《初めての》告白の先に見えたあの日の約束86
「「ジングルベール、ジングルベール、鈴がなる」」
家業柄手先が用でその手の段取りが得意な朋希の両親の粋な計らいで、微かに化學塗料の臭いが殘る荷解きすら完了していない殺風景なダイニング・リビングが、クリスマス仕様に飾り付けられどこからか運び込まれたクリスマスツリーの前で朋希と春香が熱唱していた。
寢たことにより元気になったのか、朋希のお節介な行が幸を奏したのかは、朋希もその両親も春香の父ですら分からないが、春香の表にはいままでのような暗い影はなく、どちらかと言えば高校生になった春香の期らしい歳相応のあどけなさが戻ってきていた。
「乾杯」
「かんぱ~い!」
家の主を差し置いて朋希の父親がノンアルコールビールの注がれたグラスを天高らかに持ち上げると、春香もそれに習ってお子様のなんちゃってシャンパンが注がれた子供用のコップを天井に屆かんばかりに掲げ、照明がけてキラキラ輝くさまに見とれている。
「春香、はしゃぎすぎ」
「ん〜そうかな〜? だって楽しいんだもん。こんなにたくさんの人がいてさ。それに、この後はきっとプレゼントもらえるよ! そしたら、明日になったらサンタさんからももらえる!」
「ああ、まあ、そうだな。サンタさんもいるもんな」
この頃からし冷めている部分のある朋希は、すでにサンタクロースなる者が“実は”両親であることに気がついていた。それも昨日。事前にサンタなる者から早朝に郵便局もまだ営業していないのに朋希宛てに便箋が屆き「今年はお父さん、お母さんからギターをプレゼントしてもらったと聞いているので、私からのプレゼントはなしだ」と告げられた。その數分後にギターの弦を変えるために訪れた両親の部屋から同じ便箋を見つけて、なんとなく察してしまった。
「春香、こっちに來なさい」
「は〜い」
「おばさんたちからもあるわよ」
「やった~!」
奧の部屋から戻ってきた父親に呼ばれて大はしゃぎで駆け出す春香。あれほど泣いていたのが噓のようにはしゃいでいる。その姿を遠目に見つつ、近くにいた父親に朋希は微かにじていた疑問を解決するために聞いた。
「春香のお母さん遅くない?」
時はすでに二十時を過ぎている。仕事だからと言ってもこの時期としてはあまりにも帰宅が遅いと思った。それに対して、息子からの質問に數秒口を歪め、困った様にこめかみを掻きつつ朋希の父親は聲量を抑えてこう言った。
「絶対に春香ちゃんには言うなよ。……、もう、會うことはできないんだ。だから、あの子にママの話を質問するのはやめろ。あの子のことが好きなら、守ってやりたいのなら、ママの話は絶対にするな」
「會えないってどういう意味?」
「子供のお前が知ることじゃない。俺も話したくないし。母さんも教えてくれないだろうな。でも、もしも十年、二十年後、本當に春香ちゃんのことをする様になったら、その時は春香の父ちゃんに直接聞いてみろ」――、今まで見たことない様な寂しそうな目をした父から、朋希は頭をでられながらそう言われた。
その時が來るまでは何も考えず、春香のそばで彼を笑わせるのがお前の努めだ。と、締めくくった父親の目に、し怖くなり朋希はそれ以上は質問しなかった。子供ながらに“りこん”と言う言葉を知っていたことも合わさり、その後の生活で朋希が春香に母親のことを聞くことはなかったのであった――。
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