《99回告白したけどダメでした》83話

職員室にやって來た誠実達を待っていたのは、お茶を飲む小川だった。

誠実たちは小川の席にまっすぐ向かい、それに気が付いた小川はお茶を置いて誠実たち三人の方を向く。

「來たな、三ば…いや、馬鹿」

「先生、もうそれただの悪口です…」

誠実が肩を落として小川に言うなか、武司と健はいつもの事だと言わんばかりの様子で、ため息を一つ吐いて尋ねる。

「で、なんの用ですか先生? そして、なぜ視線を泳がせる……」

「べ、別に……泳がせてなんか…居ないぞ?」

不自然に視線を泳がせる小川に違和じたのは、武司だけではなかった。

誰がどう見ても、何かを隠しているようなじの小川に、誠実達三人は疑問を抱く。

「先生、そういう態度を生徒にするのはどうかと思うぞ?」

「健の言う通りだぜ? ハッキリ言ってくれよ、気持ち悪いぜ」

健と武司が小川にそういうと、小川は視線をそらしたまま話を始める。

「実はな、お前たちを呼んだのは、これについて聞きたくてな……」

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小川が出したのは、誠実が沙耶香にもらったのと同じ校新聞だった。

それを見た健と武司は言葉を失い、誠実は小川に詰め寄る。

「は、話ってこのことなんすか!! 教師が生徒の噂を鵜呑みにしないでくださいよ!!」

「い、いやぁ…でも、お前らって仲良いし……もしかしたらと思って……」

小川は相変わらず顔を逸らしており、若干誠実たちから距離を置いている。

しかもよく見ると、周りの教職員も誠実たち三人をチラチラ見ていた。

BL好きと噂の小野山(おのやま)先生は、息を荒くしながら誠実達をガン見していた。

その様子に気が付いた誠実は、慌てて小川の誤解を解く。

「先生、俺たちに限ってそんな事絶対ありませんよ!」

「俺はお前たちならありそうだと思うが……」

「どこがですか!!」

「どっからどう見てもだ! お前らいつも大抵一緒に居んじゃねーか、伊敷は振られすぎて、男に目覚めたんじゃないかって言われてるんだぞ」

「俺はちゃんとが好きです!」

誠実と小川が話をしている間、健と武司はなぜか靜かだった。

その靜けさに違和じた誠実が、二人の方を向くと、二人はなぜか真っ白になっていた。

「おぃぃぃ!! お前らどうした! なんでそんな白いんだよ!!」

「…ハハ……俺がけ……」

「……なんで俺が……攻め……」

どうやら記事の無いようにがっかりしている様子の武司と健。

「そんなん今はどうでも良いだろ! 今はこの記事が誤解だってことを説明しないと!」

「はっ! 俺は何をしてたんだ!」

「記事がショック過ぎて半分何処かに行っていた……」

「戻って來たか……」

どうやらショックが大きすぎて、健と武司はどこか違う場所に行きかけていたようだった。

正気に戻った健と武司と共に、記事に書いてあることがデタラメである事を説明し、何とかわかってもらうことが出來た誠実達三人。

「あ、そういえば、昨日の件ってどうなったんですか?」

話が終わり、帰ろうとしたところで、誠実がふと尋ねる。

昨日の件というのは、綺凜の事だった。

誠実はそれで呼び出されたのだと心思っていたため、呼び出された理由が全く違い、自分から話を切り出した。

「あぁ、そのことなんだが、なんでも向こうの勘違いだったらしくてな、今朝謝罪の電話があったぞ? お前にも謝りたいと言っているが、どうする?」

この話を聞いた瞬間、誠実の中で何かが崩れる音がした。

綺凜の親が、昨日の今日でここまで態度を変える理由は一つしかない、それはすべての事実を知ってしまったからだ。という事は、駿はすべてを話たのだろう、そしてもちろん綺凜本人にも……。

「せ、先生……山瀬さんって……今日は?」

「あぁ、なんか調を崩して休みらしい。だが、よかったじゃないか、疑いが晴れたんだ!」

笑顔で言う小川だったが、誠実は全く笑顔になれなかった。

きっと調不良なんて噓だと、誠実は気が付いた。

綺凜はすべての事実を知って悲しんでいるのだと。

誠実たちは、話を聞いた後、もうしで授業が始まることもあり、職員室を追い出された。

「くそっ! あいつ…なんで……」

自分が甘かったのかと誠実は壁に拳をぶつけ続ける。

結局何もできなかったと、結局自分は好きな人の日常すらも守れなかったのだと、誠実は悔しさでおかしくなりそうだった。

「誠実、俺はこれでよかったと思う」

そう切り出したのは武司だった。

真剣な表の武司に、誠実は荒々しい聲で尋ねる。

「それってどういう意味だよ!」

「そのまんまだ、山瀬さんはどっちみち真実を知らなきゃダメだと思う」

「それじゃあ、あの人が可哀想じゃないか! 今まで信頼してた人から裏切られたんだぞ! 迷をかけまいと々やって! これじゃあ山瀬さんが……」

「誠実!」

大聲を上げたのは武司ではなく、健だった。

いつも通りの無表で健は靜かに言う。

「じゃあ、誠実はどうなる?」

「お、俺は……」

正直どうなっても良かったと、誠実は思って言た。

綺凜があの笑顔でいてくれるなら、自分はどうなっても良いと思っていた。

「どうせ、どうなっても良いとかおもってたんだろ? 長い付き合いだ、お前の考えなんてよくわかる」

「だったら…」

「だからだ!」

またしても大聲を出す健。

聲のわりに表が変化しないのが、余計に怖かった。

「誠実、俺は嫌なんだよ。お前のそんな姿を見るのが」

健の言葉に、誠実はが痛くなった。

「お前が悪く言われるのも、お前があらぬ誤解をけるのも、俺達は嫌なんだよ」

「健の言う通りだ、お前はし自分の事も考えろ、それにどっちにしろこうなってたよ……」

「………」

二人の言葉に、誠実は何も言い返せなかった。

「人生は長いんだ、々ある」

「お前が悪いんじゃない、それにこれは山瀬さんがけるべき當然の罰だ」

「……罰」

「あぁ、どんな理由があろうと、山瀬さんが誠実を利用したのに変わりはない」

健と武司の言葉に誠実はただ黙る事しかできなかった。

二人の言葉は確かにその通りなのかもしれない、そうじる誠実だったが心の中では何かがモヤモヤしていた。

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