《99回告白したけどダメでした》62話
*
誠実たちが必死になって捜索をしているそんな時、居酒屋では忠志と勤、そして店の店主の親父が、家族の話題で盛り上がっていた。
「にしても、ただちゃんのとこは良いじゃねーのよ。うちなんて、娘は勉強ダメ出し、嫁はあれだしで大変よぉ~」
「あ、奧に居るは、店主の奧さんだったんですか?」
「おう、昔と今じゃ、雲泥の差よぉ……今じゃしわくちゃのシワだら…イテテ!!!!」
「私がなんだって?」
「アハハ、親父も嫁のに敷かれっぱなしじゃないの!」
居酒屋の店主の奧さんは、カウンターの奧でサイドメニューや、を作っていたのだが、話が聞こえたらしく、店主の親父の元にやって來て、思いっきり耳を引っ張った。
そんな店主と奧さんの姿を見て大笑いをする忠志。
勤も苦笑いをしながら、その様子を見ていた。
「全く、私が嫁に來なきゃ、あんたは一生獨りだったよ! 謝してほしいね!」
「は、はい。すいやせん……」
先ほどまで勢いのあった店主が、今はしゅんとしている。
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そんな店主の様子を見て、勤は直ぐにこの夫婦の上下関係が分かった。
「伊敷さん、今日は珍しく連れが居るんだねぇ、誰だいこの男前? 私にも紹介してくれよ。この亭主から乗り換えるから」
「そりゃないぜお前~」
「あはは、こいつは今日知り合った、勤って言うんだよ! 聞くとこによると、こいつは家族の事で悩んでるらしくてな! 奧さんも相談に乗ってやってくれよ~」
「ありゃ、大変だね~。何があったんだい?」
「あ、それは……」
勤は自分が今置かれている狀況を、店主の奧さんに話した。
奧さんも相槌をうちながら、勤の話を真剣に聞いて居た。
「……と、いう訳で……」
「それは、あんたが悪いよ!」
「え……」
勤はそう奧さんに斷言され、驚いた。
まさかハッキリそうストレートに言われるとは思っていなかったので、勤は一気に良いが覚めた気分だった。
「どんな理由があったにせよ、あんたはそこから逃げちまったんだ。あんたが悪い、ちゃんと顔見て話さないと、どんな人とも分かり合えないよ」
「た、確かに……」
「奧さん! いじめすぎだよ!! こいつだって、々あるんだぜ?」
「伊敷さんは男だから、そんな風に同しちまうんだよ! はね、旦那が何も言わないと寂しいんだよ……構いすぎッてのも嫌だけど、適度に構ってほしいんだよ……」
「なんで、俺の方を見るんで……」
奧さんは店主に何かを訴えるように店主に視線を向けながら、語りだす。
店主はそんな視線に気が付き、気まずそうに焼き鳥を焼き始める。
「確かに、男にもいろいろあるんだろうよ、でも男が思っているほどは強くないんだよ! 家に帰って來なきゃ寂しいし! 私に飽きたんじゃないかって、不安にもなる! 私は結婚だから、見合い結婚がどんなじかなんてわからないよ! でも、あんたの奧さんは、あんたを良いと思ったから結婚したんだろ? それはあんただって変わらないだろ? ならちゃんと話をしないと、家族なんだ」
「………そうですね」
店主の奧さんの言葉は、勤のにグサリと突き刺さった。
奧さんの話は最もであり、勤は図星を疲れた気分で、自分自を責めていた。
「まぁまぁ、そんな責めないでやってよ~。勤、確かに奧さんの言う通りだよ、だけどな人間時には逃げたくなるんだよ……」
「逃げたくなる?」
「あぁ、誰だってそうだよ。々考えすぎて、全部忘れたくなってな……逃げたくなるんだよ。それがお前は今日だったんだよ」
忠志は勤のグラスにビールを注ぎ、何かを思い出しながら勤に話す。
「俺もそうだった……わからなくなって、頭の中がぐちゃぐちゃになって、気が付いたら一人で街を歩いてた……人間、一度はそういう時があるのかもしれない」
「忠志もそんなことが?」
「あぁ、なんだか家族ってもんがわからなくなってな、気が付いたら家を出て飲み屋をはしごしてた……」
寂しそうな表でそう語る忠志。
勤はそんな忠志の話を真剣に聞いていた。
「そしたら、丁度この店の前で事故にあってよ、足折っちまってさ! いやぁ~あの時は參ったよ」
「え! 大丈夫だったのかい?」
「あぁ、俺は全然平気よ! でも、家族がな……」
その言葉の続きが、勤には予想が出來た。
何も言わずに家を出て家族に心配をかけているところに、通事故にあったなんて話が來れば、家族はひどく心配するだろう。
「あんときは、家族全員が泣いて俺に謝ってきてよ……正直申し訳なかったよ。謝らなきゃいけないのは俺なのに……」
「忠志……」
「今思えば、あれは神様が自分勝手な俺に落とした罰だったのかもしれないな……おかげで、家族について考えるいい機會になった。今じゃ、家族に不安をじることは一切ない。良く分かったからな、されてるってことがよ……」
ビールを飲みながら、そう語る忠志を勤は凄いと思った。
心から家族を信頼している。
そういうじが、話を聞いて居た勤にも伝わって來た。
今の自分に足りないものを忠志は持っている。
そう勤はじていた。
「だからさ、お前もちゃんと家族と話てみろよ。大丈夫だ、きっとお前の娘や嫁さんだって、お前をしてるよ。家族ってのはそういう當たり前のことを中々言えないもんだ」
忠志の話を聞いているうちに、勤は目から自然よ涙があふれ出ていることに気が付いた。
「お、おい! どうした勤?」
「あ……いや、なんでも…うっ……」
自分がけなくて泣いているところもあった。
しかし、一番は違う。
一番の涙の原因は、自分の相談を一日を通してずっと聞いてくれた、忠志にあった。
「おいおい、ただちゃん泣かすなよ!」
「え! 俺のせい?!」
「全くもう。ホラ、コレで涙拭きなよ」
奧さんにハンカチを手渡され、勤はそれで顔を隠すようにしながら涙を拭く。
しかし、涙は溢れて止まらない。
「ぼ、僕は……今まで、友人と呼べる人が……ただの一人もいなかった。だから、誰にもこんな相談できなくて……でも、こんなに親になって忠志や店主さん、そして奧さんが……話を聞いてくれて………」
今までの勤の人生は一人きりの時間が多かった。
親の言う通りに勉強し仕事をし、結婚相手も親が選んだ人で、勤は友人や人といったプライベートな人間関係を一切知らなかった。
しかし、今日勤は初めて、それらの関係を知ることが出來た。
一緒に笑って遊べる友人。
悩みを聞いてくれる良き理解者。
そんな心優しい人々に出會えたことが、勤はうれしかった。
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