《99回告白したけどダメでした》35話
*
誠実と綺凜は話を聞かれないよう、さっきまで一緒にいた3人から離れ、路地裏に居た。
「今まで黙っていたけど……私は貴方の告白を……利用してたの……」
靜かに綺凜は口を開き、誠実にそういう。
誠実は意味がわからないのと、なんでこんな狀況になったか、整理が出來ておらず、何を話したらいいかわからないでいた。
「そ、そうなんだ……」
とりあえず何かを言わなくてはと、誠実は一言綺凜に、そういう。
綺凜は悲し気な表で、誠実に言葉を続ける。
「私の家ね……お父さんが會社の社長をやってるの……」
「山瀬さんって、社長令嬢ってやつなんだ……」
「うん、みんなには黙ってるけど……それで、中學の時から結婚相手が決まってたんだ……」
「え……」
誠実は綺凜の突然の発言に、驚いた。
綺凜の話はこうだった。
綺凜の父が會社を起すさいに、資金面で多くの支援をしてくれた人が居たらしい、その人は自分の息子にピッタリの気立ての良い將來の奧さんを探していたらしい。
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そこでその人の目に止まったのが、綺凜だったらしい。
綺凜の父も、早くに妻を亡くしていたこともあり、綺凜の幸せを願っていたため、その提案をけれ、直ぐにお見合いになったらしい。
「その息子さんも、すごくいい人でね……私もその提案をけれたの……お父さんも喜んでたし……」
「そ、そうなんだ……それじゃあ、なんで俺の告白を99回もけてくれたの?」
「……私は中學の頃も良く告白をけていたわ……でも、告白を了承するわけには行かないから、全部斷ってたの……でも、そうしたら私に関する良くない噂が流れ始めたの……」
「……それって……」
「えぇ……告白を斷った相手が、手のひらを返して、私に逆恨みをしてきたの。そのせいで、學校側からお父さんに連絡が行ったこともあったわ……高校に學しても同じだった……どうせまた私の良くない噂が勝手に流れる……そう思ってたある時、伊敷君の告白が始まったの……」
「そっか……告白をけて斷ってもダメ、そもそも告白をけもしなかったら、余計に悪評が広まる……どうしようも無いね……本當の事を言おうと思わなかったの?」
「相手の息子さんも、近くの學校だったから、迷をかけたくなくて」
「なるほど…」
「でも、伊敷君は違ったわ、確かにしつこかったけど!」
「ぐはっ!」
本人にしつこいといわれ、神的にダメージをける誠実。
しかし、綺凜はそん誠実に気が付かず、言葉を続ける。
「まさか99回もって思ったけど!」
「がはっ!」
「最初は若干引いてたけど!」
「もう…やめて……」
綺凜本人から言われると、流石にきつい誠実。
若干涙目になりつつ、それでも誠実は綺凜の話を聞き続ける。
「…でも、貴方は真剣で……何回振っても私の悪口も言わなかった……だから、私は……」
綺凜の作戦はこうだった、誠実の告白をけ続けることで、自分と誠実の告白イベントを學校中の噂にする、そうすれば、誠実という邪魔ものがいるおかげで、他の男子は告白が出來ない。
そうしているうちに、みんな綺凜を諦めはじめ、告白をける回數が減る。
その上、綺凜の悪評が広まるリスクも減る。
優しい誠実なら、他人の悪口を言わないだろうと、綺凜は20數回の告白の際に確信していた。
「……つまり……山瀬さんは、俺なんか、はなっから興味なくて……ただ……俺を使ってたってこと………」
「……ごめんなさい。貴方の真剣な気持ちを利用して!!」
誠実は何を言ったら良いかわからなかった。
悲しいのか、怒っているのか、自分の気持ちがわからなかった。
さっきまでは実がなかった。
振られ慣れてしまったからか、どこかでまだ、チャンスがあるのではないかと思っていた。
でも、今回は違った。
自分に全く興味がない事が、よくわかってしまった。
誠実はこの狀況から早く抜け出したかった。
「そっか……いや~、俺も馬鹿だよね~、気が付かないでこの數カ月! でも、山瀬さんの為になってたのなら、良いや! じゃ、俺そろそろ戻らないと! あ、安心して! 聞いた話は誰にも言わないから! じゃ!」
「あっ……」
誠実は無理やり笑顔を作り、速足でファミレスの店に戻って行った。
一人になった綺凜は、その場にうずくまって思う。
(最低ね……私……)
自分への行為を利用した、その最低な行為に、綺凜は何か他にいい案は無かったのかと、今更ながら考える。
そうすれば、誠実とは違う形で良い友人になれたかもしれないのに……。
*
誠実と綺凜がいなくなり、健と武司は沙から意外な事実を聞き、驚いていた。
まさに開いた口が塞がらない、そんな狀況だ。
「あはは、2人とも驚きすぎだって!」
「驚くわ! なんで誠実は、本命以外にモテるんだよ!! 羨ましいのか可そうなのか分かんねーよ!!」
「落ち著け武司、もしかしたら、笹原の噓かもしれん」
健は武司に落ち著くように言いながら、沙にも聞こえるよにそういう。
しかし、沙は表を変えることなく、ニコニコしながら2人に言う。
「噓じゃないよ? まぁでも、流石に伊敷君が綺凜を好きって知ったときは、諦めようって思ったな~」
「「マジか……」」
健と武司は、友人のプレイボーイっぷりに驚きながら、沙に質問をしていく。
「なんで誠実なんだ? 今日出會ったばっかりなんじゃないのか?」
「多分、伊敷君は忘れてると思うけど、験の日に私彼に助けてもらってるの、その時にこう……キュンっと來ちゃって……」
沙のうっとりした表と、ピンクに染まった頬を見て、健と武司は、その話が噓ではないと思った。
「験の日だろ? いつあった? 俺達一緒に行ったよな?」
「あぁ、3人一緒だったが……」
「あぁ、それは験が終わって帰るときだったからだと思うよ? 伊敷君って、一回學校戻らなかった?」
そこで健と武司は思い出した。
験も終わったから、その日は思うぞんぶん遊ぼうという事になり、誠実達は電車に乗って買いやカラオケに行こうと計畫を立てていた。
しかし、誠実が學校にマフラーを忘れた事に気が付き、あとで合流することになったのだ。
「あの時、なにかあったのか……」
健はその日の事を思い出しながら、誠実と合流した時のことを思い出す。
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