《99回告白したけどダメでした》37話

「それで、誠実と山瀬さんはまだ戻ってこないのか?」

「そうだな、そろそろ戻ってきても、よさなもんだが……」

話を聞いているうちに、いつの間にかそれなりに時間がたってしまった。

誠実と綺凜がいつまでたっても戻ってこないので、3人は誠実と綺凜が消えていった路地の方に視線を向ける。

「もう10分くらいか?」

「なぁ、健よ。誠実の奴どんな顔で出てくんだろうな」

「あの雰囲気からして、誠実の喜ぶことじゃないのは確かだ。からかうのはやめよう、あいつは今まで真剣だったんだ、今回は流石にやりすぎた……」

「そうだな、あいつが今日、いつも通りだったんで、忘れてたが……昨日で一応、諦めるって決めてたんだよな……無理してたんだろうな」

面白半分で誠実を尾行し、振られた相手まで連れてきてしまったことを反省する、健と武司。

明日、ボーリングにでもって、勵ましてやろう。

そんな事を話していると、誠実が速足で戻って來た。

「せ、誠実……大丈夫か?」

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恐る恐る尋ねる武司。

しかし、心配とは裏腹に、誠実は満面の笑みで3人に早口で言った。

「おう! 俺は大丈夫だぜ! じゃ! 俺、戻るからよ! 奈穂から電話なりまくりでさ~、待たせるのもあれだからよ! じゃあ、お前らも早く帰れよ!」

「あ、おい! 誠実!!」

誠実はそう言い終えると、今度はファミレスの方に足早に戻って行った。

殘された3人は一何があったのか、不思議に思いながら、誠実の背なかを見送った。

誠実がファミレスに戻って直ぐ、綺凜も戻って來た。

「……伊敷君は?」

「行っちゃったわ……綺凜」

「何?」

戻って來た綺凜の顔は沈んでいた。

悲し気な表で、今にも泣きそうだった。

そんな綺凜に、沙は真剣な顔で話始める。

「綺凜がなんで伊敷君の告白に付き合い続けたのかわ知らない……でも、コレだけは言っておくね」

「どうかしたの?」

沙は、どこか覚悟を決めたような様子で、綺凜に話始める。

「私、伊敷君の事、學した時から好きだったの」

「え……」

綺凜はもちろん驚いた。

沙と綺凜は高校に學して仲良くなり、まだあまり互いを良く知らない。

綺凜と沙はどこか気が合い、今まで仲良くしていた。

しかし、沙が誠実を好きだという事を話すのは始めてだった。

學式からずっと……それで、やっとチャンスがやって來た。綺凜は何とも思ってないんだよね? 伊敷君の事」

「……うん」

「私は綺凜が羨ましかった。伊敷君に毎日、好意を持って接してもらえて……」

の戦いが始まったと思い、武司と健は隅の方で小さくまとまっていた。

沙は真剣だった。

対する綺凜は戸っていた。

「……なんで、今それを?」

「うん、やっと來たチャンスだから。私が伊敷君もらってもいいよね?」

「……えぇ……私は彼をなんとも思ってないから」

そんなの會話の脇で、健と武司はコソコソ話をする。

「決めるのは誠実じゃね?」

「いや、笹原ならわからん……意外と無理やり」

「でもよぉ~、他の3人もスペック高いぜ? それに比べて笹原はよぉ~」

「あぁ、普通だな」

コソコソ話をしていた健と武司だったが、沙に聞こえてしまったらしく、沙が笑顔で2人の方を見て言う。

「そこの2人~、黙らないと、2人はホモだって子生徒中に流すわよ~」

「「すいませんでした!! 黙ります!」」

恐ろしいことを言われ、健と武司は黙っての戦いを見守ることにした。

「綺凜がなんであそこまで付き合うのか、私は分からなかった……でもね、何回かの告白の時に、気がついたのよ。綺凜はどこか、伊敷君を利用してるんだなって……」

沙の表は、真剣なままだった。

一方の綺凜も沈んだ表のままだった。

沙は綺凜を責めるのではなく、ただ単に自分の気持ちを話していた。

「まぁ、今日のあの言い方はし酷かったかもしれないけど……これですっきり出來た?」

「えぇ……自分がどれだけ酷い人間だったか、よくわかったわ……」

「……そっか……じゃあ、次は無いように気を付けないとね……」

綺凜をめるように、沙はそういう。

いつかは、こういう時が來る、それを綺凜も沙も知っていた。

しかし、きっかけが無かった。

そんな時に、この狀況がやってきた。

沙は良い機會だと思った、自分が誠実を好きだと打ち明けるのにも、綺凜が本當の事を打ち明けるのにも……。

「綺凜、これから私頑張るから……」

「えぇ……応援するわ……私が言えた立場じゃないけど……」

お互いに、今までの隠し事を打ち明ける事が出來、2人はどこかスッキリした表で言葉をわす。

綺凜は誠実に対して、申し訳ない気持ちで一杯だった。

しかし、今まで隠していた事を彼に打ち明ける事ができ、が軽くなるのをじた。

これで本當に誠実とは終わりだ、そう思うと綺凜はどこかで寂しさをじた。

「あのぉ~、俺らも一応當事者なんで……」

「説明をしてほしい」

先ほどまで、し離れたところで小さくまとまっていた武司と健が、里と綺凜に尋ねる。

「あ、ごめんごめん! そうだよね、2人も気になるよね! 綺凜、どうする?」

「良いわ、伊敷君の友達なら、知りたいと思うのも同然だもん……私がなんで彼の99回の告白をけ続けたか、教えるわ」

健と武司は、ついに真相が知れると思うと、なんだかドキドキした。

毎回毎回、誠実の告白をけては、丁寧に斷る。

そんな彼が、健と武司は不思議だった。

30回か辺りからは「きっと優しい人なんだろう」と、2人は勝手に決めつけ、それ以降あまり気にしていなかったが、こうして改めて言われると、告った方もそうだが、告られた方も良く付き合ったものだと再確認する。

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