《99回告白したけどダメでした》45話

「何混してるのよ、私が好きなのは、伊敷君よ。伊敷誠実君」

誠実を指さし、改めて言う沙に、誠実は戸う。

昨日の沙耶香といい、最近なんだかモテているような気がしてならない誠実。

しかし、困ったことに、急にこんなことを言われても、誠実はまだ心の整理も何もついていない。

しかも昨日知り合ったばかりの子に、まさか告白されるとは思ってもおらず、誠実は沙の事がさらにわからなくなった。

「はい、理由はわかったんだから、映畫付き合ってよね」

「いやいやいや! 何もわかってねーよ! さらにわけわかんねーよ!!」

立ち去ろうとする沙に、誠実はツッコミをれ、引き留める。

「だから、私が伊敷君の事を好きだから、アピールのために映畫にって、あわよくばって言う展開を狙ってるって事! これだけ言えばわかるでしょ?」

「俺をった意味はよくわかった! 問題はその前だ!!」

「前?」

「なんで昨日知り合った奴に告白みたいなことしてんだよ!!」

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沙は誠実に言われ、深くため息をついたのちに、誠実をジト目でジーっと見つめ始める。

「な、なんだよ……」

「ま、そうだよね、覚えてないよね、私髪切ったし……」

自分の髪をりながら、ボソッと獨り言をつぶやいた。

誠実は沙の考えていることが全く分からず、相変わらず一人でオドオドしていた。

「今は教えなーい、誠実君がもっと私を知りたくなったら、教えてあげる~」

「はぁ? まさか、またからかってんじゃ……」

誠実が疑いの視線を沙に向ける、そんな誠実に沙はいきなり至近距離まで近づき、耳元でささやくように言う。

「好きなのは、ホ・ン・ト」

「!!! お、お前!」

誠実は沙にそういわれ、顔を真っ赤に染める。

すぐさま沙から離れ、赤くなった自分の顔を隠す。

「アハハ、顔真っ赤じゃん! 可いな~」

「お、お前! やっぱりからかってんじゃ……」

「からかってなんてないよ? 本當に好きだもん、なんだったら、キスでもしてあげよっか?」

小悪魔のような悪戯っぽい笑みを浮かべ、沙は誠実に言う。

誠実は、そんな沙の態度に更に顔を赤く染める。

「ウフフ、本當に面白いなぁ~、伊敷君は」

「もう勘弁してくれ……最近々あって、頭の中で整理が出來てねーんだ……」

顔を隠しながら、誠実は沙にそういう。

沙はそんな誠実の顔を下から覗き見るように凝視する。

「な、なんだよ…」

「別に~、じゃあ映畫の件はまた連絡するから、連絡先教えてよ」

「まて! 俺はまだ行くとは!」

「え~、ここまで私に言わせたくせに~」

「う……でも、だなぁ……」

「スキあり!」

「あ!! 俺のスマホ!」

誠実の隙をついて、沙は誠実のスマホを奪い取り、ものすごい速さでSNSアプリの友達登録を済ませ、スマホを誠実に渡す。

「はい、これ私のアカウント。また連絡するから~」

「お、おい!」

沙は誠実にスマホを返すと、そのまま走り去っていった。

誠実はその場に一人取り殘され、ボーっと自分のスマホに追加された沙のアカウントを見る。

「マジでなんなんだ……」

誠実は更に悩みの種が増え、頭を抱える。

私は今日、いつもよりも早くに家に帰宅していた。

誰も居ないマンションに帰宅するのも慣れた。

玄関に掛かれた「山瀬」という表札を橫目で見て、私は家の鍵を開ける。

「ただいま」

誰も居ないと分かっていても、ついつい言葉にしてしまう。

私はいつものように制服から普段著に著替えて、リビングのソファーに座る。

「はぁ……お父さんは何時に來るんだっけ?」

今日はお父さんが家に來ることになっており、私はいつもより早く帰宅した。

正直、昨日々あって、學校にあまり居たくなかったため、丁度良かった。

スマホのスケジュールを確認し、私はお父さんとの約束の時間を確かめる。

「なんだ、もうすぐじゃない……」

スケジュールと時間を確認し、私はそろそろ來るであろうお父さんを待ちながら、ソファーでスマホを作する。

何のようで來るのか、私は気になっていた。

この前の電話で、急に様子を見にやってくると言っていたのだが、それだけなら、休みの日にでも來ればいい、會社を早引きしてまで家にやってくる理由が、何かあるのだろうと、私は考えていた。

ピンポーン

「來たかな?」

インターホンが鳴り、私はリビングに設置された子機で応答する。

「はい」

『あ、綺凜ちゃん? パパだよ~」

「あ、今開けるから、ちょっと待って」

私は玄関ホールのオートロックを開けて、お父さんを迎える。

インターホン越しではあったが、お父さんはいつも通り、気なじで、私に接してくる。

し親ばかなところもあるが、お父さんは、私の事をすごく大事に思ってくれている。

「いらっしゃい、あれ?」

私が自宅の玄関先で、お父さんを迎えると、お父さんのほかにも2人、お客さんが居た。

「やぁ、綺凜! 會いたかったよぉ~、パパは綺凜がいなくてさみしくて、寂しくて……」

「お、お父さん……離れて」

顔を合わせるなり、お父さんはいきなり私に抱きついてきた。

他にお客さんも居るので、正直恥ずかしい。

ようやくお父さんが離れたところで、私はお父さんと一緒にやって來た2人のお客さんに改めて挨拶をする。

「お久ぶりです、日(ひお)さん」

「やぁ、元気そうで何よりだよ」

「駿(しゅん)さんもお久しぶりです」

「ひさしぶり、綺凜ちゃん」

この2人は父が會社を設立する際に、々と面倒を見てくれた、日さん親子。

父親が日財閥の社長であり、父の古くからの友人だ。

そして、その息子の日駿さんは、私の二つ年上の高校三年生で、私の婚約者という事になっている。

「今日はどうしたの? こんなに大勢で」

「あぁ、今日は大事な話が合ってきたんだ!」

「そうなの? いつまでも玄関先に居るのもなんですし、どうぞ中に」

「おぉ、そうだな、お邪魔するよ」

私は部屋の中に3人をれる。

正直、この時私は若干気が付いていた。

お父さんと日さん親子が、こうしてやって來たという事は、なんの話かなのかは、直ぐに想像がついた。

しかし、なぜだろう。

その話をするとわかった瞬間、またしても彼の顔が脳裏をよぎった。

「……彼、怒ってるかしら……」

昨日、すべてを打ち明けた後の彼の顔を私は思い出す。

笑っていたが、その目が泣いていることに私は気が付いた。

彼の思いを利用して、踏みにじった。

私は最低だ、自分にそう言い聞かせながら、玄関のドアを閉める。

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