《みんなは天才になりたいですか?僕は普通でいいです》25.ワードウルフ最終戦

二葉「それでは泣いても笑っても最後の第3回戦。始めて行きましょうか」

たより「ねえ二葉。ちなみに同點で一位が何人もいた場合はどうするの?」

二葉「そうですね……特に考えてなかったですけど、その時はその時で何か考えましょう」

そもそも僕との同室を賭けたこの戦い、僕が勝てば僕は一人部屋、他の誰かが勝てば僕とその子が同室という話だった。

僕と同室で寢ることに一何のメリットがあるのかは別として、詩歌の別荘は海のすぐ側でロケーションは素晴らしいが、建はあまり大きくはない。

家族で使用する別荘なので、リビングが広く取ってあり、個別の部屋數は多くなく、寢室として使える部屋は一人用が二部屋、二人用が一部屋だ。

同じ部活の先輩と後輩である、たよりと二葉が二人用の部屋を使い、僕と詩歌がそれぞれ一人部屋を使えば特にめることも無かったはずなんだけど……。

ちなみに今はまだ午前中。寢る部屋を決めないと自分の荷を置きに行けないので、別荘に到著して早々にこんなゲームをやっているというわけだ。

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文人「やれやれ。本當に長い1日になりそうだ」

三回戦で僕の引いたワードは[理想の彼・彼氏]だった。このアプリ、関係のワードに偏りすぎな気がするんだけど……。合コンとかで使えばきっと盛り上がるんだろうな。僕には縁のないことだろうけれど。

第二回戦のワードは自分が[數派]であろうと[多數派]であろうと自分以外のワードの予想がし易かった事もあってそれぞれが撹目的で噓を織りぜることが可能だったが、今回のワードはそうもいきそうにない。

文人「たより、お前はどうだ?」

たより「ど、どうって何が?」

文人「いや……だからこのワードについてだよ」

たより「ああ、ワードね。うーん……尊敬できる部分が無いと嫌かな。あんたはどうなの?」 

文人「僕も同じかな。あとは何でも気軽に言い合えるような関係ましいかな」

二葉「たしかにそうですね。気を使いすぎるのもお互い疲れますしね」

詩歌「私は……優しい人がいいな」

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文人「優しいだけで頼りない人は嫌じゃ無いか?」

二葉「そうですか?  私は頼りない人、嫌いじゃ無いですよ?  私が頑張らなきゃ!  的なの子って意外と好きなんですよ」

たより「分かるかも。しかも普段は頼りないのにいざという時に力発揮するとかちょっとずるいよね」

詩歌「そうかも……ずるいかも」

じとっとした目で詩歌とたよりが僕の方を見ている。

文人「えーっと……みんなワードについての意見を言ってるって事で良いんだよな?」

たより「當たり前じゃない。じゃあさ、このワードの反対の事についても意見聞きたいな」

文人「反対か。そうだな。上からを言われるのは嫌かな?」

たより「それって……」

文人「な、なんだよ?」

たより「別に何でもない 」

なんとなくたよりが不機嫌になった気がするけど、気のせいか。

二葉「私は、何でも人のせいにして自分ではかない人……とかですかね?」

何だよ。なんでこっち見てんだよ月見里さん。僕が何か発言する度に何故か立場が危うくなった行く気がしてならない。なんて恐ろしいゲームなんだ。

文人「へ、へえ。そんな奴いるんだなぁ。全く、それは良くない。悪と言っても過言ではないな。それより詩歌はどうだ?」

詩歌「私は文人くんに不満はないよ……」

文人「いや……ワードの話なんだけど……」

二葉「でも理想と現実はやっぱり違いますよね。理想が高いと現実で泣く事になります」

たより「そうだね。でも妥協はしたくないかも。相手にも妥協はしてしくないしね」

詩歌「……そうだね」

二葉「まあ、自分では相手を選べませんしね。運命みたいなものです」

たより「二葉ロマンチックだね。意外かも」

二葉「そうです?  私だっての子ですよ。ね、先輩?」

文人「なんでそこで僕に振るんだよ」

たより「……なにかがおかしい」

文人「何もかもおかしいよ!」

ピピピピピッ

二葉「いつの間にか3分経っちゃいましたね。では、名殘惜しいですが最後の狼『數派』當てを行いましょう」

しまった。話に夢中になって本筋を忘れていた。しかし今の會話で誰も不自然な點が見當たらなかった気がするんだけど、一誰が狼なんだ?

始めの會話でたよりの反応を見たけど、どうも噓をついている様には見えなかった。理想の彼氏の條件が尊敬できる人というのは至極真っ當な解答だ。

詩歌の解答で気になったのはやっぱり名指しで僕に不満は無いよと言った時だな。

いや、待てよ。仮に僕とは違うワードが[理想の友人]だとしたら……。詩歌の発言がしっくりくる気がするな。

更に言えばたよりと月見里さんの発言はどちらかというと沙汰に対するものに聞こえたし。

よし。これ以上考えても仕方がない。僕は詩歌を狼[數派]に指名する事にした。

二葉「それでは準備はいいですか?  せーの……」

文人「詩歌」

たより「文人」

詩歌「文人くん」

二葉「私」

二葉「それでは、答え合わせをしましょう。それぞれ自分のワードを教えてください」

文人「理想の彼・彼氏」

たより「理想の彼・彼氏」

詩歌「理想の彼・彼氏」

二葉「理想の上司」

二葉「と、言うことは狼『數派』である私の一人勝ちですね。『數派』を『多數派』が2人以上指名できず、更に私は自分が『數派』である事を言い當てたので、私に2ポイントります。したがって點數はこの様になります」

一位  二葉    3ポイント

二位  文人    2ポイント

三位  詩歌    1ポイント

三位  たより1ポイント

「そ、そんなあ……二葉が優勝かあ」

「ふふ。私の勝ちですね。これで一三先輩と同室の権利は私のものです。さ、先輩。荷を置きに行きましょう」

「あ、あぁ。分かった」

そう答えて奧の二人用の部屋へ自分の荷を運び込む。それを皮切りに詩歌とたよりもそれぞれ自分の部屋へ荷を移させ始めた。

僕たちの部屋は広くもなく狹くもなくといったじで、シンプルな家とシングルベットが二つ。やや殺風景にも見えるがすっきりとして落ち著いた印象にもとれる。

「先輩、らないんです?」

り口でたじろぐ僕に小生意気な後輩が聲をかけてくる。いくら相手が僕とはいえ、年頃の男が一緒の部屋で一夜を過ごすというのに、まるで長年連れ添った夫婦の様な空気を醸し出している。

いつまでも扉の前に立っていても仕方がないので覚悟を決めて一歩を踏み出す。僕にとってのはじめの一歩を……。

と、含みのある表現をしたものの単に荷を置くだけだからな。平気平気。

オドオドする僕を目に月見里さんは荷を広げてスマホの充電や歯ブラシ等、必要なものをバックから取り出している。

「やっぱり月見里さんはしっかりしているな」

「そうですか?  普通だと思いますけど。合宿とかでお泊まりは慣れっこっていうのもありますけどね」

「たよりだったらなんの準備もせずにまずは海行こ!  とか言って水著に著替えてる頃だと思うぞ」

「それはしわかる気がします。だけどそれが矢野先輩の良い所でもありますけどね。先輩も勿論泳ぐんですよね?」

「うん。自慢じゃないが小學生の時はスイミングスクールに通っていたんだぞ」

「本當になんの自慢にもなってないんですけど……」

「どちらにしても海なんて本気で泳ぐ場所じゃないさ。浮きにでも乗ってプカプカ浮いているくらいがちょうど良いさ」

「それは言えていますね。それでは私たちも著替えますか」

そう言って月見里さんはTシャツの裾を両手で摑みグイッとたくし上げる。

「わー!  月見里さん、ストップ!!」

「えっ?」

「えっ?  じゃなくて、僕は部屋を出るからぐのちょっとストップ!」

「いえ……私、先輩になら見られても平気ですよ。し恥ずかしいですけど」

「いやいやいやダメでしょ!  急にどうしちゃったんだよ。僕と同じ部屋がいいって言い出したりするし……なんか最近変だぞ」

Tシャツに手をかけたままこちらを見ている月見里さんに問いかける。たくし上げたシャツからおへそがのぞいている。

流石に腹筋が割れているなんてことは無いが、引き締まったお腹は健康的でとても魅力的だった。

「先輩。本當に分からないんです?      先輩ってやっぱり鈍なんですね。いいからこっちを見てください。それとも貧相な私のなんて見たくないですか?」

「え?!  そ、そんな事ないけど!」

急に悲しそうな聲を出され慌てて、咄嗟に目線を月見里さんへと戻す。その瞬間月見里さんはTシャツを勢いよくぎ捨てた。

「あぁ!!!」

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