《みんなは天才になりたいですか?僕は普通でいいです》63.大きな
「何て言うか、直球だね……」
「詩歌まで一何を……?」
「ううん。何でもないよ」
「ところで文人くんは、スマホでゲームとかしてる?」
「嗜む程度にはやっているな。詩歌はいくつか掛け持ちしてそうだな」
「うん。でも、実際ログインだけしているもあるんだけどね」
「へえ。俗に言うログインゲーってやつか。前から思ってたんだけど、もう辭めちゃってアンインストールすれば良いんじゃないのか?」
「一度課金しちゃうとね、中々……」
「確かにそれはそうかもな。僕は無課金を貫いているからよく分からないんだけど、なんか勿ない気分になるよな」
「うん。私も微課金勢だから、そこまで気にすることも無いんだけど、なんかね……それに、一度飽きちゃっても、熱が再燃する事もあるし……」
「そうなのか。僕は一度飽きたら、それっきりってパターンが殆どだけどな」
「そうなんだ……」
ん? 心なしか詩歌の表にりが見えた気がするんだけど、ゲームの話だよな?
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ゲームと言えば、以前 たよりとゲーム攻略の話をしたっけな。僕はエンディングまで直ぐに攻略するタイプで、たよりはじっくり時間をかけるタイプだったか。
「ところで詩歌は、家庭用のゲームをする場合、一気に全クリまで進める派? それともじっくり時間をかける派?」
「1週目は直ぐにクリアしちゃう。2週目からは……サブイベントも回収していくから結構時間かけるかな」
2週目をやる前提で話が進んでいるあたり、やっぱり詩歌はゲーマーなんだなと、改めて認識する。
2週目か。もし、人生をゲームの様に初めからやり直すことが出來たなら、1回目と2回目の人生はどれくらい変わるものなんだろう。
世界で何が起きるのか、自分がどんな人生を送るのか、を知った狀態でリスタート。
強くてニューゲームとまでは言わないが、セーブポイントに戻るよりはスケールが些か大きい。
この先何が起きるのか分かっていれば、大抵のことは上手くこなす事が出來るんじゃないだろうか。
それとも……決められたルートをもう一度繰り返す苦痛に耐えかねて、全く違う人生を歩もうとするのか。
そうなったら、せっかくの報が無駄になってしまうな。
「2週目か。一度見てしまったストーリーを、もう一度なぞるのって退屈じゃないか?」
「うーん……ゲームにもよるけど、そもそも2週目をやりたいって思えるってことは、そのゲームが好きだからなんだよね、たぶん……。だから、何回でもやりたくなっちゃうんじゃないかな」
ああ、る程。要は、2週目をやりたいと思える程、1週目を良い人生にしなければ、そもそも意味がないのか。
死ぬ時に幸せだったな、と思えない人生なんて、何回やり直したところで苦痛なだけだ。
「そうだな……」
「??」
し元気の無さそうな僕を、詩歌は不思議そうな顔で見つめている。そんな詩歌のを僕は見つめている。いや、なんとなく。決していやらしい意味ではない。
「!!」
それに気付いたのか、詩歌の顔がみるみるピンクに染まっていく。モジモジしながら顔を斜めに背け、し長めの前髪をくるくると弄る。
「ふ、文人くん……ど、どうしたの?」
「いや……大きいなと思って」
「っっ?!  え、えっち……」
「いやいや、決していやらしい意味じゃないんだ。僕は今、人生について考えていたんだよ。それでつい……な」
「なんで人生と、む……が関係あるの?」
「よく言うだろ。ーー人生とはおっぱいだーーって」
「そこはかとなく名言ぽっいけど、聞いたことない……」
「え? まじで?」
「も、もう……さ、っちゃ駄目だからね?」
誰もらせてくれとは言ってないんけど……でも、このじ、押せばいけるのでは?!
「の言うことは、全て反対の意味で捉えた方が良いと言う名言も聞いたことがある。つまり……」
そう言いながら、じりじりと詩歌との距離を詰めていく。
「ち、違う! だ、駄目だよ……こんなところで……」
手をばせばれることの出來る距離まで歩を進めたところで、ついに詩歌は自分のを両手で覆うように隠し、背中を向けて屈んでしまった。
完全防。まるで天敵に襲われているハリネズミの様な所作だ。し悪ふざけが過ぎたか。
「ははは。ごめん、ごめん。冗談だよ」
「もう……」
本気だと思ったのか、丸まったまま振り返る詩歌の表が、張から安堵に変わる。
「そんなに怯えなくても、詩歌が嫌がる様な事を、無理矢理するわけ無いだろ?」
「それは、わかってる……しびっくりしただけだよ。それと……」
「それと?」
「別に……嫌じゃないよ」
「……えっ?」
「二人きりになれる場所なら……別に嫌じゃ……ない」
突然の事に口をパクパクさせるだけで聲が出ない。それって、つまり……そういう事なのか?!
詩歌が、まさかこんな積極的な事を言うなんて……本當に良いのか?!
「し、詩歌。それって……その……」
「じょーだん!」
「な、なにー?!」
「仕返しだよ」
にこっと笑った詩歌の顔は、またしても桜に染まっていた。
「そうか……くそー。まんまと騙されたぜ」
せっかく詩歌の立派なをらせてもらえると思ったのに、実に殘念だ。
まあ、実際にそんな狀況になったとしても、チキンな僕は何もする事が出來ないんだろうな。
それこそ二度目の人生で、経験値を引き継いだ狀態なら、話は別だけど。
全く、人生ってやつはままならないものだ。
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