《99回告白したけどダメでした》32話

誠実が席を離れた瞬間、3人のが座るテーブルはさらに迫した空気になっていた。

そんな迫した空気が漂うテーブルに、が3人もいれば、注目を集めて當然だ。

しかし、當の本人たちはそんな注目の視線にも気が付かずに話を始める。

「兄とはどういったご関係なんですか?」

最初に言葉を切り出したのは、奈穂だった。

靜かに、しかしどこか強気で、沙耶香と栞に言い放つ奈穂。

モデルをやっているだけあってか、人と話す事に苦手意識は無く、年下にも関わらず、堂々としながら話を始める。

「どう? と言われましても……昨日會ったばかりですし、お友達でしょうか?」

そんな奈穂に栞は優しく笑顔で話す。

一方の沙耶香は先ほどまでとはどこか違う、真剣な様子で話を始める。

「私は……貴方のお兄さんに今日、告白したわ……」

その一言に、その場の二人は驚いた。

いきなりそんな直球で來られるとは思っていなかった、奈穂は揺を隠しきれなかった。

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「でも……待ってほしいって言われちゃった……まだ多分、山瀬さんの事……忘れられないんだろうね……」

悲し気な表で続ける沙耶香に、奈穂は黙って話を聞いていた。

しかし、そこで事をよく知らない栞が、沙耶香に尋ねる。

「あの、山瀬さんとは……?」

「あ、そうですよね…先輩は知らないんですね……実は……」

奈穂は、誠実と綺凜の関係を話し始める。

話を聞き終えて後の栞は、驚いた様子もあったが、引いたりはしなかった。

「そうですか……彼があの有名な……」

「先輩知ってたんですか?」

「有名ですからね、二年生の間でも、その噂は伝わって來ていますよ」

學校でも有名な話だから、無理はないと思った沙耶香。

奈穂は、自分の兄が學校でそんな噂になるほどの人だったという事に驚居た。

「じゃあ、彼はもう山瀬さんの事を諦めたんですか?」

今度は栞が、沙耶香に尋ねる。

沙耶香は栞の問いに、し悲し気な表で答える。

「いえ……まだ、そう簡単には忘れられないって……」

「そうですか……無理もないですね……それだけ好きだったという事でしょう……」

栞の言葉を最後に、3人のテーブルには沈黙の空気が流れる。

誰も何も話さず、ただなぜか3人とも悲し気な表を浮かべていた。

「あの、なんで兄が好きなんですか?」

そんな沈黙を打ち破ったのは、奈穂だった。

先ほどまでの厳しい視線ではなく、し表をやわらげながら、沙耶香に尋ねる。

聞かれた沙耶香は頬を赤らめながら答える。

「誰かの為に、何かするって難しいと思わない?」

「え……まぁ…確かにそうですね……」

「そうよね、自分の為じゃないから、直ぐに投げ出しちゃうかもしれない……でも彼は違ったの……」

沙耶香は料理部で、料理の修行をしていたころの誠実を思い出し、2人に話して聞かせる。

「最初は正直続かないと思ったわ……好きな人に振り向いてほしいから、なんて下心丸出しで、料理を覚えに來たんだろうって……」

「ストレートですね……あのバカ兄…」

沙耶香の話に徐々に迫した空気が薄れていく。

「でも彼は頑張ってたわ……毎日絆創膏を指につけて、好きな子を振り向かせたいなら、他に方法あるんじゃない? なんて言ったこともあった……」

「だから絆創膏つけてたのね……」

奈穂は、誠実が一時期、家で絆創膏を張りまくって、母に怒られていた事に納得がいった。

「でも、誠実君こう言ったの……『どうせ振られても、山瀬さんがおいしいって言って食べてくれたら、もうそれで満足だから』って、自分が振られても、山瀬さんが喜んでくれるなら、それで良いと思ってたみたいね」

誠実らしい、そんなことを奈穂は思っていた。

昔からそうだったのを奈穂は知っていた。

自分の為でなく、誰かのために行することが多かった兄を見てきた奈穂。

そんな優しい兄の事を知っている人が、自分以外にも居ると思うと、なんだか嬉しかった。

「伊敷君は、お優しい人なんですね……私はまだ何も知りません……」

「先輩は……誠実君とはどうして知り合ったんですか?」

「私ですか? 実はですね……」

今度は栞が靜かに話を始める。

昨日の帰りに起こった出來事を二人に話、栞も今の誠実に対する気持ちを2人に打ち明ける。

「……という訳で…私は彼に助けていただいたんです」

「昨日そんなことが……」

昨日、二人で食事をしに行く前に、そんなことがあったとは知らず、驚く奈穂。

「私は、正直申し上げますと、伊敷君が気になっています……」

その言葉に、奈穂と沙耶香は張を覚える。

どんな意味で、そう言ったのか。

奈穂も沙耶香も察しはついていたが、あえて口には出さず、栞の言葉を待つ。

「まだ、好き……という段階ではないと思いますが……きっとこれは好意だと思います……」

「そ、そうなんですか……」

「はい、ですので前橋さんとはライバルになるかもしれませんね…」

((なんて恐ろしいことをこんなあっさりと…))

沙耶香に聞かれ、栞は変わらず笑顔で栞にそう尉言う。

栞以外の2人は、栞のこの堂々とした態度に驚き、心の中で同じことを思っていた。

言われて、沙耶香も黙っているわけにはいかず、栞に答える。

「先輩……そうなったとしても、私……負けませんから……」

沙耶香と栞に間に、火花が散っているような気がした奈穂。

2人の様子を見ていた奈穂だったが、矛先はついに奈穂に向いてきた。

「で、妹さんはどうなの?」

「え……私は……」

沙耶香に尋ねられ、言葉を詰まらせる奈穂。

栞も沙耶香も気になっていた。

奈穂が兄である誠実に事をどう思っているのか。

しかし、2人は大察しがついていた。

「……好きですよ……悪いですか?」

顔を赤らめながら応える奈穂に、栞と沙耶香はやっぱりか、といった表で応える。

そして沙耶香はし意地の悪いことを言う。

「兄妹…なのに?」

言われた奈穂は、どうよすることもなく、淡々と沙耶香に応えた。

「はい、悪いですか? 私は兄を一人の男として好意を抱いています」

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