《みんなは天才になりたいですか?僕は普通でいいです》60.夕凪花火は警戒に値する

「で、どうだったんだよ?」

「どうだった、とは何がです?」

「とぼけんなよ。空冬(そら)から見て、あの高校の実力はどうだったかって聞いてんだよ」

「んー、そうですねぇ。まあ、思ってたよりは、大したことないんじゃないですか? パッと見の印象ですけれど、ガードとセンターが他と比べてレベルが落ちますね。そこそこのレベルまでは誤魔化せるでしょうけど、県ベスト4クラス相手では致命傷になりかねない」

「へえ。相変わらず辛口だな」

「ただ、夕凪花火……彼は、やはり只者ではないですね。警戒に値します」

「確かにな。あいつのプレーを間近でじれたのは大きかったな。わざわざ出向いた甲斐があったってもんだぜ。てゆーか、なんだよあれ。もはや反則級だろ。遊戯王だったらサンダーボルトみたいな存在だぜ」

「その例えが適切かどうか、私にはよく分かりませんが……貴方が本気で戦えば勝てますか?」

「んー、どうだろうなー。あれは1on1よりも5対5の試合で更に力を発揮するタイプだからな。戸愚呂100パーセントで戦ったとしても、ちょっと自信ないぜ」

「貴方、今何歳ですか? でも、貴方にそこまで言わせるとは……まあ、バスケは一人では出來ませんからね。それを解らせてあげるのも、それはそれで楽しいかもしれませんね」

「おー、怖い怖い。お前が味方でほんと良かったぜ」

「それはそうと春風。貴方、敵に塩を送る様な真似をしていませんでしたか?」

「んー? 何のことだー? 別にそんなつもりはねーけどな」

「……まあいいでしょう。さてと、まだ時間に余裕がありますね。もう一校行っときますか?」

「え? まじかよ。もう結構足にきてんだけど」

「何を弱気な事を行ってるんですか。報は出來るだけ早目に、出來るだけ多く収集する必要がありますから。休んでいる暇はありませんよ」

「だったら、空冬が1on1してくれたらいいじゃねーかよ」

「私はチームの司令塔ですよ? わざわざ司令が現場に舞い降りるなんて真似、するわけ無いでしょう?」

「ったく、可い顔して相変わらずやる事がえげつねーな。まあ、あと一校くらいなら何とかなるか。早いとこ行っちまおうぜ」

「そうこなくては。では次はこの高校にーー」

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「より……大丈夫?」

育館の隅で育座りで俯いている私に花ちゃんが聲を掛けてくれる。

「うん。大丈夫。ごめんね」

「もう……よりは昔から泣き蟲なんだから〜。よしよし」

おもちゃを無くした子供をめる様に、優しく頭をでてくれる。

「ウチが、よりの仇は討っておいたからね」

後から聞いた話だけど、1on1決勝戦、花ちゃんと神風の試合は、かなり一方的なものだったらしい。

始めの神風のオフェンスを難なくシュートブロックで守りきり、オフェンスでは、私がやられた技をそっくりそのままやり返し、その後相手に一度もオフェンス権を渡すことなく5対0で勝利したのだとか……

あの、神風相手に。

これが夕凪花火と言うプレーヤーだ。もう、レベルが高すぎて訳がわからない。本當に味方で良かったと改めて思う。

そして、あんなに敵意をむき出しにしている花ちゃんを見たのは初めてだ、とキャプテンが教えてくれた。きっと本気で仇討ちをしてくれたんだろう。

「花ちゃん。私、もっと上手くなる。誰にも負けたく無い!!」

「うんうん。よりなら出來るよ。一緒に頑張ろうね」

そうだ。俯いてばかりいられない。花ちゃんや先輩と一緒にバスケが出來る期間はもう限られているんだ。しでも偉大な先輩達に近づくためには、落ち込んでいる暇なんて無い。

そうと決まったらやる事は一つ!特訓だ!!

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