《99回告白したけどダメでした》53話

「? だってそうじゃ無いと、一緒に買いなんて來ないんじゃない?」

「べ、別に……買いくらい、兄妹で來ます!」

「え~、私の友達にもお兄さんが居る子っているんだけどさ、みんな大抵仲悪いよ?」

「そ、それは他所の家の話です! うちは兄妹仲が良いだけです!」

見るからに奈穂は揺していた。

顔を真っ赤にし、持っていたマグカップを握りしめ、沙に強くそういう。

2人の會話を聞いていた誠実は、確かに他所と比べると、自分たちは兄弟仲が良い方かもしれないと気が付き始める。

「でも、それならわかるよね? お兄さん優しいし、なんて言ったって面白いしね!」

笑顔で奈穂にそういう沙に、誠実は聞いていて照れてしまった。

奈穂は奈穂で、心の中で「そんなの私が一番知ってる」なんて思いながら、更に機嫌を悪くしていた。

「ねぇ、そろそろ名前で呼んでも良い? 苗字だとややこしいしさ」

「え? あ、あぁ好きに呼べよ」

誠実は照れていたところに、突然話を振られ、しだけ驚き返答する。

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「じゃあ、誠実で良いよね? 私の事も沙って呼んで良いからさ」

「呼ばねーよ。俺は別に呼び方で困っては居ないんでな」

「え~、良いじゃん別に減るもんじゃないし」

「誤解されたら困るんだよ! それに……恥ずかしい」

誠実の言葉を聞き、奈穂はニヤニヤとした表で、誠実を見る。

小悪魔のような表で、沙は誠実の側に近づく。

「なんだなんだ~、の子を名前で呼ぶのは恥ずかしいのか~」

「うっせ! あんまからかうなよ、奈穂の前なんだから、しは兄の威厳を……」

「おにぃに威厳なんてないわよ」

「俺に味方は居ないのかよ……」

沙からはからかわれ、奈穂からは冷たい視線を向けられ、誠実はもう家に帰りたくなっていた。

「じゃ、私そろそろ行くね。せっかくの兄妹水らずを邪魔出來ないし」

「意外だな、ついてくるのかと思って覚悟したぞ」

「そこまで空気の読めないじゃないって、じゃあ私はここで! バイバイ」

沙はそう言って、雑貨店を出て行った。

殘された誠実は、沙は意外とちゃんとした奴なのかもしれないと思っていた。

あんなじで自分をからかってくるが、ちゃんと空気を読んでくれているし、行き過ぎた事はしない。

出會って數日なので、沙のすべてを知っている訳ではない誠実だが、意外と良い奴なのかもしれないと思っていた。

「おにぃ……」

誠実は奈穂に呼ばれ、顔を青くする。

きっと々聞かれる。

そして文句を言われる、なぜかは分からないが。

誠実はそんな事を考えながら、覚悟を決めて応える。

「はい……」

「……可い人だね」

「は、はい、そうですね……」

「おにぃの事よくわかってる」

「そ、そうでしょうか?」

「うん……」

以外にも、奈穂が言っていたのはそれだけだった。

怒っているわけでは無い、しかし表は無表だった。

誠実はそんな奈穂が何を考えているか分からず、今度は自分から尋ねた。

「…どうか、したか?」

「なんでも、さ! 次行くわよ!」

「あ! おい!」

奈穂は急に元気になると、持っていたマグカップを棚に戻し、誠実の手を引いて次の店を目指し始める。

その後、特に奈穂は沙の事を尋ねてきたりはせず、誠実を連れまわし、買いを楽しんだ。

誠実は家に著くころにはヘロヘロになっており、家に帰ってすぐに寢てしまった。

家に帰り、奈穂は一人部屋で思う。

(あの人も……おにぃの事好きなんだろうな……)

奈穂は沙と話してよくわかった。

誠実をからかいつつも誠実の事を考えている事に。

そして、誠実を真剣に好きな気持ちが、自分と変わらない事に……。

誠実は奈穂との買いに疲れ、ベッドで數時間睡眠をとっていた。

そんな時、誠実のスマホが音を立てて震え始め、誠実は目をこすりながら、目を覚ました。

「ん~、誰だ……」

スマホのディスプレイには「蓬清栞」と表記されており、誠実は一瞬誰だったかと不思議に思う。

寢ぼけていた事もあった誠実は、無意識に電話に出る。

「フア~……もしもし… …」

『うふふふ、寢起きにごめんなさい、私です、栞です』

「栞? ……先輩!? す、すいません! 寢ぼけてました!!」

『大丈夫ですよ。急に電話した私が悪いんです』

優しい先輩だな~、なんてことを考えながら、誠実は栞の優しい聲に心が癒されるのをじていた。

「それで、どうしたんですか?」

『はい、伊敷君は明日は何か用事がありますか?』

「いえ、無いですけど……」

『それでは、私の家にいらっしゃいませんか?』

「え! 先輩の家にですか?!」

誠実は驚いた。

確かに遊びに行くとは言ったが、まさかこんなに早くだとは思わなかった。

先輩、しかも子の家に遊びに行くなんて誠実は今までの人生で経験が無く、々不安だった。

『急ですいません、ただ明日だとお母様とお父様が揃って家にいますので、是非あってお禮が言いたいと言っているんです』

「あ、あぁ……そうなんですか」

(まさかの家族勢ぞろい!!)

 誠実の不安は更に加速していく。

どんな服を著て行けばいいか、手土産は何が良いのか、不安の種は盡きない。

「だ、大丈夫なんですけど、俺って先輩の家知らなくて……」

『安心して下さい、家までお迎えに行きますわ。住所を教えていただければ送迎は任せて下さい』

「あ、はい……」

最後の斷る手段も消え、誠実は覚悟を決める。

栞に家の住所を教え、何時に迎えに來てもらうかを話し、どんどん明日の日程が決まって行く。

『では、明日お待ちしています。お休みなさい』

「はい、それじゃあ。お休みです」

誠実はそういって電話を切り、大きく息を吐く。

スマホをベッドに置き、肩の力を抜き、數秒リラックスする。

そして……。

「やべー!! 何か手土産買ってこねーと!!! 母さん! 手土産って何が良いんだぁぁぁ!!」

誠実は急に慌てだし、母に手土産について意見を求め、著ていく服について奈穂に相談をする。

時刻は19時、誠実は初めての子の家訪問と言う一大イベントに心を躍らせると同時に、ものすごい不安で一杯だった。

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