《99回告白したけどダメでした》伊敷奈穂の思い

私、伊敷奈穂は兄が好きだ。

として、一人のとして、伊敷誠実という男を好きになった。

きっかけは今考えると単純だったと思う。

兄は昔から優しくて、私が泣いているといつも傍に來て笑ってくれた。

そんな兄を好きだと自覚したのは、小學5年生の頃だ。

小學校の5年生ともなると、に興味がわいてくる。

私の周りもそんなじで、誰が誰の事を好きだとかで盛り上がっていた。

私は周りよりも容姿が良いと評判らしく、この時期から頻繁に男子からアプローチされるようになった。

「い、伊敷! お、俺お前のことが!」

「ごめん、好きな人居るから」

「早くない!?」

こんなじで、放課後に呼び出されては、私はいつも告白をけていた。

私が兄を好きだったのは、この時期からだった。

でも、そのことを誰にも言わなかった。

兄妹は結婚できない、それを知ったからだった。

普通は兄弟で関係にはならない、なってはいけない。

それを知ったから、私はこの思いをにしまい続けていた。

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奈穂さ~、また告白されたんでしょ?」

「うん、三組の堀君」

「え! あのカッコいいって噂の? なんで斷ったの~もったいない」

「私はまだそういうの良いから」

「やっぱり大人だなぁ~奈穂は……」

本當はそうじゃない、にだって興味があるし、実際好きな人もいる。

でも、それがいけない事だから、私は興味のない風を裝っている。

最近では、兄を思うことが多くなり、話すのも恥ずかしくなり、あまり家でも話をしなくなってしまった。

友人と別れ、家に著いた私は家のドアを開けて中にる。

「ただいま」

「あら、お帰り奈穂。ケーキ食べる? 安かったから買ってきたの」

「うん、食べる。ランドセル置いたら、戻ってくるよ」

「あ、じゃあお兄ちゃん起して來てくれない? どうやら寢てるみたいなのよ」

「わかった」

私は自分の部屋に戻り、ランドセルを置いた後に、隣の兄の部屋に向かった。

コンコンと二回ノックをし、中にる。

「おにぃ?」

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兄はベッドの上で大の字になって寢ていた。

なんでこんな兄が好きなのだろう、私はそう考えながら兄の元に近づき、兄の顔を見る。

「……アホ面」

間抜けな表で、寢息を立てる兄の顔を見ながら、私はつぶやく。

さて、どう起こしたものだろうか。

私はとりあえず、聲をかけて起こしてみようと思い、兄の耳元でし大きめの聲をで兄を起こす。

「おにぃ、おやつ! さっさと起きる!」

「……うぅ……もうし……」

まぁ、これぐらいで起きないのは分かっていた。

今度はを揺らしてみよう、そう考えて兄のに手をかけた瞬間、枕元に寫真が置いてあることに気が付いた。

なんだろう?

私は寫真を手に取り、なんの寫真か確かめる。

そこには、兄と見知らぬがツーショットで寫っていた。

「………」

私はなんだか急にイライラしてきた。

このは誰なのだろう、どんな関係なのだろう、そんなことを考えながら、アホ面で寢息を立てる兄の顔を見る。

そして……。

「えい!」

「はぅ!! な! なんだ! 急におなかにものすごい衝撃が……」

思いっきり兄のおなかを毆った。

一気に目を覚ました兄は、おなかを押さえてベッドの上で丸くなっている。

「おにぃ、おやつだって! 早く降りてきてよね!」

「え! 奈穂? この腹の痛みはお前の仕業か!」

「起きないおにぃが悪い、じゃあ私は先に行くから」

なんだかがモヤモヤした。

あの子は誰なのだろう、なんでツーショットだったのだろう。

そんなことを考えながら、私は再び寫真を見ながら一階に降りていく。

そして、冷靜になって気が付いた。

「あ……持ってきちゃった」

兄の部屋からツーショット寫真を持って來てしまったことに気が付いた私。

早く戻さなければ、そう思った私は寫真を持って、兄の部屋に戻ろうとする。

そこで、もう一度寫真を見た。

兄は笑顔でこちらに向かってピースしており、よく見ると隣のの子は泣いていた。

場所はしかも教室で、夕焼けが寫っていることから、放課後に誰もいなくなった教室で撮られていることがよくわかる。

「……なんか、不思議な寫真……」

兄は満面の笑みなのに、の子は號泣していて、どんな狀況なのかよくわからない。

寫真の裏にも何か書いてあるようで、私は寫真を裏返して、なにが書いてあるのかを見る。

そこにはマジックで一言「ありがとう」と書いてあった。

「……本當に誰よ……この子」

「あぁ、この前転校していった友達だよ」

「っ! お、おにぃ!!」

階段に座り込んで寫真を見ていた私の後ろから、兄が聲をかけてきた。

私は驚き勢いよく兄の方を振り返る。

「無いと思ったら、お前が持ってたのか」

「あ、あとで返そうと思ってたのよ……」

「まぁ、それなら良いけど」

私は兄に寫真を返し、立ち上がる。

兄は寫真を見て寂しそうに笑うと、寫真をポケットにしまい、階段を下りていく。

「ほら、おやつ食いに行こうぜ、俺腹減っちまった」

私は、寫真の子が誰なのか気になり、兄に尋ねる。

「おにぃ、その子誰? おにぃがの子とツーショットなんて珍しいじゃん……」

「だから友達だよ、もう遠くに行っちまったけど……」

噓だ。

私は兄が噓をついていることに気が付いた。

なくとも兄は、友達とは思っていない。

さみしそうに笑う兄の表から、兄にとって友達以上の大事なそんざいだった事に気が付いた。

が苦しくなるのと、同時にホッとするような覚が私のにはあった。

「噓、おにぃその子の事好きだったでしょ」

「………」

思わず口に出して言うと、兄は何も言わなくなってしまった。

きっと図星だったのだろう、あまりこういう事を思うのはいけないと思うが、正直私はその子が転校して良かったと思っていた。

奈穂……人を好きになるって、難しいな……大人になったら、もっと違うのかな?」

「え……」

「最後の日、何も言えなかったんだ……恥ずかしかったのもあるけど、言っても意味が無いって思ったら、何も言えなかった………告白って、難しいな!」

そういう兄の瞳には涙が溜まっていた。

無理やり笑顔を作り、私にそういってきた。

この時、私は思ってしまった。

兄はきっと、私をなんとも思っていない、何か的なを持ってれば、こんな表を兄が他人に見せるわけがない。

それは妹の私がよく知っている。

それからだ、私は兄を好きでいるのをやめようと思い始めた。

兄と極力話をしないようにし、兄への思いを忘れられるように、モデルをやってみたり。

でも、私は兄への思いを忘れることが出來なかった。

いつも優しくて、面白くて、本當に大好きだった。

兄が高校に上がった時だ、また兄に好きな人が出來たらしい。

近くの高校に、一人の生徒に何回も告白をしている男子生徒が居る。

そういう噂が、私の通う中學にも流れてきた。

私は直ぐに兄だと気が付いた。

理由は簡単だ、高校に學してからニヤニヤしていることが増えたし、急に道をしてみたり、學年一位の績をとったり、料理に目覚めたり。

また私じゃないのか……。

私は悲しかった、兄にとって私は家族でそれ以上を期待できない、してはいけない。

気持ちが沈んでいたそんなときだ、私の家に蕓能プロダクションのプロデューサーがしつこく勧してきた。

「さっさと帰れ! しつこいって言ってんだよ!!」

兄がその勧を怒鳴って追い返してくれた。

心というものは単純だ、困っている時に好きな人から守ってもらっただけで、更にその人を好きになってしまう。

私はその日の夜、久しぶりに兄と二人きりで食事をし、決意した。

どんな結果になっても良い、やるだけやってみよう。

何もやらずに諦める方が後悔する。

その日から、私は兄の心を摑むためにき出した。

そして現在……。

「なぁ……奈穂」

「何? あ、テレビ変えてよ、ドラマみたいの」

「いいけど、そろそろどいてくれない? 結構重た……」

「なんか言った?」

「いえ……何も……」

私は兄の膝を枕にして、ソファーに寢ころびながらスマホを弄っていた。

食事を終え、お風呂から上がった時に、兄がリビングのソファーでテレビを見ていたため、私は兄の隣に行き橫になったのだ。

「あの……俺そろそろ部屋に戻りたいんだけど……」

「ドラマ終わるまで付き合ってよ、あんたの膝枕が丁度いい位置にあるんだから」

「んなもん他で代用しろよ!」

「まぁまぁ、良いじゃない」

「よくねーよ! お前も年頃なんだから考えろ!!」

「何おにぃ? 風呂上がりの妹に興しちゃうの~?」

「あほか! んなわけねーっての…って! いてぇな馬鹿! なんでつねるんだよ!」

「別に、ほら早くチャンネル変えて」

「なんなんだよ……全く」

私はあきらめない。

ライバルも多いし、私には大きなハンデもある。

いつかは兄が誰かに取られてしまうかもしれない、でも私は何もしないで兄を渡すのは嫌なのだ。

私は普通の妹ではない、兄を本気で好きな妹などいないだろう。

でも、好きなのだから仕方ないのだ。

私は今日も兄にアプローチを続ける。

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