《みんなは天才になりたいですか?僕は普通でいいです》12.しさと切なさと力強さと?
詩歌との食事を終え別れた後、僕は自宅へ帰宅した。今日買ったSAOを早く読みたくて自分の部屋へ足早に向かう。
がちゃり、とドアを開け、部屋の電気をつける。
「うおっっ!」
驚いて思わず聲が出てしまった。の子が僕のベットにうつ伏せで橫たわっている。
「た、たよりか。驚かすなよ」
「……」
「寢てるのか?」
返事がない。ただのしかばねのようだ。こう言う時に脳で同じテキストが流れるのは僕だけではないはず。と言うか、母さんもたよりが來てるなら教えてくれてもいいと思うんだけど、何故黙っていたのか。
「なんのイベントだこれ。いつのまに僕はフラグを立てたんだろう」
「相変わらずゲームがお好きなようで」
「なんだよ。起きてたのか。どうしたんだよ急に」
「……別になんでもない」
「全然なんでも無くなさそうなんですけど……なにしょぼくれてんだよ。分かりやすいなお前」
「うるさいなあ。放っておいてよ」
「放ってほいてしいなら僕の部屋にくるなよ……まあ、話したくないなら無理には聞かないけどさ」
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そう言いながら、何か他の話題はないかと頭を巡らせる。
「あー、ところでたより、SAOの新刊買って來たんだよ。特別に先に読ませてやってもいいぞ?」
「あんたに借りた1巻。まだ1ページも開いてもないから」
「いい加減読めや!  頼むから3巻まで読んでくれ。まじで面白いんだって。それでダメなら無理強いはしないから!  お願い!」
必死すぎる。うつ伏せから仰向けに勢を変えながら笑って話す たよりを見てし安心した。
何かがあったのは明白なんだけど、この世に存在するおおよそトラブルや悩みといった類で、僕に解決できることなど殆ど無いに等しいのだから、相談されてもそれはそれで困るってのが正直なところだ。
本人が話したくないと言うのなら深追いはしない主義だ。冷たいと思われるかもしれないけれど、ずっとそうしてきた。
「それとさあ、たより。さっきから、と言うか最初から、し、いやかなり気になってたんだけど……なんでお前寢間著なんだ?」
「今日泊まろうと思って」
「いやいやいや。それはまずいだろ」
「なんで?」
「なんでって……僕達もう高校生だぞ? 年頃のの子が男の部屋に泊まるもんじゃないだろ?」
僕からった訳じゃないのになんで僕がドギマギしなきゃいけないんだ。
「あれあれ? もしかして文人……エッチな事とか考えてる?」
を両手で隠すように抑えながら、わざとらしく怪訝な顔をする。
「か、考えてないよ!」
「ふふ。冗談だよ。昔はよくお泊まり會してたじゃん。『會』って言っても二人だけど」
「それは小學校低學年の時の話だろ。あの時以來部屋に來ることも隨分減ったのに、いきなり泊まってくのかよ。あと、母さんにはなんて言えばいいんだよ?  流石にダメだって言うだろ」
「おばさんの許可はすでに取り付けた。あと、うちの親もね」
そうですか。うーん、なんだろう。この外堀を埋められて行ってる。もしかしてこいつ、意外と策士なのか? 気付いたら逃げ場が無くなってましたってオチが待ってるのか?
「お前がそこまで言うならいいか。泊まっていけよ。というか、お前わざわざ靴まで隠して、電気まで消して……うちの母さんも完全にグルだな」
「そうそう。驚かそうと思ってさ。びっくりした?」
「ま、まぁしは驚いてけど、大したことはなかったな。まったく、たよりはいつまでたっても子供だなあ。ははは」
「……うぉっっ!!  って言ってたけど」
すみませんでして、勘弁してくださいと深々と頭を下げた。
「冗談はさておき、僕はお風呂にってくるから、適當にくつろいでろよ」
そう言い殘し、浴室に向かう僕に、たよりは顔もこちらに向けずに親指を立てた[グッド]の合図をだしていた。
「ふー、今日は結構歩いたから足が疲れたな。この熱めのお湯が疲れに効くぜ。ちゃぷちゃぷ」
さり気なく、かつ慎重に僕がすでに湯船に浸かっていることを読者へ示唆する。サービスカットだ。
「しかし、たよりのやつ、一何がしたいんだか……最初は元気無いのかと思ったけど、思ったより普通だったな。部活でなんかあったのかな。今度、月見里さんに會ったら聞いてみるか」
なんて事を考えていたその時、がちゃりと更場のドアが開く音がした。
ま、まさか……俗に言うお背中流しますイベントがついに僕にも発生したのか?! しつこいようだが僕はフラグを立てた覚えはないぞ。
「あんた、たよりちゃんに変なことするんじゃないよ」
母さんだった。そんなことだろうと思ったよ。
風呂から上がって部屋へ戻ると、たよりは漫畫を読んでいた。ゲームでもするか?  と、聲をかけようと思ったが、ゲームでの対戦はあの時の告白を連想してしまうのでやめておいた方が良いだろう。
たよりにはベットて寢てもらうとして、僕は自分が寢る用の布団を床へ敷く。
「文人」
読んでいた漫畫をとじて本棚にしまいながら、たよりが聲をかけてきた。
「明日さ、どこか遊びに行かない?」
「別にいいけど、練習は無いのか?」
「明日と明後日は何かの行事があるみたいで、育館が使えないらしい。だから練習はやすみ」
「二日間練習が無いなんて、珍しいな。って、まさかお前、明日も泊まる気じゃあ無いだろうな?」
「あはは。明日は文人が私の部屋に泊まりにきなよ」
「それはそれで余計に問題ある気がするけどな。取り敢えず明日は出かけるとして、どこか行きたいところでもあるのか?」
「ううん。文人にお任せ」
「そうか。明日までには何か考えておくよ。それじゃあ今日はもう寢ろよ」
「うん。わかった。おやすみなさい」
部屋の電気を消してしばらくしてスー、スーとたよりの寢息が聞こえてきた。今日も練習だっただろうからきっと疲れているんだろう。
コチコチと一定のリズムを刻む目覚まし時計の秒針の音が、普段は気にならないのに今日はやけに耳につく。
ああ、もう。ドキドキして眠れねぇ!!  いや、普通そうだろ。
健全な男子高校生の部屋に馴染とはいえ、人で人気者のの子が泊まりにきているこの狀況。しかもし前に自分のことを好きだと言ってくれた子のことを、意識するなと言う方が難しい。
むくっと布団から起き上がり、たよりの顔を覗き込む。長いまつにスッとのびた鼻。は小さくてらかそうだ。近くにくるとシャンプーの良い香りがふわっと僕の鼻孔を刺激する。自然とたよりの頭に僕の右手がびる。
ぽんっと頭に手を乗せ、そのままでる形で手前へと手をらせる。
「髪、さらさらだな」
たよりの細くてらかい髪のと、Tシャツに短パンと言う、見方によっては際どい格好で橫たわるたよりの姿を見ていると、なんだかエロい気分に……なったりはしなかった。
「腕も、足にも、こんなに沢山アザを作って……バスケって結構激しいスポーツだもんな。頑張ってるんだな」
僕はどうしようもなく、たよりのを抱きしめたい衝に駆られていた。努力が刻まれたそのを見て、[おしい]と、素直にじた。
不意にパチッと開いた、たよりの目と覗き込んでいた僕の目が合う。
あまりに驚いて早くなっていた心臓の鼓が一瞬止まったかと思ったくらいだ。
「ご、ごめん起こしちゃったか?」
たどたどしく、気まづそうに話しかける。
「うん。別に良いよ。どうしたの?」
目をりながら、子供のような表で問いかけて來る。
「いやー、特に何って訳でも無いんだけどさ!  あの、あれだ。クーラー効いてるから、寒いかもしれないと思って布団をかけ直してやろうと思ってさ」
く、苦しいか?  言い訳になってるかこれ? てかこいつ、寢てたよな? 貍寢りだったらかなり、やばいぞ……
「そうなんだ。ありがと。文人も夏風邪ひかないようにね」
そう言ってたよりは再び目を閉じた。その純粋な反応と寢顔を見て、なんだか罪悪やらホッとしたやら複雑な気分になった。
兎にも角にも、なんとか誤魔化せたみたいだ。告白され、意識して、つい顔を覗き込んでました、なんて絶対言えないしな。
自分の布団に戻り、なんだか今日は々あったなと、そんな事を考えながら僕も靜かに目を瞑った。こうして僕の長いような、短いような1日が終わった。
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