《99回告白したけどダメでした》64話

顔を伏せ、泣きながらわめく忠志に、誠実は呆れたようすでそういう。

誠実はこの謎すぎる狀況に疑問を抱いており、忠志に構っている余裕はなかった。

なぜか、父親と先輩のお父さんが友人で、居酒屋で二人で飲んでいるところに出くわし、今は両家族が対面する形で向かいあっている。

「お見合いかよ……」

誠実は小聲でそうつぶやき、一何から話せば良いやらと考える。

「とりあえず、君には謝らないといけないね。約束を取り付けたのはこちらの方なのに、逃げてしまって、申し訳ない……」

「あぁ、そんな頭を下げないでください! 気にしてませんよ、こっちこそうちの親父が連れまわしたようで、申し訳ない……」

いまだに顔を伏せて泣きわめく親父に代わり、誠実は勤に頭を下げる。

何があったら、こんなミラクルが起きるんだ。

そんなことを誠実が考えていると、勤が口を開き誠実に言う。

「君のお父さんは、立派な人だね」

「今こんな狀態じゃなかったら、素直にうなずいていましたよ」

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誠実は顔を伏せている忠志を橫目で見ながら、苦笑いで勤にそう応える。

「今日、私は君のお父さんと一日一緒に居て、々な事を教えてもらった……君や家族の前でこんなことを言うのは失禮かもしれないが、最高の一日だった……」

らかい表で何処か楽し気にそういう勤。

こんな親父と居て何が楽しかったのだろうか?

誠実は不思議に思った。

勤の話している時の表が、本當に生き生きしていたので、真剣にそう思う。

「今日は私もお酒がってしまっている。こんな狀態では謝罪しても何の意味もない、だからまた今度、改めて我が家に來てはくれないか? その時に改めて謝罪をしたい」

「い、いや……そんなかしこまらなくても……それに俺はそんな大したことは……」

「いや、是非お禮がしたい。思えば、私達親子は君たち親子にそれぞれ助けられている。なにかお禮をしなければ収まらないよ」

誠実は、自分が栞を助けたことはともかくとして、忠志は一勤に何をしたんだ?

ますます疑問に思いながら、小聲で脇の忠志に尋ねる。

「おい親父! 一あの人に何したんだよ」

「一緒にパチンコ行ったり、居酒屋行ったりしただけだ! 俺もなんであそこまで謝されてるのかわからん……」

「大親父は何やってたんだよ! 休日に一人で!」

「仕方ないだろ! 母さんが散歩でもして來いって……」

「あぁ、追い出されたのか……」

誠実と忠志がコソコソと話をしている間、蓬清家の面々は勤に話を聞いて居た。

「旦那様、一今まで何をしていたんですか? 貴方様がこのような事をするなど……」

「すまない義雄、ちょっと悩みがあってね……でも、解決しそうだ」

「悩み…ですか? 一何が……」

「家に帰って、話すさ。これ以上この店に迷を掛けたくないんだ、今日は失禮しよう……」

勤はそういうと、立ち上がりその場を後にしようとする。

「忠志、君に會えてよかったよ」

帰り際、勤は忠志の方を見てそう言う。

忠志は顔を上げ、勤に笑いながら返答する。

「ちゃんと話せよ!」

勤は忠志のその言葉を聞くと、栞と由良を互に見て言う。

「帰ろう、まずは栞と由良に謝らなくてはいけないね」

優しい表で言う勤に、由良と栞はなんだか安心した。

いつもあまり表を表に出さない勤が、今日はこんなにも楽しそうで、今までにないほど父親らしかった。

勤たちは店の店主と奧さんに挨拶をし、店を後にする。

栞は帰り際、誠実に「後で電話してもよろしいですか?」と尋ね、了承をもらい父と母の元に帰って行った。

「なぁ、誠実」

「なんだ、親父?」

「お前って、あの栞ちゃんって子の事好きなのか?」

「はぁ? 何わけわかんねーこと言ってんだよ。俺と先輩じゃ月とすっぽんだっての、親父の息子だぞ?」

誠実と忠志も勤たちの後に続いて居酒屋を後にし、今は親子で帰路についていた。

並んで歩きながら、忠志はふと勤の言葉を思い出し、誠実に尋ねる。

「そうか、お前が栞ちゃんを助けたのか……」

「なんで知ってんだよ……って、あれか先輩のお父さんから聞いたのか」

「まぁな……お前も立派な男になったもんだ」

「い、いきなりなんだよ……気持ち悪い」

突然忠志から褒められ、誠実は困する。

「誠実……」

「な、なんだよ?」

「家族って良いな」

「だからどうしたんだよ!! 今日の親父おかしいぞ!」

いつもなら絶対に言わないセリフを言う父親に、息子は困しながら尋ねる。

忠志は勤を探しに來た由良と栞を見たときに、そうじた。

本當に心配していた様子で、不安そうな表で、勤を見ていた二人。

その二人を見たときに、忠志は思った。

勤もされていると。

「誠実、付き合うんなら顔だけじゃなくて、格も重視しろ。本當に自分をしてくれる人と一緒にならないと、あとで泣くことになる……」

「だから急になんだよ! そんなわかって……」

誠実は分かっていると言おうとしたが、途中で言葉がでなくなってしまった。

自分の好きな相手は、果たして格が良いのだろうか?

自分のした人は、自分を見ては居ない、他の男を見て笑顔を向け、自分の心は踏みにじった。

「……わかってるよ」

小聲でしか言えなかった。

自分はを見る目が無いのかもしれない。

誠実は、忠志から言われて気が付いた。

そんな誠実の心を察してか、忠志は言う。

「まぁ、でも好きになっちまったら、仕方ないよな。俺もそうだった……」

「え……」

「俺と母さんは、最初はなんていうか犬猿の仲でな……喧嘩ばっかりしてた」

「それは今もなんじゃ……」

格なんて最悪だと思ってた、わがままだし、自己中だし………でも、あいつはそんな悪いところをかき消すくらい、良い奴だった……だから、惚れちまったんだ」

「ふーん……」

なんで両親の馴れ初めを聞かなきゃならないんだ?

誠実はそう思いながらも、忠志の話に耳を傾けていた。

「今でも喧嘩するし、冷たくされるけど、一度好きになっちまった以上、俺は母さんをずっと好きだろうな、例え離婚しても……」

「本當に大丈夫か? 今日の親父変だぞ?」

「うっせ! 々あったんだよ……」

勤の相談を聞いている間、忠志も自分の家族について考えていた。

最近、夫婦仲は良好と言えるだろうか?

息子たちとはコミュニケーションが取れているだろうか?

そう考えるうちに、自分も家族と話をしようと、忠志は思っていた。

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