《99回告白したけどダメでした》34話
*
奈穂達、陣がファミレスで話を始めたちょうどその頃、誠実は尾行してきた綺凜を見て、とうとう幻覚を見るほどまでに、自分がやばい奴になり始めていると勘違いをしていた。
綺凜と誠実以外の3人は、ファミレスの店を凝視しており、誠実と綺凜の間には気まずい空気がながれていた。
「えっと……覗きと尾行が趣味なんですか?」
「違うわよ! この3人に無理やり……」
昨日の家庭科室での一軒もあったため、まさかとは思い、誠実はそんな質問を綺凜にする。
綺凜も勢いよく斷ったが、そう思われても仕方ないのかもしれないと思い、申し訳なさそうに店を凝視する3人を見ながら言う。
「ごめんなさい、この3人を止められなくて……」
「あぁ……大事は察したよ……」
誠実と綺凜を放って、店を見ながら何やら興気味に話をしている3人。
誠実はため息を吐きながら、再び健と武司に尋ねる。
「んで、お前らはなんで俺を尾行なんかしてきたんだ?」
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「なんかよ~、帰ろうと思って、校門前まで行ったら、誠実がに囲まれてんじゃん。しかも遠目から山瀬さんがその様子を見てるなんて、そんな面白い狀況に介すんなって方が無理だぜ」
「武司の言う通りだ」
楽しそうな聲で、武司と健はファミレスを凝視したままそういう。
誠実は、そんな自分の不幸を楽しんでいる2人に怒りが芽生えた。
「んで、君は誰?」
「ん、私? 私は綺凜の友達で、沙。 笹原沙よ、よろしくね~」
「おう、よろしく! ……じゃ無くて! なんで健と武司と一緒になって君までのぞき見してるの!?」
「私……晝ドラって好きなのよ……」
「うん……それで?」
「それだけよ……」
「意味わかんねーよ!」
初対面にも関わらず、誠実は沙の回答にイライラし、そんなツッコミをする。
しかし、そんな機嫌の悪い誠実に、3人は逆に質問をする。
「大、なんで振られた次の日に、あんな羨ましい狀況になってんだよ、せっかく失パーティーしてやったのに」
「あぁ、武司の言う通り、全然悲しむ狀況ではないな、むしろ前より狀況は良くなって無いか?」
「確かに古沢君の言う通りね~、前は綺凜に付きまとうストーカーで、今は3人に迫られる、プレイボーイだもんね~」
3人にそんな事を言われ、誠実も黙っていられるはずもなく、さらに機嫌を悪くしながらも、あえて優しい口調で言う。
「そ、そうだなぁ~……でもその話は、ここではするなよ、お前ら~」
「あ、そうだ! 本人居たんだ……」
「すまん誠実。機嫌を直せ」
誠実がマジで怒っていることに気が付いた、健と武司は直ぐに気が付き、誠実に謝罪するが、沙はそうではなかった。
「なんで? 振られたんなら良いじゃんもう、2人から聞いたけど、諦めたんでしょ? 綺凜のこと」
「え……」
沙の言葉に驚いたのは綺凜だった。
綺凜の居ないところで、健と武司はそのことを沙にだけ伝えており、その場に居なかった綺凜はこの瞬間に初めて知ったのだ。
「……あぁ、そうだよ。でも、別に山瀬さんが居る場所で話すことじゃ……」
「大丈夫だって、綺凜はあんたの事、なんとも思ってないから!」
「沙!」
綺凜は沙に大聲を上げ、沙の言葉を止める。
言われた誠実は、昨日振られた以上のショックをけた。
やっぱりそうか、そう思いながら誠実は言葉を返す。
「知ってるよ。それに、悪かったとも思ってる。迷だっただろ? あんなにつきまとって……ごめん」
誠実は綺凜に謝罪し、頭を下げる。
しかし、綺凜はその謝罪を素直にけ取れ無かった。
それは綺凜自も誠実に告白を利用していた部分があるからだった。
綺凜が何を言って良いのかわからずにいると、代わりに沙が話し出した。
「本當だよね~、ほとんど毎日告って、やりすぎだよね~、普通3回目くらいで気が付こうよ」
「あぁ……そうだな」
「99回も告白してきたら、普通は引くって、なんでわからなかったのかな?」
「沙! もういいでしょ、終わったことをあんまり言わないで……それにこれは私と彼の問題」
綺凜は沙に強い口調でそういった。
しかし、沙は言葉を止めない。
「綺凜、前も言ったけど、告白を本気で斷りたいなら、これくらい言わなきゃだめだよ? 彼のためにも綺凜のためにもならない……それとも伊敷君を庇う理由でもあるの?」
沙に図星を付かれ、綺凜は何も言えなくなる。
もう彼に本當の事を言ってしまった方が良いのだろうか? 綺凜はそう考えるが、なかなか口に出せない。
その場に居た5人の空気は重くなり、すっかりファミレスの中のことなど、どうでも良くなっていた。
「そうね……彼には知る権利はあるわね……伊敷君。ちょっと2人っきりで話があるわ」
「え? う、うん」
そういって、誠実と綺凜は奧の路地の方に姿消す。
殘った健と武司は、沙のさっきの言葉の意味を尋ねる。
「……なにか知ってるんだな」
先に尋ねたのは健だった。
何かを見かすように、沙にそう尋ねると、沙はし笑って言う。
「うん……綺凜は隠せてるって思ってるだろうけど……私には無理だったみたいね……」
「じゃぁ……あんな風に誠実を馬鹿にしたのも?」
「そう、あの子に本當の事を言わせるため……だって可そうじゃない……自分の告白が利用されてたなんて……まぁ、綺凜もそうする以外の方法なんて思いつか無かったんでしょうけど……」
さみしそうな視線を2人が消えていった路地に向けながら、沙は優しく微笑む。
健と武司は、先ほどまでとまるで態度の違う沙に違和を抱きながら、再び尋ねる。
「じゃあ、急に尾行に參加したのって……このためか?」
「うん、最初はチャンスがあれば、その機會を作れると思ったけど……こうも簡単にいくなんて……私って天才かも!」
無理やり笑顔でそう言う沙を見て、武司と健は何かを悟った。
誠実がに囲まれているところを尾行し、誠実に自分のおかしな行の數々を思い出させると同時に、綺凜に誠実を振った本當の理由を明かさせる。
この一連の流れが、沙の計算ならば。健と武司はそう思うと、一つの答えにたどり著いた。
「まさかと思うが……笹原って……」
「うん、好きだよ。伊敷誠実君が……」
その言葉に、健と武司は驚きを隠せなかった。
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