《初めての》告白の先に見えたあの日の約束82
ここからは朋希から聞いた春香との出會いからその日々の思い出話である。
春香が朋希のクラスに転校してきたのは、世間がクリスマスに浮かれだした12月の1日だったそうだ。その日は雪が降り級友誰しもがそんな天気にも関わらず朝から校庭で遊び倒し、霜焼けやらで頬や耳、指先を真っ赤にさせているのに、春香は顔面蒼白でまるで生気をじられなかったそうだ。目だけが真っ赤に充しており、目の下は青白くなっていて、それがクマであるのことを知ったのはもっと後のことであった。
「ねえねえ、どこからきたの」
「その髪留めかわいいね」
「何して遊ぶの好き?」
好奇心旺盛の小學二年生、時期外れの転校生と降雪によりテンションがMAXな主に子が春香を取り囲み様々な質問をした。
「春香ちゃん、魔法おじゃまーる見る?」
「そのお洋服可いね! どこで買ったの?」
「髪の真っ黒できれいだね!」
今の春香からは想像もできないけど、そのことごとくを春香は無視をした。ガン無視もガン無視。まるで置の様に機の木目を凝視し、ただただ、その場に人形のごとく佇まいで無言を貫き鎮座していた。
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「無口な子、つまらない。みんな行こ」
たかだか七、八歳の子供であっても、四十人も集まればそれなりの組織としてり立つもので、リーダー格であり世話好きで絶大な人気者である一人のの子がそう言っただけで、春香に興味を示す子生徒は激減した。
同に対してそんな態度を取った春香に対して、次に押し寄せたのは男子共の脳天気な質問だ。そんな狀態の春香が快活にそして明瞭に答えるわけもない。こちらもすんともうんとも言わないで、頑なに機の木目と睨めっこをし続けた。結局、一週間もしないうちに春香はクラスから孤立し、誰からも相手をされない可哀想なの子となってしまったのだ。
「朋希、いいのかそんなんで! 見損なったぞ!」
「待て待て、まだ話の続きだって。俺だって今思い返しても、自分とあの頃の友達に怒りがこみ上げてくる」
そりゃ、話の腰を折りたくもなる。聞いているだけで悲しくなる。あの春香が孤立しているんだ。そんなの見てられない。今の僕なら何がなんでも笑顔にしてみせる。それが、好きな子に対する男心ってもんだ。
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「でもな、雅、その頃の俺たちはただの馬鹿なガキだ。人の気持ちなんて知らないんだよ。俺だって最初はどうしていいか分からない。ましてや、當時の春香はまじでいつも機だけを見ているか、泣いてるかだったんだぞ。聲かけても何も言わないんじゃどうしようもない。雅たちと違い、俺は朗らかで明るい春香を知らないから、當時はこれが春香なんだと勘違いしてたんだ」
そう弁解する朋希が野猿たちのリーダー的存在だった。席も前ということもあり、挨拶だけは毎回行い、ことごとく無視され続けた。それでもめげないで聲をかけ続けたのは、ただ単にほっとけなかったからだと。右も左も分からない新しい學校で、一人取り殘される春香には、それは相當の不安と困窮する出來事が多かった。
移教室の場所、二人組、班での清掃、グループワークなどなど、その中でも二人組を組ことが多かった育で春香はどうしようもない狀態に陥った。男21人、19人で編されたクラス、どうしもて子が一人あまり、男子と組まされることになる。當然、春香があまり男子と組まされることになるのだ。
「お〜い、誰か小鳥遊と組んでくれる子はいないのか? ほら、子、小鳥遊は転校してきたばかりで友達もないんだから今回は誰か男子と組んでくれないか?」
そこで率先して手を挙げることが出來る子供がいるなんてはことはあり得るはずもなく。靜寂が続けば続くほど春香は見世小屋の珍獣の様に級友の冷たい視線に曬された。男教師が「お前ら、ホント、冷たいな!」と聲を荒らげれば荒げるほど、子生徒たちは春香に対して冷たくなる。自分達は悪くない、悪いのは春香だと思った子は何人もいたはずで、その一人が手を上げて言ったのだ。
「せんせ〜い、私たちたくさんこれまで聲かけました。それもで、挨拶も何もしなかったのはそっちです」
その言葉に、春香の肩が震え出したのを気に、男教師の反論を前に、一人の男が名乗りを上げた。
「先生! 俺、男子だけど小鳥遊さんと組んでもいい?」
「そりゃ、どのみち誰かが組むんだし朋希がいいならそれでも構わんが、そっちの相方はいいの?」
「裕貴は菫と組めばいいんじゃね? 家近いから仲良いしな?」
「お、俺は良いけど……菫はどう?」
「うん、いいよ」
実は裕貴と菫は馴染同士でお互い良い意味でも悪い意味でも意識している節があったのだ。數日前に別時間で「あいつと一緒の遊ぶ機會がもっとほしいと」と相談をけていた朋希は、とっさの判斷で組替えを提案して奇跡的に周りの級友たちがそれに合わせて二人組みを組み直した。
「俺でもいい相手?」
「……、ありがとう……」
「――!? めちゃくちゃいい聲してるじゃん!」
「……そんなことないよ」
転校初日の自己紹介ですら言葉を発することがなかった春香の第一聲は、とても春香らしい言葉であった。それはとてもか細い聲量で、育の準備を始める喧騒の中では無に等しいのに、朋希はそれを聞きらさないだけではなくとても魅力的にだと絶賛した。 
うなだれるだけでその長髪で隠れる表を一切変化させて來なかった春香がその時、初めて年相応に反応して頬を紅させたんだ。朋希がそれを見てどう思ったかは、その時から今日までの行を見れば分かる。そう、一目惚れだ。春香の聲とその表に、朋希の心はいとも簡単に盜まれてしまったのである。
その日から朋希の「春香を笑顔にしよう」作戦は始まった。子が好きな食べからTV番組、洋服などありとあらゆるジャンルの報を全力でリサーチしては、春香に質問しまくった。
「俺さ、昨日カレー作ったんだけどさ、春香はどう作れる?」
「……ママのが食べたい……」
突然泣き出す春香。
「じゃあ、駅前の可い洋服屋今度いこうぜ!」
「ひぐ、ママ……ひぐ……の……ヒグ、……手作りがいい……」
嗚咽を通り越し過呼吸が心配されるほどのひゃっくり。
「じゃあ、じゃあ、好きな遊びはなに?」
「木登り……、みやちゃん……なおに會いたいよ……」
春香の口からその見た目とは裏腹にアグレッシブな単語が出てきたことに対して、朋希が反応をする前に、春香は聞き覚えのない名前を呼ぶと機に突っ伏して本格的に泣き出してしまった。
「みやちゃん? なお? それは友達?」
「……うん。わたしの大切な大切なお友達」
「會いに行こうぜ! 俺も一緒に行くから」
「パパがもう會うなって……お前が辛い思いをするからって……」
これ以上の詮索は出來なかった。教室の端の席とは言え、周囲の視線が集まり出してしまい朋希はバツが悪そうに頭をかくしかなかった。朋希自、級友から「泣かした! いけないんだ!」って言われても別段気にすることはなかったが、子が「また泣いてる。気持ち悪い」って言うのにはどうしても耐え難かった。一発ガツンと言えば済むかも知れないが、一番つらいのは春香であるからこれ以上春香も級友も刺激する言は避けた。
窓の外は雪一。もうすぐクリスマス。やれゲームだやれ洋服だ。級友たちがサンタクロースに頼むクリスマスプレゼントをどうするか悩んでいる時期、春香は一人世界の終わりに直面したような表をして生きていた。朋希だって何かしてやりたかったけど、まだ子供だった。何も出來ることが見つからずいたずらに時間だけが過ぎ、終業式を目前、いやクリスマスを目前に春香は學校に來なくなってしまった。
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