《みんなは天才になりたいですか?僕は普通でいいです》62.小さなにめた大きな思い②
「まぁ、矢野先輩よりはマシですかね」
「だからなんの話だよ」
「エピソードタイトルの話ですよ。それにしても、相変わらずバカですね、先輩は。もはや愚かと言っても過言ではありませんね」
「ば、バカとはなんだ。僕だって真剣に悩んでいるんだぞ」
「それを當事者である私に相談しますかね……普通」
「そ、それは誠に申し訳ないと思っている……」
「まぁ、いいですけどね。それだけ私には何でも話せるって事で、ポジティブに捉えておきますか。矢野先輩にはこんな事、口が裂けても相談できないでしょう?」
「確かにそうだな」
「では、私が一歩リードですね。ふふっ」
何処まで本気なのか計り兼ねるけど、二葉の無邪気な笑顔を見ていると、しばかり心が軽くなった気がした。
計りかねる、秤かねる。なんてな。二人を天秤にかけている僕が言うと、とんだ皮に聞こえたものだ。
「話を戻しますけど、世の中の幸せなんて、大概が誰かの犠牲の上にり立っているものなんじゃないですか?」
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「そんなも蓋もない事を……」
「まあ、し大袈裟かも知れませんけど。先輩は『利得最大の原理』と、『公平原理』って、聞いたことあります?」
「いや、聞いた事ないな」
「さすが先輩、博學ですね」
「さらっとディスるのやめてくれる?」
「簡単に説明すると、前者は、人間は自分にとって、得になる事を最優先でやりたがりますよってこと、後者は社會で生きていく上では、自分の利益だけ追求するのは不可能なので、みなんな公平に行こうぜ、と言う原理のことです」
「ほう……?」
「あまりピンときていませんね?」
「おう!」
「そんな自信満々に言われても……まあ、いいです。大切なのはここからですから。先ほどの二つに加えてもう一つ、『返報の原理』と言うのがあります」
「返報の原理?」
「はい。最初の二つの原理は人間が行を決定する上での大前提とします。その上で、人間は自分一人が得をしすぎると逆に不快にじ出すそうです。まあ、先輩はそんな狀況になった事がないでしょうから、到底理解できないと思いますが」
「え、なんでさっきからボディーブローの様に悪口を?!」
「これは、人からなにかを與えられた時に、お返しをしなければいけないと普通の人は思うのですが、自分の能力でお返しできる以上の量の得をけ取ると、お返しできない事に対して罪悪をじ始めるんです。これを『心理的負債』と言います」
「なるほど……やけに詳しいんだな」
「はい。『他人を支配する黒すぎる心理』と言う本で読みました」
「えぇ……」
いやいや、待ってくれ。どんな本読んでんだよ。こち亀を読んでるんじゃなかったのかよ。
「あ、勘違いしないでしいんですけど、一応バスケの為に、參考になるかなーと思って読んだだけですからね? 先輩の事を支配したいとか思ってませんからね? 本當ですよ?」
そんな百點満點の笑顔で言われても逆に怪しい。けど、またバスケか……全く、たよりといい、二葉といい、こいつらどんだけバスケ好きなんだよ。
「で、ここからは私の個人的な考えなんですけど、先輩の置かれている狀況を當てはめますと、私と矢野先輩のどちらかと付き合う事で、自分一人が得をする事を恐れていてる=それに対してのお返しが出來きないと考えている。つまり、『自己評価の低さ』がここに來て決意を鈍らせているのでは? と、言うことです」
「自己評価の低さ……」
「この際、選ばれなかった方の事は考えない事にします。だって、それは選ばれた方に魅力があって、選ばれなかった方にそれが足りなかったと言うだけの話なんですから」
「いや、そんな風に考える事が出來たらそもそも悩んでないんだけど……」
「これだからて……非リア充は困ります」
「おい、今なんて言いかけた?」
「先輩の様にモテない人からしたら、どちらかを『選ばない』なんて事は出來ない、って思うかもしれませんけど、考え方がそもそも逆なんですよ。あ、逆ナンじゃないですよ?」
「この流れで逆ナンと勘違いなんてしないよ! どんなギャグなんだよ」
「お、やりますね。まあ、駄灑落は置いといて、例えば男子バスケ部のキャプテンの方。彼なんてそれはもうモテモテです。ファンクラブまであるらしいですからね。でも、彼にだって彼がいるらしいですよ? きっと彼は、彼以外の、その他大勢を『選ばなかった』という様には考えなかったでしょう」
「それはまぁ、そうだけど」
二葉はわざと僕に対して冷たく、馬鹿にする様な口調で話す。そうする事で、あなたは悪くない、思い上がるなと強調してくれているのが伝わってくる。
全く、なにが心理だ。僕の為を思って、敢えて悪者を演じる姿が見え見えすぎて、こっちが恥ずかしくなるよ。
「ちょっと話しが逸れましたけど、私が言いたいのは、先輩に『選ばれて』付き合う事が出來た人が、どれだけ幸せになれるかを考えてしいってことです」
「そ、そんな事……」
「もっと自分に自信を持ってください。なんの魅力もない人を好きになる程、私の目は曇っていませんよ?」
この子のの大きさというか、それを通り越して母とでも言うのだろうか。僕の悩みや苦しみさえも、全てその外側から包み込んでしまう。とても年下とは思えないな。
それとも僕にとっては、大きくて大きくて、途方も無いほどの大海原に投げ出されたかの様な悩みにじているけど、外側から見ればそれは極々ちっぽけで、他もない程度の事なのかも知れない。
 
「ちなみに、心配事の9割は実際には起こらないらしいですよ? 石橋は叩かず渡りましょうよ。そう簡単に崩れたりしませんから」
「あぁ……そうだな」
「まあ、どういった結果になるにせよ、すぐに先輩が答えを出せるとは思っていませんよ。どうせ、ギリギリまで引っ張るんでしょ?」
「ははは……ギリギリまでって、卒業までって事か?」
「さあ?  それは私が聞きたいですねえ。矢野先輩の特訓が終わるまでですかね?」
「な、なぜそれを?!」
「私は何でも知っている」
「久しぶりに聞いたなそれ」
「全く……矢野先輩も意外と大膽な行に出たものですね。油斷してました。矢野先輩とイチャつくのは構いませんけど……たまには、私にも構ってくださいよ?」
「お、おう。」
「それから……」
「それから?」
「いえ、まあいいです」
「なんだよ。そこまで言ったなら全部言ってくれなきゃ気になって夜も眠れないぞ」
「その時は私が膝枕でもしてあげますから、連絡くださいね」
それはそれで僕としてはやぶさかではない……って結局なんだったんだろうか。本當に気になるけど、いくら追求しても二葉が答えてくれる事は無かった。
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