ステキだねそう言うの」

なんだろうか。普通仇からこんなロマンチックな想い出話し聴かされたら嫉妬しても良いはずなのに、イライラするどころかホッとしている。こいつで良かったとさえ、思えてしまう。

「……。ふーん、実は、俺もなんだかホッとしたわ」

「なんでよ?」

「お前――失禮、菅野雅が春香の大好きな初のみやちゃんで。あ、あくまでも初だからな! 今は分からんからな!!」

「へえ、春香の初ってやっぱり僕なんだ〜。羨ましい?」

「めちゃくちゃ羨ましい! だってあの春香だぞ!? おまえうれしいだろう普通!?」

學園一、二と云われる程のが、自分を好きだったなんて事が分かったらそりゃ、普通の男なら泣いて喜ぶだろう。僕だって春香が馴染みって分かった日から何回もその妄想をしては泣いて喜び、愚息も溜めに溜めた思いを泣いて悅んだもんさ。

「お前、本當、最高だな雅。春香が俺と雅が似ていると言っていた意味がやっと理解できたわ」

「僕も朋希となら親友になれる気がするよ」

なにがどうなったらそうなる? と、文章で説明しろと言われたら絶対無理。言葉で説明しても8割の人間は理解してくれないだろう。でも、僕はたしかに朋希へ親に近いを抱いた。何事にも変えることの出來ないモノ、それは拓哉にもじたし奈緒にも昔からじてる心の奧にある溫かいだった。

「改めてよろしくな」

「うん、こちらこそよろしく」

野郎二人で熱く語り合い、わされる握手。お互いの第一印象など無かったかのように、その後の僕らは馬鹿みたいに語らう。特に、お互い知らない時期の春香の話しを重點的に語り合うことにした。

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