《初めての告白の先に見えたあの日の約束96

が、週も明け久しぶりに學び舎に登校した僕と奈緒の前に、僕としては見慣れた男二人組が仲良さそうに登場し、その姿を目の當たりにした奈緒は一瞬だけ眉を潛めた。

「あ、あなたが朋希“さん”? ふ~ん、なるほどね。確かにみやびっぽい」

「どうも、えっと、寺嶋朋希っす。 できれば、そのほかの人と同じようにフレンドリーに接してほしいんだけど?」

「そうですか? 初めて話すし最初はこんなもんだと思いますけど?」

「あはは、そっそかそうだよね~普通」

「奈緒もすぐに仲良くなれるよ、だって朋希も銀BOYZ好きだし」――助け船を出したのは當然春香である。

もちろん奈緒だって銀BOYZは好きではあるけど、僕、朋希、春香ほど熱狂しているわけではない。どちらかと言えば僕に合わせて聞く程度である。奈緒はどちらかと言うと視點の「會いたくて會いたくて震える」系子だ。

「そうだね、努力するよ」

それで奈緒からの會話はなくなり、僕が気が付いた時には自分の席へと戻ってしまっていた。

「どうも、嫌われてるみたいだな俺」

「そんなことないって、ね、春香?」

「うん、奈緒はそんな子じゃない。たぶん、本當に初対面だから張してるんだよ」

「だといいけど、一般人からしてみればこれを背負ってる所謂バンドマンって奴は好き嫌い分かれるみたいだし、うちのクラスでもしょっちゅー子と対立することあるんだよなあ」

我らが學級委員長である大河はそうでもなさそうなんだけどね。クラスによっては多の違いがあるのだろう。まあ、拓哉を始め僕なんかもその辺能天気だから気にしないけど。

「おっは~! あ、もしかして君が朋希?」

「あ、おはよう、そう、俺が寺嶋朋希。よろしく」

「おう! 雅の友達は俺の友達だよろしく!」

こちらも見慣れた男が一緒に登校してきて、男の方がハイテンションで駆け寄ってきた。優香さんが申し訳なさそうに會釈しているのも、毎朝の定番になってきた。

「はい! じゃあ、ハイタッチからの握手!」

「え、ああ、こうか?」

奈緒が奈緒だっただけに、拓哉はどうだろうか心配したけど、どうやら大丈夫そうだ。早くも自分で考案したよく分からない握手を朋希に強要して困らせている。それを見て春香はクスクスと笑っている。なんだかいつもの春香以上に楽しそうに見えるのは、春香にとっての大切な馴染が一堂に會して同じ空間にいることが要因だろう。

「で、雅、相談があるんだけど、今日の放課後一緒に來てほしいところがある」

「え、いいけど? どこに行くの?」

「ライブハウスさ、この間言った通り親父を紹介するよ」

「え、急だね。張するんだけど?」

そもそも、ライブハウスだって初めてだ。そこで更に知らない人に會うとなると格段に張してしまう。ほら、見ろ、手に変な汗をかいてしまってる。

「私も行くし、奈緒! 奈緒も來るよね?」

「え? ああ、行く」

ちょっと離れた位置にいる奈緒に春香がそう聲をかけて、急に呼ばれた奈緒はし戸うも頷いた。そうなれば拓哉はと言うと――。

「悪い、俺はユーとサークルの募集掛けることになってるからさ、今回はパスで」

「そっか、そっちも時間あるときに僕も手伝うよ。奈緒がいれば活発な子とか集まりそうだし」

「確かに、そん時は頼むよ。そっちも、がんばれよな」

「うん、お互い頑張ろう」

今回は殘念だけど拓哉とは別行か。しだけさみしい気もするが、拓哉にも新しい目標ができたので応援せねば。拳をぶつけあってお互いを稱える。

そんなわけで今日の放課後、朋希と一緒にライブハウスと呼ばれる未踏の地へと向かうことになったのであった。

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