《初めての告白の先に見えたあの日の約束101

「ハイ、カアアアアット! 奈緒ちゃん最高だよその表! やっぱり雅くんが撮ってるからかな?」

「そ、そんなことありませんよ……まだまだきが不自然です」

「いやいや、やっぱり、奈緒ってすごいよ! 僕、しちゃってる!」

「そ、そんなに褒めても何も出ないわよ」

あの日から毎日、放課後になると僕たちはMV撮影を行っていた。

本日の撮影工程は、ライブハウスの楽屋で演者である奈緒が一人ギターをかき鳴らしているシーンの撮影である。

奈緒が張しない様に、楽屋にはカメラマンの僕と奈緒しかおらず、他のメンバーは別室で僕が作するカメラとケーブルで接続された外部モニター越しで出來高を確認していた。興のあまり監督が飛び出し來るまでは順調に撮影が行われていたところだ。

「いや本當にさ、今まで俺もんな子を撮ってきたけど、初めてでこんな表できる子っていなかった。こりゃ、マジでワンチャンあるんじゃない? 舞臺優としてデビューできるんじゃない?」

「いよいよ演劇部に部する日も近いね? おじさん、今年も頼まれてるんでしょ? 演出に使う映像?」

照れくさそうにする奈緒を朋希のお父さん――我が師――寺嶋真人さんが追い打ちをかける様に大絶賛する。

実はこの方、真人さんは映像クリエイターの一面も持っており、桜ノ宮市では名の知れた映像マンなのである。普段は雇われ店長としてここのライブハウスを運営したりしているが、木村コーポレーションが関わる企畫の広報部長も兼任し、竜人が所屬する劇団の宣伝畫も制作しており、今年も壯大なイベントが予定されていて準備が大変なんだとか。その件で奈緒にも協力をしてもらいたくて、僕や奈緒の気持ちも考えず、大それた妄想をそれに発される春香と展開している。

「師匠! 僕も參加させてください! 奈緒の為に僕も何かしたいです!」

「當たり前だ! 俺の前で奈緒ちゃんはこんな表しない! 君だからするんだこの顔! ああもう! どんどん撮影してどんどん編集したい! 俺から社長には言っておくからぜひ參加するように!」

一週間前の僕では予想もしない方向に僕は向かっていた。自分から木村竜人との接點を作っているなんてこの時點では自覚していないし、それを後悔する日が來るなんて到底考えもしていない。

「みやび……、良いの? あたしのわがままに付き合わせて? 春香のこともあるのに……?」

「何言ってんだ! 夢なんだろ舞臺に立つの? 僕が奈緒の夢を応援しないで、誰が応援するんだ? 悪いけど、奈緒が拒絶しても僕は応援するからな!」

「……、ありがとう。部が決まったらいの一番に報告するね」

奈緒が今までに見たこともない表をするもんだから――、カメラと言う自己表現の道を手にれしまったから――、師匠や友達が僕の映像を褒めてくれるから――、そんな様々な要因が重なり僕は自ら木村竜人へと接近する。誰も、それを止めようとはできなかったし、止める理由がなかった。だって僕も奈緒も新しい夢や希をやっと見いだせたのだから。

「雅、俺の言ったこと忘れるなよ? 奈緒だけはお前が守れ」

しかし、朋希だけは違った。

「え、ああうん。大丈夫」

「本當に、竜人は危険だ。それだけは肝に銘じてくれ」

「う、うん」

真新しいおもちゃを與えられた赤子の様に、能天気な僕に朋希は釘を打つ。でも、彼の本當の怖さを知らない僕は、それを簡単にけ流してしまうのであった。

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      つづく...
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