《初めての告白の先に見えたあの日の約束89

「あそこは木村コーポレーションが運営する劇団で、木村竜人君が劇団長でもある。てか、あの人が木村喜一郎の溺する孫で木村コーポレーションの次期社長だ」

「え、ああ、え、マジか?」

「ああ、大マジ」

「なんでそこまで朋希が知ってんの?」

「俺の馴染で雇い主が竜人“様”だからな」

さらっととんでもないことをぬかした朋希であったが、その表も聲もいたって普通である。とてもうそを言っているようには見えない。

「俺の親父とお袋が竜人様の家の執事長でありメイド長でね。あと、いろいろ経営しているカフェとかライブハウスの店長もやらせてもらってるから、頭上がんねーんだわ俺ん家。俺もギター練習する部屋とかハコとか提供してもらってる手前さ、逆らえねーんだ」

「なんとまあ、下々の人間からしてみれば遠い世界の話に聞こえる」

「デカくなりすぎたんだようちの會社。特に、孫の竜人様は演劇で功しちまったもんだから々調子に乗ってんだ。奈緒が危ないってのは、親や爺さんの七りのおで今の地位があるのに、周りの人間が自分の言うことなんでも葉えることを”自分のカリスマ”がずば抜けて高いからとか、他人が勝手に自分にひれ伏し”意のまま”にいていると勘違いしている“子供”が人を好きになっちまったからだ。その毒牙が奈緒に向いている」

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「それを僕に教えていいの? マジで邪魔するけど?」

木村竜人側の人間である朋希がどうして、木村竜人と敵対するであろう僕にこの報を提供するのか疑問でならない。仮にも奈緒に危害を加えることがあれば僕はどんな手を使ってでも奈緒を守るだろう。

「もし仮に春香を狙ってきたら俺はあいつを殺すね。間違いなく。言っちゃ悪いがあいつの格は破綻している。もう、馴染の俺でも手に負えない。なんだったら嫌いだ今の竜人。三馬鹿くらいだぜ、盲目的に竜人を信仰してんの。あいつらも早く気づけってんだよ」

「ああ、言っちゃった。僕が本人にばらしたらどうするんだよ。朋希ん家大変なことになるぞ」

「雅がそんなことするわけないだろ」

言い切りやがったこいつ。

「兎に角、奈緒が危ない。遅かれ早かれ二學期に行われる文化祭で何かが起きる。その時、しっかりあの子を守ってやるのが雅の務めだぞ。いいか、誰でもないお前が奈緒を助けろ」

ヒーローが市民を守るのが當然なのと同じだ。僕が自ら奈緒を守るって勝手に意気込むのも當然だ。でも、ほとんど奈緒のことを知らない朋希がどうしてこうも言い切れるのか。疑問すぎるから聞いてみた。

「奈緒だって年頃のの子、文化祭のころには彼氏がいるかもしれないし、現に自分で好きな男がいるって言ってた……その場のノリって誤魔化してたけど全部が噓とは思えない。その男が奈緒を守るべきだと思うし好きな男に助けられた方が奈緒も喜ぶと僕は思うけど?」

「はあ? 奈緒の好きな男? 彼氏ができる? 一応確認するけど、雅は春香が好きなんだろ?」

「ああ、もちろん」

「なら、彼氏ができることも奈緒の好きな男もお前が気にすることはない。雅が奈緒を助ければ奈緒は大喜びだ」

火は熱い。って斷言するかのように、朋希は何の迷いもなくそう言い切った。だから、僕もあえて反論することはやめた。

「よくわからないけど、もしそうなったら頑張るよ」

「ああ、絶対だぞ。今の竜人にトップに立たれちゃこれからの木村コーポレーションが危うい。それはつまり俺の人生も危うし春香の人生だってどうなるかわからない。だから、あの大きくびた鼻を誰かがへし折らなきゃいけないんだ」

春香の話から奈緒の話へとなり、とても濃厚な時間を過ごしている。朋希と言う男は言うときは言うし眼鏡で人を見ない男だとわかってさらに好が持てた

「ああ、やべもうこんな時間か。今更だけど今晩泊まっていいか? これ聴きたいし」

「ほんと今更だな。まだまだ話したいことたくさんあるんだ“今夜は寢かせないぜ”」

「おいおい、まさか男に言われるとは思いわなかったぜそのセリフ」

「僕も言う相手間違えた」――同時に笑い聲を噴き出すバカな二人。

そうやって僕らは互いの間に出來ていたを埋め合って、當たり前の様に一緒に風呂にり、僕は僕でお気にりのパンツとシャツと部屋著を朋希に貸し、朋希は朋希でそれへの対価と言わんばかりに春香との思い出話をたくさん聞かせてくれた。

そして、部屋の電気も消しお互い自然と寢る態勢になること三十分。沈黙を破ったのは朋希であった。

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