《99回告白したけどダメでした》23話
*
「……で、急ミーティングと稱して、私らを呼んだと」
「そ、そうです……どうしよう! 志保! 私、あの妹さんと先輩に勝てる気がしないよ!!」
「昨日のやる気はどこ行ったのよ……」
お晝休み、沙耶香は料理部の皆に、急ミーティングと稱して、家庭科室に集めた。
もちろん急ミーティングというのは、みんなを呼び出す口実であり、沙耶香はみんなの力を借りて、この急事態をどうするべきか、相談したかったのだ。
「そういえば今朝、伊敷君の子と歩いてたわね……しかもすごい」
「私は、ホームルーム前に廊下で男子が騒いでるの見たよ。なんか二年のお嬢様が伊敷君を尋ねて來たって……」
「そうなのよ……」
ガックリと肩を落とし、沙耶香はため息を吐く。
沙耶香は、誠実が妹と登校してきた時も、廊下で先輩と誠実が話をした時も誠実の背後に居た。
その場に居た料理部の一同は、そんな沙耶香を見ながら「昨日は無理やり押し倒しそうな雰囲気だったのに……」などと思っていたが、あえて誰も口には出さない。
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「でも、その二人が、伊敷君を好きかなんて、分からないじゃない? それに一人は妹でしょ?」
「違うの! なんか、二人からはこう……私と同じような匂いがしたって言うか……」
「じゃあ、同じメーカーのボディーソープでも使ってるんじゃない?」
「そういうことじゃなくて!!」
沙耶香は今朝、誠実の近くに居た、見知らぬ二人のから、自分に似た何かをじていた。
「はぁ~、どうしたら……」
「どうするも何も、放課後に話するんでしょ? そこで一気に行くしかないわよ!」
「大丈夫! 部長には大きな核ミサイルが二つあるじゃない!」
「の事は言わないで!」
の事を言われ、沙耶香は赤面し、を隠すようにする。
「キスくらいしてやれば良いのよ。そうすれば嫌でも意識するわよ?」
「き、キス????」
「既事実作るとか言ってた人が、キスでどんだけ揺してるのよ……」
「考えて見たら……私って、そういう知識あんまり持ってなくて……」
「それで、よく既事実なんて言えたわね……」
呆れた様子の料理部一同。
しかし、自分たちが沙耶香を焚きつけてしまった事実も変わらないので、何とかしようと考え始める一同。
「まぁ、やっぱりこの前の話した通り、し返事を待ってもらうのが良いんじゃない? まだ今日見た子二人が、伊敷君に好意を持ってるかもわからないし、とりあえずは、アピールするのが一番だと思うわよ」
「でも、あの二人……私と違ってすっごく可かった……」
「あんたも十分だから安心しなさい、それとあんたにはこの最終兵があるでしょ?」
志保はそういうと、沙耶香のを背後からみしだき始める。
「きゃっ! や、やめてよ志保!!」
「やっぱ大きいわね……何食べたらこうなるのよ……」
「このを見て、反応しない男子は居ないと思うけどね」
志保と沙耶香のじゃれ合いを見ながら、料理部の面々は勝てない勝負ではないと思っていた。
沙耶の容姿もそうだが、格の良さや、料理の上手さなど、まだ部として活を始めて2カ月とちょっとだが、部員皆が沙耶香の良いところを知っている。
「沙耶香、自持ちなって! あんたは十分可いし、良い子なんだから、既事実なんて作ろうとせず、ありのままを見てもらえば、伊敷君だってあんたの良さに気が付くよ」
「志保……」
沙耶香から離れ、志保が優しく勵ます。
「そうだよ、シンプルに自分の思ってることを言えば良いんだよ、沙耶香」
「大丈夫! 伊敷君だって、ちゃんと見てくれるよ!」
「皆……」
料理部の皆から勵まされ、沙耶香はが熱くなるのをじる。
皆がこうして応援してくれる、本気で考えてくれる。
そう思うだけで、沙耶香は勇気をもらえた。
この告白は、もう自分だけの問題ではない、一緒になって考えてくれた料理部の皆の為にも、沙耶香はなんとしても誠実と付き合えるように努力しようと誓った。
「ありがとう、おかげで元気出た! 私頑張るよ!」
「やっといつもの部長に戻った」
「部長はそうでなくっちゃね!」
「心配ばっかりかける部長ね」
沙耶香はいつもの元気を取り戻し、みんなにお禮を言う。
「ありがとう、みんな。あ、もう一つ聞きたいんだけど、良いかな?」
「何よ、もうこうなったら、なんでも相談に乗るわよ」
「私らが焚きつけた責任もあるからね」
料理部の面々はやれやれといった様子で、沙耶香の言葉を待つ。
沙耶香は雑誌を取り出し、とあるページを見せながらみんなに尋ねた。
「男の子って、このせいじょうい? って言うのと、バ……」
「「「アンタはなんてものを學校に持ってきてるの!!」」」
沙耶香がみんなに見せた雑誌は、いわゆる18の男雑誌の一ページ。
それを見た部員たちは、顔を真っ赤にしながら、沙耶香から雑誌を奪い取る。
「ちょっ! 何するの? 」
「何するの? じゃないわよ! こっちがナニするの? って聞きたいわよ!!」
「ぶ、部長……この雑誌どこで……」
「お姉ちゃんがもってたのを借りたの、參考になればと思って……」
(((なぜ姉が持ってるんだ……)))
 料理部の面々は、赤面したまま沙耶香の家庭に疑問を抱きつつ、沙耶香に尋ねる。
「な、なんでそんな質問を?」
「い、いやだって……私、そういう知識ないから、勉強しようと思って」
「「「私らだって、こんな知識ないわよ! 私らまだ高校って間もないのよ!!」」」
息を荒立てながら、沙耶香の質問に答える料理部一同。
高校にってまだ3カ月そこらの子高生に、そんな経験などある方が珍しい。
ましてや、料理部の面々は言ってしまえば普通の子高生、ギャルや不良といった類ではないので、男子と付き合った事もない部員がほとんどだ。
「あ、あんた……既事実はあきらめてないのね……」
「うん! だって、既事実さえあれば、誠実君とずっと一緒に!」
「誰か! 醫者を! 神科醫を!!」
「誰よ、ここまで部長をおかしくしたのは! つい先週までは純な良い子だったじゃない!!」
「お願い沙耶香! 戻ってきて! 」
は盲目、この言葉は今の沙耶香にピッタリの言葉だと、その場の沙耶香以外の全員がそう思った。
料理部一同は、このままでは放課後何が起きるか分からない、そう思い影からこっそり、沙耶香が暴走しないように、見守ることを決意した。
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