《99回告白したけどダメでした》51話

「あの……もう勘弁してくれませんか?」

「もう、彼なんて諦めたら?」

「な、何もそこまで…」

奈穂の言葉に、誠実の神は最早限界だった。

買いに來て、ナンパされているところを助けて、まさか説教されるとは、誠実も思っていなかった。

「はぁ……でも俺、告白2回もされたし……そこまでモテないわけでも」

「2回? どういう事?」

「あ、やべ!」

誠実は思わず口元を手で隠す。

沙から告白されたことを知っているの、健と武司だけであり、それ以外には誰にも話していない。

なぜか誠実を睨みながら、説明を求めてくる奈穂に誠実は冷や汗をかいてしまった。

「い、々あんだよ……お前は知らなくて大丈夫な事だ」

「ふーん」

奈穂はドリンクバーから持ってきた、オレンジジュースを飲みながら、誠実の方をジト目で凝視する。

別に奈穂にこの間、沙とあった出來事を話す必要はない。

誠実はそう思い、食事に戻る。

すると、奈穂は自分のスマホを取り出し、何やら作をし始める。

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誠実は話をそらそうと、何をしているのか、奈穂に尋ねることにした。

「な、なにやってるんだ?」

「ん、ちょっと連絡」

「誰だ? 友達か?」

「前橋さん」

「ちょっとまてぇぇぇぇぇぇ!!!」

思いがけない人の名前に、誠実は思わず大聲を出す。

なぜ奈穂が沙耶香の連絡を先を知っているのか、など諸々聞きたいことは山ほどあったが、その前に何を連絡していたのか、誠実は気が気でなかった。

もし、沙耶香以外の人間から、誠実が告白をけていたという事実が沙耶香にバレたら、今の狀況では非常にまずい。

事態はややこしくなるし、何より沙耶香に説明をしなければならない。

最近の紗耶香は何やら積極的というか、いつもの落ち著いたじでは無い。

説明をちゃんと聞いてくれるかもわからない、そんな狀態で、現在の自分を取り巻く複雑な事を話すのは極めて困難だと、誠実は考えていた。

「お、おい……一何を連絡してるんだ?」

誠実は襲る襲る奈穂に容を尋ねる。

すると、奈穂は面白くなさそうな表のまま誠実に言う。

「なんかおにぃが二回も告白されたって、自慢してきましたって」

「待て! 頼むから弁解させてくれ! そしてなぜ沙耶香に連絡をした!」

「どうせ遅かれ早かれ話さなきゃいけないんだから、早い方が良いでしょ?」

「そうだけど! 俺にだって考える時間とか、心の準備ってもんが……」

「前橋さんから電話だけど、出ても良い?」

「早い! 沙耶香早いよ!!」

連絡をけ、奈穂のスマホに連絡をれてきた沙耶香。

奈穂は誠実の意見を聞かないまま、電話に出る。

「もしもし?」

『み、奈穂ちゃん! あのメッセージどういうこと!?』

「えっと、そのままの意味です。おにぃが昨日、また告白されたらしいです」

『だ、誰に!?』

「それは今から私が聞くので、前橋さんは月曜日にでもおにぃからじっくり聞いてください」

『あ、ちょっとま……』

奈穂は半ば強引に、電話を切り誠実の方を向く。

なぜか満面の笑みのまま、奈穂は誠実に向かって優しく言う。

「で、どうなの? 誰なの?」

「み、奈穂……なんで怒ってる?」

「怒ってないよ? ただ、ここまで聞いたら、気になっちゃうから、全部聞きたいだけ」

「じゃあ、なんでお前の後ろに鬼が見えるんだよ……」

誠実は奈穂から視線を外し、冷や汗をかきながら、背筋をピンとして椅子に座っていた。

誠実は恐怖からか、奈穂の後ろに黒い鬼の幻覚まで見え始めていた。

「べ、別に誰だっていいだろ? 俺の問題だ、お前に話すことでも……」

「聞こえなかった? 誰なの?」

「二日前に知り合った、違うクラスの子です」

兄の威厳を見せてやろうと、し強気な態度を見せた誠実だったが、奈穂の威圧に勝つことが出來ず、直ぐに自白する。

なんだか、言う通りにしなければ、あとで社會的に消されてしまうのではないか?

などと誠実は奈穂に恐怖をじる。

「へ~最近知り合ったばっかりで告白してくるなんて……とんだビッ……」

奈穂さん! なんか口が悪いですよ!! それに、俺も急な事で良くわかってないんだって!」

奈穂が何かとんでもないことを言おうとしたので、誠実は慌てて大聲を出し、奈穂の言葉をかき消す。

口は災いの元と良く言うが、今がまさにそれだと誠実は実していた。

「もう、良いじゃないか、それに今日は買いに來たんだし、こんな話はやめてショッピングを……」

言いながら誠実はふと窓の外を見る。

するとそこには、なんだか最近見たような顔があった。

ウェーブのかかったショートボブに、茶の髪。

間違いなく、今話題に上がっている沙だった。

「ん? どうかした? 外に何……」

「何もない! 何もない! お前は俺だけを見てろ!!」

誠実は慌てて、奈穂を自分の方に向かせ、外を見せないようにする。

そうすると、なぜか奈穂は顔を赤くし、しの間フリーズする。

「な、何言ってんのよ……ば、馬鹿なんじゃ……」

なんだかよくわからないが、窓から注意をそらせたことに誠実はホッと一安心する。

しかし、まだ安心ばかりもしていられない。

いつ沙がこちらに気が付くかわからない、遭遇すれば間違いなく面倒なことになる。

幸い、沙の方は誠実たちに気が付いて居ない、何とか気が付く前にこの場を離れようと誠実は考える。

「み、奈穂……もうそろそろ行こう、俺行きたい店があるんだ」

「べ、別にいいけど……その前にさっきの言葉ってどういう……」

「よし! 決まった! ほ~らさっさと行くぞー」

「あ! ちょっと何急いでるのよ!」

誠実は奈穂の手を引き、ファミレスでお會計を済ませ、外の様子を伺いながらファミレスの外に出る。

「……よし!」

「何が良いのよ……さっきから何か変よ?」

「いや、おにぃはいつもこんなじだ。良いからおにぃについてきなさい」

「一なによ……俺だけ見てろとか、ついて來いとか……そんなのまるで……」

「ヤバイ! 奈穂あっちの雑貨店行こうぜ!」

「あ! もう、なんなのよ!」

誠実は沙に注意しながら、奈穂を連れて雑貨店にっていく。

奈穂は奈穂で、誠実の急な言に驚きながらも、奈穂の手を取って歩く誠実の行がうれしかった。

手をつなぐのはし恥ずかしかった奈穂だが、なんだか人同士のようなことが出來て心ではドキドキしていた。

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