《99回告白したけどダメでした》90話
*
放課後になり、誠実は図書室に向かおうと準備をしていた。
「んで、健は結局どうするんだ?」
「………行かなければ……俺が社會的に殺される」
「は?」
鈴に追いかけられ、帰ってきたかと思えば、健は何かに怯える様子でビクビクしていた。
長い付き合いになる誠実も、こんな健を見たことはなく、何があったのか心配になったが、聞いてもなにも答えてくれなかった。
鈴が絡んでいる事は確かなのだが、鈴の名前を出しただけで、健はいつものクールなじから、生まれたての子鹿のように弱々しくなった。
「まぁ、來るなら良いけど……武司、お前はどうする?」
「悪い、俺はちょっと先生に聞きたい事あるから、今日は行けない。お前らだけで言ってくれ」
「お、おう……」
武司は武司で、今までにないほどの集中力でテスト勉強をしており、いつものおちゃらけたじが全く無かった。
「あいつ本気だな……」
「前の誠実とそっくりだな。お前も學年一位取るために必死だった」
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「まぁ、確かにな……それにしても、なんであそこまでやるんだ? 古賀に馬鹿にされただけで、あいつがあそこまで勉強熱心になるとは思えないんだが……」
「さぁな、そんな事より、俺たちは自分の心配をした方が良いかもしれん」
「ま、そうだな。赤點で補習なんてのはごめんだ」
健と誠実は二人そろって、図書室に向かって行く。
道中子からの妙な視線をじつつ、誠実と健は昨日と同じ図書室二階の學習スペースに向かう。
「お、沙耶香早いな」
「私たちも今來たところだよ、あれ? 武田君は?」
「あぁ、武司はちょっとガチっぽくてな、あいつは欠席だ。そっちも古賀はどうした?」
「私には先生の素質がないって言って、志保も欠席。あの二人……仲直り出來るかな?」
そのうち元に戻るだろう、その場にいた全員がそう思いながら、席に座って勉強を開始し始めた。
「で……健は何をしてるんだ?」
「………正解出來なかった罰だ」
開始そうそうに貓耳を付け始める友人を誠実は引きつった笑顔で見つめる。
健は相変わらずプルプルと震えながら、鈴とともに勉強をしていた。
一方で鈴の方は、水を得た魚のように生き生きと勉強を健に教え、なんだか昨日よりもつやつやしているじがした。
「マジで、この二人にもなにがあったんだよ……」
誠実は健と鈴の関係に疑問を抱きながら、勉強に向かう。
*
誠実達が勉強を開始したちょうどその頃、武司はとあるファーストフード店で一人勉強をしていた。
「ここが……こうなって………こうで……」
ぶつぶつ言いながら教科書の問題を解く武司。
いつもならこんなに武司が勉強する事など無い。
しかし、今回のテストは別だった。
「古賀の奴めぇ~、絶対に見返してやる……」
昨日古賀に言われた言葉が、武司の心の中に濃く殘っていた。
言い爭いの中で古賀に言われた一言。
「何が……何が生涯貞だ!! 気にしてる事を言いやがって!!」
正直いつもの武司ならここまで気にはしなかっただろう。
しかし、最近の誠実のモテ合と、元からモテる健の二人の友人の事もあり、モテない自分の事を気にし始めていた。
武司は今回のテストで古賀を見返す事が出來れば、自分の中で何かが変わる気がしていた。 だからこそ、こうして真剣に勉強を始めたのだ。
しかし、やはり自分一人で勉強するのに限界をじていた。
「えっと……ここは……」
満足に授業を聞いていたわけなど無く、武司は自分一人では限界があるとじていた。
問題がわからず四苦八苦していると、後ろから聞き覚えのある聲が聞こえてきた。
「そこの答えは6」
「え……こ、古賀!!」
後ろから聲を掛けてきたのは、制服姿の志保だった。
武司のよりも前からいたらしく、近くの席には志保のとおぼしき鞄と勉強道があった。
「なんの用だよ……」
「別に、いつまで経っても答えがわからなくてうーうー言ってたから、気になっただけ……昨日言ったことって本気だったのね」
「男に二言はないんだよ、それにあれだけ言われて黙ってられっか!」
「あっそ、まぁせいぜい頑張れば」
志保はそう言って自分が元居た席に戻って行った。
武司は志保が去った後、勉強に戻った。
しかし、やはり一人では限界があり、行き詰まってしまった。
「やっぱ……無理か……」
自分は所詮この程度なのかと、武司は半ばあきらめ掛けて居た。
自分は誰かの為に一生懸命になれるような人間でなければ、顔が良くてハイスペックなイケメンアイドルオタクでもない、ただただ普通の高校一年生。
そんな事を考えて居ると、誰かが隣に座って來た。
ふと隣を見てみると、志保が武司の隣に座り勉強を始めた。
「お、お前…何で隣に……」
「別に良いでしょ、どこに座っても。それに目の前でうーうー言われてると目障りなの……」
「なら家に帰って勉強すれば……」
「良いから、あんたは勉強しなさい。私で良いなら、教えてあげるから」
「古賀の説明なんて……」
「……そんなに、下手?」
悲しげな視線を向けてくる志保に、武司は言葉を詰まらせる。
そんなにショックだったのだろうか? そんな心配もしてしまうくらいに志保の表は曇っていた。
「気にしてたなら……謝る……俺も赤點嫌で、焦ってたし……」
「私もし言い過ぎたわ……」
気まずい空気の中、武司はこの空気をどうしたものかと考え始める。
そういえばわからない問題があったと思い、話の流れを変える為に解き方を聞いてみようと思った武司だったが、昨日のあの教え方を思い出してしまった。
「ねぇ……どこがどういう風にわからないの?」
そんな空気の中、以外にも志保が問題の事を聞いてきた。
「あ、あぁ……ここなんだが……」
武司はとりあえず今やっている問題のわからないところを志保に尋ねる。
心では、どうせ説明されても、わけわからないんだろうなと考えながら、志保の言葉を待った。
「えっと……まずこのXを……」
「ん、あぁなるほど……じゃあ、こうか?」
武司は志保に教えられながら、問題を解き始めた。
意外にも今日の志保の説明はしっかりしていた。
多は説明不足の箇所や抜けなどがあったが、昨日よりは格段にわかりやすかった。
「お! 解けた……」
「そうそう、こうして解くんだよ!」
時間は確かに掛かってしまった。
しかし、武司はしっかりと解き方を理解できた。
自分が問題を解けた事にも驚きだったが、それ以上に志保の説明が理解出來た事に武司は驚いた。
「なんだよ、ちゃんと教えられるんじゃん」
「私はちゃんと教えてたつもりよ! まぁ、多説明は省いたけど……」
「省きすぎだっての! 數學に効果音を取りれるな!」
「い、良いでしょう! 今日はちゃんと教えられたんだから!」
「まだここしか解けてねーんだよ! こことかここも教えろ!」
「え……」
武司の言葉に、志保は言葉を詰まらせた。
「いいの? 私とだと……時間掛かるよ?」
自分の教え方が効率的でない事を志保は理解していた。
自分が教えていたんじゃ、目標點はおろか赤點を取らせてしまうかもしれないと思った。
しかし武司は……。
「俺一人じゃもっと無理だ、それに……お前も頑張って教えてくれたんだ……今度は俺が頑張るよ」
その言葉を聞いた瞬間、志保の頬は赤く染まり、ドキドキするのをじた。
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