《99回告白したけどダメでした》38話

誠実がファミレスに戻ると、テーブルの上にはたくさんの料理が並んでいた。

席に戻った誠実を奈穂が、ハンバーグを切り分けながら迎える。

「ん、遅かったじゃん、なんの電話?」

「あぁ……ちょっとな……」

誠実は無理矢理に笑顔を作り、奈穂にそう答えると、自分の荷を持って帰り支度を始める。

「悪い! ちょっと用事が出來てな、先に帰るわ! 沙耶香も先輩もすいません! じゃ!」

「あ! ちょっと!」

誠実はそう言って、千円札をテーブルに置いて、早々とその場を後にした。

その場に居た3人のは、意中の相手の様子が気になり、話始める。

「何かあったんでしょうね」

「そうみたいですね……大丈夫かな、誠実君…」

「電話で何かあったのかしら? 帰ったら聞いてみよっかな……」

奈穂がさり気なくそんな事を言うと、沙耶香がジト目で奈穂を見て言う。

「良いなぁ~、奈穂ちゃんは誠実君と家でも一緒で~」

「そうですね……奈穂さんは、誠実君と一緒に居る時間が、いささか多すぎるのでは?」

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沙耶香と栞の不満そうな表に、奈穂はため息じりに応える。

「あのですね……それ以前に、私は妹なんですよ? 一番ハンデを背負ってると思うんですが?」

奈穂に言われ、それもそうだとじる栞と沙耶香。

しかし、そんなヘビーな事をさらりと言ってしまわれると、何も言えなくなってしまう。

「えっと……あの……」

には、様々な形がありますわ!」

上手い言葉が思いつかない沙耶香と、苦し紛れに言う栞に、奈穂は再びため息じりに言う。

「気を使わないでください、私はこれで良いんです。私が選んだことですから。それに、私なんかに気を使ってたら、おにぃの事……とっちゃいますから」

本當にこの子は中學生なのだろうか?

そんな疑問を抱きながら、挑発的な視線を向けてくる奈穂に、ライバル意識を強める沙耶香と栞。

奈穂ちゃん、私は誠実君と同じクラスなのよ! つまり、頑張れば半日は一緒よ!」

「學校で何をする気ですか…」

「もちろん保険室で子……」

「レディーが言っていい事ではないですわよ? 沙耶香さん」

何かとんでもない発言をしようとした沙耶香に、栞は聲を重ねて、その言葉をかき消す。

「そうなると、接點が無いのは私だけですね……殘念です、もっと誠実君を知りたいですのに……」

寂し気な表で話す栞に、沙耶香と奈穂は余裕の笑みを浮かべる。

しかし、そんな2人の予想を裏切り、栞は何か思い出したかのように、笑顔で話し出す。

「そうでしたわ! 今度私の家に遊びに來る約束をしていましたわ、そこで私も何か接點を……」

「「ちょっと待ったぁぁ!!」」

嬉しそうに話す栞に、奈穂と沙月が大聲を上げる。

周りのお客は、相変わらず3人の席に注目しており、もう大聲程度では驚かない。

「どうかしましたか?」

不思議そうな表で応える栞に、先ほどまで余裕の表だった奈穂と沙耶香が驚いような表で尋ねてくる。

栞は相変わらずの笑顔で、注文したタラコスパゲッティーを食べながら、聞き返す。

「い、家に……って……どういう……」

「なんで昨日知り合った人の家に、遊びに行くことになっているんですか!」

驚きで上手く言葉に出來ない沙耶香に変わり、奈穂が栞に尋ねる。

栞は汚れた口元を拭きながら、奈穂に満面の笑みで、嬉しそうに答える。

「助けた頂いたお禮に、我が家にご招待したんです。お父様もお會いしたい様でしたし」

「「お、親公認……」」

もしかしたら、一番距離が近い存在になるのではないか?

そんな脅威を栞にじ始める奈穂と沙耶香。

その後はあまり誠実の話をしないようにし、3人は食事をして、解散した。

誠実はファミレスから一直線に、自分の家に帰宅した。

自分の気持ちがぐちゃぐちゃしたような気分で、泣きたいのか、どうしたいのか、わからなかった。

ただ一つわかる事は、なんだか人生がどうでも良くなってしまったことだった。

家に帰宅し、誠実はベッドに倒れ込み、そこからかない。

泣きたいわけでは無いような、怒りをぶつけたいような、そんな複雑な気持ちで、何もやる気が起きない。

「誠実! 帰ってるの!? 奈穂と一緒にご飯食べてくるんじゃなかったの?」

一階の母の聲が聞こえてくる、きっと奈穂が連絡したのだろうと、誠実は思い。

端的に母に応えた。

「飯は食ってきた! もう寢る!」

そう言うと、母はもうそれ以上は何も言ってこなかった。

誠実は部屋のベッドで、布団にくるまりそのまま眠りに落ちて行った。

山瀬さんに利用されていただけだと知り。自分が今までやってきた事は一何だったのかを考える。

本當に意味はあったのだろうか?

沙耶香は意味が無い訳はないと言ってくれたが、誠実は今日の話を聞いて、本當にそうなのか、疑問に思う。

しかし、誠実はそう思いながらも、綺凜のやった事が酷い事だとわかっていても変わらない事があった。

綺凜と出會った數か月前の夢を見た誠実は、今日の先ほどの出來事があったところで、目を覚まし、一言つぶやく。

「好きなんだよなぁ……」

誠実の中で、綺凜を好きだという気持ちはまだ変わっていない、でも諦めるほかは何もない。

そう思うと、世界が何だか暗く見えた。

「シャワーは浴びるか……」

誠実はベットから起き上がり、真っ暗になった部屋で電気のスイッチを探して、フラフラと部屋の中を歩く。

ようやくスイッチを見つけ、電気をつける誠実。

「今は……なんだ、まだ10時か」

機の上の時計を見て、誠実は獨り言をつぶやき、シャワーの準備を始める。

この時間なら誰ももう風呂場にはいないだろう、誠実はそう思い、寢ぼけた頭で風呂場に向かった。

「う~ん……早くさっぱりして寢よ……」

明日の事を考え、早くシャワーだけ浴びて寢ようと考える誠実。

ノックもせずに、誠実は洗面所のドアを開け、中にった。

「え……」

しかし、ドアを開けた先には、既に先客が居た。

奈穂が丁度風呂から上がり、今まさにをタオルで拭いているところだったのである。

誠実は、一瞬フリーズし、自然と口から言葉がこぼれる。

「oh………」

「な、何よ! いきなり!!」

奈穂は、サッとタオルでを隠すと、顔を真っ赤にして、誠実に対し聲を荒げて言う。

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