さて、今の狀況を簡潔に、簡単に、分かりやすく説明しようか。

ここ詩歌の家の別荘。メンバー僕と、子三人。部屋割りでめっちゃもめてる。以上、終わり。

「いやいや。だから先輩とは私が同じ部屋で寢るから良いって言ってるじゃないですか」

「いや、ちょっと言ってる意味が分からないなあ。文人はロリコンなんだよ？　二葉が橫で寢ていたら何をされるかわからないよ？」

「あの、貰い事故が尋常じゃないんだけど、僕はロリコンじゃないよ？」

「あんたは黙ってて」

「先輩は黙ってて下さい」

「……はい」

「大、二葉は私のを……その、私を応援してくれるんじゃなかったっけ？！　なんで邪魔する様な事をするのかな？」

「私がいつ矢野先輩のを応援するって言いました？　助言を求められたのでアドバイスをしていただけですよ？　折角あれこれいたのに先輩達が一向にくっつかないからいけないんですよ」

「そ、それは……うぅ」

「あ、あの……決まらないなら私が文人くんと一緒に」

「？！  意外な伏兵が現れましたね。先輩。取り敢えずここは共闘して、先に姫城先輩から潰しますか？」

「うん。私のレーダーが彼は危険だと言ってる」

「ひぃ……？！」

「はぁ……なんでこんな事になったんだよ」

なぜこんな事になったのかを説明するにはしばかり時間を遡る必要がある。そうだな。まずは何でこのメンバーで別荘に泊まる事になったのかってところからだな。では、回想スタート。

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「ーーで、それからどうなったんです？」

どこか冷ややかな目で、かつ高圧的な態度で後輩が問い詰めてくる。

「い、いや特に何も……」

「はぁ。本當に先輩のヘタレ合には驚かされますね。先輩が何にもしない間に夏が來ちゃったんですけど？」

そう、ついさっきまで六月だと思ってたんだけど、気付いたらもう夏になっている様だ。時間が経つのは早いものだなぁ。

「そうだな。もうすっかり夏だな。僕、夏は苦手なんだよなー。暑いから」

「確かに暑いですねもんねってそうじゃなくって。なんだかんだいいじになってるのに、何故あと一歩踏みを出さないんですかね？　まだ何が引っかかってることでもあるんですか？」

「あー、いや。特にそういう訳じゃ無いんだけど。きっかけが無いというか、フラグは立ってるけど、まだイベント発生期間じゃないというか」

「全くもう。先輩はギャルゲーの主人公じゃないんですから。ギャルゲーの主人公と、ラノベの主人公を同列で考えていたら酷い目にあいますよ？　それに私は一度忠告しましたからね。のんびりしていたらどうなっても知りませんよって……とにかく、先輩これを見てください」

そう言って月見里さんは一枚の紙を取り出した。

「ん？　なんだこれ。『ラノベイベント一覧表』だって？　なんで月見里さんがこんなを？　まさか自分で作ったの？」

「ここの7月の部分を見てください」

どうやら僕の質問には答えてもらえないらしい。てか、月見里さんのキャラがどんどん濃くなっていってる気がするな。

「7月は、期末テストと、海で水著デート」

「そうか。そういえば期末テストもうすぐだったな」

「そっちじゃないですよ。わざとやってんですか先輩」

後輩に普通に怒られた。どうでも良いけど月見里って怒ると怖そうだな。なんかどんな手を使ってでも獲を仕留めるみたいな、狩人的なものをじる時がある。

「え、いやいや。僕にたよりを水著デートにえっていうのか？　急にそんなこと言われても……」

「今はテスト期間なので部活はお休みです。今のチャンス逃したら次のチャンスはいつ來るか分からないですよ？」

「うーん、でもテスト期間はテスト勉強する為のものであって決して遊ぶためのものでは無いと思うんだけど」

「なんで変なところで真面目なんですかね先輩は。1日や2日くらい勉強しなくたって結果は大して変わりませんよ。それに學校のお勉強なんて社會に出たら何の役にも立ちませんよ」

「いや、そんなことは無いだろう？！　各方面から怒られるぞ？！」

「とにかく、このチャンスを逃す手はないんです。高校三年間なんてあっという間に終わってしまうんですよ？　それに私に至っては二年しかタイムリミットが無いんですから……」

最後に小聲で何が言ったみたいだったがよく聞き取れなかった。

「わ、分かったよ。えば良いんだろ。でもこの辺りの海ってその、あんまり綺麗じゃないじゃないか」

「先輩にしては良いところに気が付きましたね。そうなんです。この辺の汚い海に遊びに行ったっては発展しません。どうせならし足をばして綺麗な海に遊びに行くべきです。更に遠出となると日帰りでは厳しいですよね？　それらを全て解決する方法が一つだけ存在するんです」

「それは一……」

「合宿ですよ」

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回想終わり。

合宿と言ったら泊まる場所がいるよな？　當然僕の家は別荘なんて持ってないから、誰かに用立ててもらうしかない。

誰かって、僕にはそんなこと言える友達なんていないから、ダメ元で詩歌に相談してみたらなんと僕たちの町から程よく離れていて、海の近くにある別荘を所持しているらしい。勿論ご両親がね。

詩歌は最初來ないって言ってたんだけど、そういう訳にもいかないから半ば無理矢理來てもらう事にしたって訳だ。

更に月見里さんも一緒なのは……

また後で説明する事にしよう。今日はすでに疲れているんだ。一旦休ませてほしい。

「このままじゃ埒があかないですね。そこで先輩達に一つ提案があります。正々堂々と勝負して部屋割りを決めるのは如何ですか？」

「勝負？　むところだよ。合宿らしくっていいじゃん」

「勝負……に障害はつきものかも……」

「盛り上ってるとこ悪いけど、僕もその勝負に參加させてもらうぞ。僕が勝ったら1人で寢るからな」

「なるほど、いいですよ」

「でも勝負って一何をするんだ？　僕と詩歌は運が得意じゃないんだから、力勝負は勘弁してくれよ？」

「なんですか先輩。ちょっと気になっていたんですけど、姫城先輩にし甘くないですかね？　気のせいですかね？」

おお。やっぱり狩人だこの子。目が怖い。

「まあ、でも自分に有利な勝負を提案するつもりは勿論ありませんよ。私の提案したりゲームに皆さんが納得できないなら別のものでも結構ですし。矢野先輩もそれでいいですよね？」

「えっ！？  ……あ、うん。勿論良いよ」

「たより。今の間は一……」

「いや、別に百メートル走なら絶対勝てるとか思ってないよ？」

「……。」

「……。」

「……。」

「矢野先輩って案外姑息なんですね」

「！！。  ……あぅ」

月見里さん。ゲームが始まる前から神的攻撃を仕掛けるとは。やはりこの子、侮れない。

やれやれ、一どんなゲームを提案されるんだろうか。

やれやれ、なんて言いながらこの狀況を素直に楽しいとじている自分がいた事にし驚いてる。こんなに皆んなでワイワイするのは小學生の時以來だろうか。

正直…悪くない。