《初めての》告白の先に見えたあの日の約束98
「お前の魂聴かせてくれ」
「え、ええ」
歌詞と歌詞の僅かな間で朋希はそう言うとセンターマイクの前を空けた。歌詞が始まっているのに、歌おうとしないところを見ると、僕に歌えと言ってることは間違いない。ああ、どうしよう。客席で事のり行きを見守る馴染達を見ると「がんばれみやちゃん!」とか「一発噛ましちゃいなさい! みやびのためにあるようなもんでしょこの曲!」って好き勝手にんでいる。
ああ、分かった。どうせ誰も見ていない。そう覚悟を決め、僕は生まれて初めてスタンドから暴にマイクを取り、小さいころから憧れていた峰岸達郎の様に全全霊でシャウトした。
「嗚呼! 願いが葉うなら! あの子を抱いてみたい! どこにもいかないで、君だけを抱いていたいいいいいいいいいいいい!」
歌詞なんて見なくても、口が覚えている。が勝手にモニタースピーカーに足を掛ける。ここで上著をぎ棄てモニタースピーカーに飛び乗る。バランスを崩したって言い、そのまますっころんでもマイクだけは離さない。へたくそだっていい。魂が籠っていれば。最後のサビにり――。
Advertisement
僕は宙を舞った。文字通りに宙へと飛んだ。
「あ、バカ! 客席ダイブまで完コピすんな!」
朋希の聲が足元から聞こえる。そこでようやく自分がステージから客席に向かってダイブしたことを理解した。演奏も止まってしまい、を走る痛みから“やらかした”と思った。立てない。それもそうだ、コンクリートとキスをしたのだから。
「がはははは、まさかとは思ったけど、ここまでとわな」
「いや~あの、朋希が絶賛するのも分かるわ。こいつは最高だマジでバカだ」
頭から落下してそのままへたくそなブリッジをする僕に、ステージ上からそんな聲が掛けられ、ドラマーとベーシストがひょっこりとステージ上から顔を出した。照明が眩しくてよく見えないけど、満面の笑みであることは分かったし、バカにしているんじゃなくて本當に愉快だから笑っているのも理解できた。
「ほら、ナイスパフォーマンス」
朋希から手を差しべられてどうにか起き上がれた僕。演奏も終わり、あれだけうるさかったBGMもなくなってしまっては現実世界の世知辛さがに染みる。急に恥ずかしくなってしまった僕はうつむいてしまった。
「みやび、よかったわよ? なに恥ずかしがってるのよ! 張りなさい」
よくわからないが奈緒が誇らしそうにを張っているし、ステージからその脇まで降りてきたベーシストも変に関してしているようで云々と頷きつつ言葉を紡ぐ。
「そうそう、俺も初めて見たぞあんなダイブ。綺麗な放線描いて飛んでくとこなんてまさに人間ロケット、したぞ」
「桜ノ宮一のアホで有名な変態ベーシスト、モモですらあんなことはしないからな! ロックだロックだ君は!」
次に遅れてステージから降りてきたドラマーがスティックを用に指先で回しながらそんなことを言っている。
「うるせー亮、お前だって、MCやらせたら下ネタしかいわねー変態ドラムだろが」
モモ、亮と呼ばれる二人が僕をフォローしてくれているが、フォローされている気が全くしない。でも、なんだろ、全然嫌なじがしない。なぜだ、二人が馬鹿っぽいからか?
僕が心そんな失禮なことを思っていると、朋希が場を仕切りだす。
「雅、紹介するぜ。俺が心の底から尊敬する我が學園・音楽部の初代部長のドラマー亮さんと誰よりも頼りになるベーシストのモモさんだ」
「おう、モモって呼んでくれ! ナイスガッツ! ぜひ、ベースをやってみないか?」
差し出された手には大小様々な指が嵌められており、その中でも髑髏の指がいかにもってじを醸し出している。しかし、その持ち主はどこか優しげであり、どこか頼りなさそうな印象を抱く笑顔が印象的な男だった。握手を求められ、握り返した手にはやはり溫もりがじられて、よく見れば耳には何個もピアスがしてあり、地上で見たら絶対目も合わせたくない人種だと言うのに、僕はこの人――モモさんのことが本能的に好きであった。
そんな不思議な覚を初対面のモモさんに抱いていると、小柄なドラマーこと亮さんが視界の外から飛び込んできた。
「まてまて、あんな破天荒なきできるならドラムで世界を変えてみない? この棒二本であんなにもいい音鳴らせるんだぜ? 興しないか? 棒でひーひーいわせんだぜ?」
「亮さん、の子いる前で下ネタ言うのやめてくださいよ! あ、春香今のは冗談だから後ろに下がるな」
「……」
言う人によると思うけど、確かに下ネタに聞こえなくもなかったので春香の表から笑みが消える。言ってしまえばドン引きしていた。
「え、何が? どういう意味? みやび分かる?」
「奈緒、おまって奴はやっぱり最高だな」
「うん、奈緒さんはそのままでいてほしい」
「え、なになに、朋希さんまでそんな顔しないで」
僕と朋希は顔を見合わせうんうんと頷く。奈緒のこう言うところがマジて可いんだと、今日初めて會った朋希でも思ったに違いない。奈緒本人は不服そうに僕らを見ているけど、ずっと奈緒にはこのまま純でいてほしいので解説しないでおこう。
冥府
山中で夜間演習中だった陸上自衛隊の1個小隊が消息を絶った。 助け出そうと奔走する仲間たち、小隊を付け狙う地獄の使者、山中一帯に伝わる古い伝承。 刻々と死が迫る彼らを救い出すため、仲間たちは伝承に縋る。 しかしそれは、何の確証も一切ない賭けだった。 危機的狀況で生きあがく男たちの戦いを描きます。 カクヨムにも掲載しています。
8 140狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執著愛〜
古式ゆかしき華道の家元のお嬢様である美桜は、ある事情から、家をもりたてる駒となれるよう厳しく育てられてきた。 とうとうその日を迎え、見合いのため格式高い高級料亭の一室に赴いていた美桜は貞操の危機に見舞われる。 そこに現れた男により救われた美桜だったが、それがきっかけで思いがけない展開にーー 住む世界が違い、交わることのなかったはずの尊の不器用な優しさに觸れ惹かれていく美桜の行き著く先は……? ✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦ ✧天澤美桜•20歳✧ 古式ゆかしき華道の家元の世間知らずな鳥籠のお嬢様 ✧九條 尊•30歳✧ 誰もが知るIT企業の経営者だが、実は裏社會の皇帝として畏れられている日本最大の極道組織泣く子も黙る極心會の若頭 ✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦ *西雲ササメ様より素敵な表紙をご提供頂きました✨ ※R描寫は割愛していますが、TL小説です。設定上強引な展開もあるので閲覧にはご注意ください。 ※設定や登場する人物、団體、グループの名稱等全てフィクションです。 ※隨時概要含め本文の改稿や修正等をしています。文字數も調整しますのでご了承いただけると幸いです。 ✧22.5.26 連載開始〜7.15完結✧ ✧22.5 3.14 エブリスタ様にて先行公開✧ ■22.8.30より ノベルバ様のみの公開となります■
8 127【コミカライズ】寵愛紳士 ~今夜、獻身的なエリート上司に迫られる~
「俺に下心がないと思う?」 美しい素顔を隠して地味OLに徹している雪乃は、過去のトラウマのせいで暗闇と男性が大の苦手。 ある日、停電した電車內でパニックになったところを噂のエリート上司・晴久に助けられる。 彼はその夜帰れなくなった雪乃を自宅に泊めても手を出さないほど、紳士的な男。 彼にだけ心を許し、徐々に近づいていく距離。 しかし、あるときーーー 素顔を隠した秘密のオフィスラブ。惹かれ合うふたりは、やがて甘い夜に溺れていく──
8 133社長、それは忘れて下さい!?
勤め先の會社の社長・龍悟に長年想いを寄せる社長秘書の涼花。想いを秘めつつ秘書の仕事に打ち込む涼花には、人には言えない戀愛出來ない理由があった。 それは『自分を抱いた男性がその記憶を失ってしまう』こと。 心に傷を負った過去から戀愛のすべてを諦めていた涼花は、慕い続ける龍悟の傍で仕事が出來るだけで十分に満たされていた。 しかしあるきっかけから、過去の経験と自らの不思議な體質を龍悟に話してしまう。涼花は『そんなファンタジックな話など信じる訳がない』と思っていたが、龍悟は『俺は絶対に忘れない。だから俺が、お前を抱いてやる』と言い出して―― ★ 第14回らぶドロップス戀愛小説コンテストで最優秀賞を頂きました。 2022/5/23に竹書房・蜜夢文庫さまより書籍が刊行予定です! お読みくださった皆さま、ほんとうにありがとうございます。✧♡ ★ 設定はすべてフィクションです。実際の人物・企業・団體には一切関係ございません。 ★ ベリーズカフェにも同一內容のものを掲載しています。 またエブリスタ・ムーンライトノベルズにはR18版を掲載しています。
8 169~大神殿で突然の婚約?!~オベリスクの元で真実の愛を誓います。
08/11 完結となりました。応援ありがとうございました。 古代王國アケト・アテン王國王女ティティインカは略奪王ラムセスにイザークとの婚約を命じられる。 そのイザークは商人! 王女のわたしが商人に降嫁するなんて……! 太陽と月を失った世界の異世界古代・ヒストリカル・ラブ 恐らく、現存している戀愛小説で一番古い時代の戀人たちであろうと思います。創世記のアダムとイヴよりもっともっと前の古代ラブロマンス 神の裁きが橫行する世界最古の溺愛ストーリー、糖度MAX。
8 107冷徹御曹司の無駄に甘すぎる豹変愛
無駄に淫らにいやらしく 世界で一番無駄な戀を改稿しました! 元ピアノ講師倉田ひかりは、ふらりと參加した會社説明會で、ブリザードなみにクールなCEO烏丸憐と出會う。 「君は無駄のテンプレートだな」 彼に指摘された言葉はあたっているだけにショックで。 ところが、ひょんなことから憐と再會したひかりは、彼と関係を深めていく。 感情のない男と目標のない女のロマンティックラブ。
8 147