《みんなは天才になりたいですか?僕は普通でいいです》13.努力を努力と思わない奴ら

ピピピピッ、ピピピピッ

カチッ

目覚まし時計のアラームを止める。

「うーん……いつの間にか眠ってたみたいだな。えっと、確か昨日は、たよりが泊まりに來て……どうしたんだっけ」

寢ぼけた頭で狀況の把握をしようとしていた時……

「文人。おはよう」

「ああ。おはよう」

カーテンを開け、朝日を浴びた、たよりを見て思わず息を飲む。元々化粧なんてほぼしていないので寢起きだろうと関係ない。

「やば、めっちゃ綺麗……」

思わず心の聲がれてしまった。と、同時にしづつ昨日の記憶が蘇ってくる。

ぼ、僕はなんてことを……今更ながらに照れと恥ずかしさとが一気に襲ってくる。

たよりは昨日の出來事を覚えてるのだろうか……

「そういえば たより。お前著替え持ってきてるのか?」

「ううん。一回著替えに帰るよ」

いよいよ僕の家に泊まった意味があったのかと聞いてしまいたくなるが、僕の部屋で著替えを始められるよりは幾分マシだろう。

「分かった。じゃあ準備ができたら連絡くれよ。僕も準備をしてからお前の家に迎えに行くからさ」

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「分かった。じゃあまた後でね」

と言って、たよりは帰宅した。

洗面所で顔を洗い、髪型を軽く整える。さて、たよりと遊ぶのなんていつ以來だろう。たよりは、基本的に土日でもバスケ部の練習があるから、一日フリーな日があるのは珍しい。

僕は、基本的に土日でも予定がないから、一日フリーじゃない日があるのは珍しい。ふっ。慘めだな、僕。

昨日どこへ行くかは僕に任せるなんて言っていたけど、あいつ本當はどこか行きたいところでもあるんじゃないかな? 本當の私の気持ちに気付いて!  みたいな……

「いや、あいつに限ってそれはないな。絶対ノープランだわ」

心の聲をらしながら軽く朝食を済ませていると不意に母親から話しかけられる。

「文人。今日たよりちゃんと遊びに行くんでしょ?」

「ああ、よく知ってるな母さん」

「決めてきなさい」

そう言いながら、僕のシャツのポケットに折りたたまれた一萬円札を暴につっこむ。

「母さん……かっこ良すぎるよ」

——————————————————

準備を終えた僕達はたよりの家の前で合流し、駅に向かって歩き出す。

「たより、一応確認しておくんだけど、本當に行きたいところとかないのか? 僕は自慢じゃないが、の子をエスコートできる程リア充じゃないぞ」

「うん。特にないよ。自慢じゃないけど、私もリア充じゃないからね」

「おいおい、たよりがリア充じゃないとか……容姿端麗、績優秀、バスケ超上手い。どれを取っても完璧じゃないか。どこのラノベの高スペックヒロインだよってじだけどな」

「うーん……あんたは何か勘違いをしているみたいだね。私は昔からバスケ一筋なのだよ。みんなが放課後にカラオケ行ったり、服買いに行ったり、誰かの家に集まってガールズトークしている間も、私はバスケだけをやり続けてきたんだよ。それが何を意味するか分かな?  文人くん」

なにやらわざとらしい、どこぞの名探偵かと思わせる口調で問いかけてくる。

「いや、よくわからないな」

「つまりだね、私がバスケの腕を磨いている間に、他のみんなは子力やコミュ力を磨いているんだよ。たまに練習がなくて友達と遊んだりする事がないでもないんだけど、なんて言うのかな……ノリについて行けない時があると言うか、正直何が楽しいのか分からないって時があるんだよね。私はどうやら『普通に友達と遊ぶ』ってのがヘタクソみたいなんだ」

「だってさ、カラオケ行ったって流行りの歌なんかよく分からないし、そもそもあんまり行かないから歌、上手くないし。盛り上がり方もよく分からない。なんか恥ずかしいなってのが先にきちゃう。ボーリングとか行っても、ガーター連発とかは無いけど、ストライクとかスペアが沢山取れるわけじゃない。文人に分かる?  ピンが2〜3本殘った時のあの微妙な空気が一投目から最後まで、ほぼずっと続く地獄……」

「それは……凄く分かる」

なんて、なんて不憫なんだ。僕は、間違っていたのか? リア充って一なんなんだ。どんだけ努力したらなれるんだ?! ひょっとして、たよりってサバサバしてるんじゃなくて、そうせざるを得ない狀態にずっとあったってことなのかな?

だって、その……した事ないからやり方分からないし。うまくいかないし」

「……」

「それなのに……そこまでやったって、そうやって全てを犠牲にしたって、バスケで一番になれるわけじゃないから。私、なんでバスケやってるんだろうね」

どんどん小さくなっていく、たよりの聲が、今置かれている、たよりの狀態を語っていた。

スポーツに限らず、ある分野で活躍出來る人は、他の全てを投げ打って、[自分の人生はそれをする為だけにある、他のことはどうでも良い]と平気で言ってのける人が多いのかも知れない。

努力を努力とも思わない。その考え方自が[才能]の一つなのかも知れない。でも、普通の高校生に遊びやそっちのけでバスケにだけ集中しなさいと、言ったところでそれは苦痛以外の何者でもないだろう。誰かに言われて実行し続けるのは、不可能に近い。

特に……頑張っても頑張っても結果が殘せない時には尚更だろう。

挫折、スランプ…そういったものを乗り越える為のモチベーションって一どこから來るんだろう?

「なるほどな。部活を頑張っている人にも々と悩みはあるんだな。ごめん。軽々しくリア充とか言って悪かったよ」

「あ、いや別に文人が悪いとかじゃないから謝らないで。なんかごめん。えっと、だからその、今日はデートの練習って事で……ごにょごにょ」

「えっ? なんだって? よく聞こえなかったな」

「意地悪」

「ははは。冗談だよ。僕だって『遊ぶ』ってことに慣れてないのは変わりないんだから、お互い気を使わずに楽しんだらいいさ」

それに、別に上手に遊ぶ必要なんて無いんだから。

そんな話をしているうちに駅前についていた。學生が遊ぶと言ったらとりあえず駅前だろ。知らんけど。

適當にぶらぶらしながら、お互い夏の服や靴をする。

「結構買しちゃったな。いい時間だし、そろそろ晝ゴハン食べるか」

「うん。久しぶりに買したからついつい買いすぎちゃった。でも楽しかった。午後からはどこ行くの?」

「ああ、ちょっと行きたいところが出來たんだ。付き合ってくれるか?」

「……? まあ、最初から文人にお任せだからどこへでも付き合うけど」

それから晝ごはんを済ませ、一旦家に戻り荷を置いた後、目的地までの道を二人で歩いて行く。その道中でたよりが重い口を開いた。

「あの、文人? さっきは何でも付き合うとはいったけど、正直、今はそんな気分じゃ無いんだけど」

「いいからいいから」

そんな事はわかっている。敢えて空気の読めない男を演じる。

いや、演技だよ? 本當に。

そして今、向かっている先は我が母校であり、たよりの母校でもある、互いの家から歩いて10分とかからない中學校だ。

「おー!  懐かしいなあ!  おい見ろよ たより。ここの金網、まだ破れたままだぞ。ははは、いい加減直せよってじだな」

「うん……」

微妙にテンションが上がった僕とは対照的に、明らかに元気の無くなるたより。

「お邪魔しまーす」

そう言いながら門をくぐり、真っ直ぐバスケットコートのある方へ向かう。

中學校の育館はそこまで広くない場合が多く、全ての部活が毎日育館を使えるわけでは無い。なので、育館が使えない日は室スポーツであるバスケも屋外で練習を行うこともある。その為のコートが設けられている學校がほとんどだ。うちの中學も例外では無い。

なぜ一旦家に帰って、嫌がるたよりにボールを持って來させてまでここに來たかというと、やる事は一つしかないよな?

「さてと……バスケをするのは本當に久しぶりだな。一年の育の時以來か」

「……」

「さあ、たより。僕にバスケを教えてくれ」

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