《みんなは天才になりたいですか?僕は普通でいいです》64.いいプレーヤーってなんだろう
「矢野、ちょっとこっち來い」
突然、鈴コーチに呼び出される。え? 私、何かやらかした?!
「は、はい!」
コートの隅で腕組みをしているコーチの元へ、小走りで向かう。
「お前……練習後、なんかやってるな?」
「えっ?!  なんでそれを……」
「きを見ていたらわかる」
さすがコーチだ。この人の目を誤魔化すことは出來ないみたいだ。
「がむしゃらに頑張るのも時には必要だ。だが、今はその時じゃない。しを休めろ」
「で、でも……」
「何をそんなに焦っている?」
「……先輩達と一緒にバスケ出來る時間は限られているんです! 私はしでもみんなの役に立ちたい!!」
「そんなボロボロのでみんなの役に立てるのか?」
「そ、それは……」
「暫くの間、部活以外でのトレーニングは止する」
「そ、そんな! なら大丈夫ですから!」
「ほう。よっぽど私の練習メニューでは足りないと見える。一度考え直す必要があるみたいだな」
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「あっ、いえ……そういう意味では……」
「ふふふ。地獄を見せてやる」
なんかすごく生き生きしている。ご、ごめんみんな。私のせいで……
「……」
「はぁ。まあ、やるなと言って簡単に引き下がる奴じゃないのは分かってるよ」
やれやれ、と言った表で一枚の紙を手渡される。
「やるんならここに書いてあるメニューにしろ。あとな、私も一応コーチなんだから、相談くらいしろ」
「鈴コーチ……すみません。ありがとうございます!」
コーチからもらったメニューを確認すると、下半強化を中心とした自重トレーニングがメインだった。ディフェンス力を強化したいと考えていた私には願ってもいないものだった。
「コーチは、本當に一人一人の事をちゃんと見てくれてるんだ……凄い」
「たより」
意気込んでいる私に聲をかけたのはキャプテンだった。突然ポイっとボールを私にパスして、キャプテンはディフェンスの勢を取る。
「えっ? ど、どうしたんですか?」
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「なぜ、お前が右にドライブできないか教えてやるよ」
あの時と同じ。神風と1on1した時と同じ。キャプテンは私から見て左側のコースを極端に塞ぐ。一見すると簡単に右へ抜ける様に見える……が、私の足はあの時と同じでかない。いや、かせない。
無理矢理、右側へドライブするが、思った様にスピードが出せず、キャプテンにボールをスティールされてしまう。
「くそ……なんで……」
「もう一度だ。ほらっ」
キャプテンが再びパスを出す。私はボールをけ取りオフェンスの姿勢にる。
「ここだ」
「??」
「この時點で、もう勝負はほぼ、決まってしまっている」
「えっ?」
「私が、お前から見て左のコースを塞ぐのは分かっていたよな?」
「は、はい」
「じゃあなんで軸足を左足にしたんだ?」
キャプテンに言われて自分の足に目を落とす。確かに軸足を左足に據えて、右足でピボットを踏んでいた。
※ピボット=ドリブルを突いていなくても、軸足と逆の足を自由にかせる。この時、一度決めた軸足がコートから離れるとトラベリングになる
※トラベリング=ドリブルを突かずに三歩以上歩く違反行為。旅行とはたぶん関係ない
何故? と聞かれて答えることが出來なかった。いつも通りとしか……
「お前は相手ディフェンスがどちらに居ようと、自分がどちらに行きたかろうと、必ず軸足が左足になる癖がある」
言われてみると、確かにそうかもしれない。あまり意識したことはなかったけど。
「勿論、絶対にダメって訳じゃあないんだけどな。ドライブでカットインする事を考えたら、相手に対して肩をれれる様に、相手に近い方の足から踏み出す方がゴールへ最短距離で向かえるよな」
「なるほど……」
「まあ、肩をれるんじゃなくて、逆に肩を抜くって言うテクニックもあるけど、使えるケースは限られるからな」
「軸足の問題だったんだ……」
「ま、それが全てとは言わないけどな」
「おい、真琴! たよりに今それを言うんじゃないよ!」
し慌てた様子で鈴コーチが駆け寄ってくる。
「ははは。そう言うなよコーチ。本人がやる気になってんだからさ。……たより、一度ついた癖を直すのは簡単なことじゃない。慣れないきを実戦でやろうとすると、怪我に繋がりかねないし。あまり焦るなよ?」
「たよりはバカ真面目だから、今は敢えて言わなかったのに……ったく、うちの大切な戦力に怪我させたら、お前が責任取れよキャプテン」
「オーケーオーケー。全く、ちょっとは可い教え子の事を信用しろってな。なあ、たより」
「キャプテン……コーチ……ありがとうございます! 私、無理はしません。約束します!」
私は本當にチームに恵まれている。大切な仲間と、信頼できる指導者。これ以上何をむ? 後は自分次第だ。やってやるぞ。
練習が終わった後、今度は富田先輩と話をする。
「先輩にとって、いいバスケットボールプレイヤーってどんな選手ですか?」
「いいバスケットボールプレイヤー? うーん、そうだなー。あっ、じゃーさ、ちょっとフリースロー打ってみて」
「え? 分かりました」
ドリブルを二回つき、ボールを構える。肘が外に開かない様に注意しながらの高さまで上げ、軽く膝を曲げて、その反で真っ直ぐにボールを放る。
ゴーン
「いや、そこは決めてよ」
「す、すみません……」
「まあいいや。言いたかったのはシュートがるかどうかじゃないからさ」
「??」
「たぶん、無意識だと思うけど、ボールのい目を合わせてシュートを打ったよね? どうして?」
「えっと、ボールに回転が綺麗にかかって、真っ直ぐ飛ぶから……ですか」
「そうだね。誰に教えられたわけでも無いだろうけど、10人いれば9人がそうすると思うよ。じゃーさ、フリースローじゃなくて、試合中に普通に打つシュートでもそうした方が良くない?」
「それはそうですけど、試合中にそんな時間ありませんよ!」
相手の一瞬の隙を見逃さず、タイミングをコンマ1秒ずらす事で相手を振り切る。そんな世界で駆け引きをしている中で、ボールを持ち変えてい目を合わせるなんて、不可能だ。
「無理だと思うから無理なんだな、これが。人間やって出來ないことは無い! なんてね。まあ、私は中學の頃から人より優れているって言えるものがシュートだけだったんだ。他は何をやらせても平均以下」
そんな事ない……と思うけど、きっと本人は本気でそう思っているのだろう。それだけ意識を高く持ち、常に上のレベルを目指してバスケをしている。決して驕ることなく、慢心することなく。
「だから、スリーポイントシュートを極めるって決めたんだ。毎日、試行錯誤して、シュート練習をひたすら重ねて。改善できるところがこれ以上無いって言い切れるまで」
富田先輩は、ボールを人差し指の上でクルクルと回しながら話を続ける。
「ボールのい目なんて気にしている暇は確かに無いんだけど、それでも、1パーセントに満たない程度の影響しかなくても、シュートのる確率が上がるなら、私はやる」
首筋から後頭部へ、更に背中から足先へと全に流れる様に鳥が立った。し遠い目で語る一つ上の先輩に、ある種の恐怖をじたと言っても相違ない。
それと同時に、本當に私は今まで何をやっていたんだろうと言う後悔が押し寄せてくる。
盜むべき技や考え方は、そこら中に転がっていたみたいだ。それに気付かず、寶の側を毎日素通りしていたなんて……勿なさすぎる。
「話が逸れちゃったんだけど、この高校にってしして、ある事に気付いたんだよね」
「どんな事ですか?」
「練習中とかでも、意識してい目を合わせてシュート打っていたんだけど、なんか中學の時に比べてボールを持ち変える回數が減ってる気がするなーって」
「それってどう言う意味ですか?」
「実際、私も気付いた時は驚愕したんだけどね。桜からのパスをけた後は、ボールを持ち変える必要がないんだ。あの子、パスを出した相手がシュートを打ちやすい様に、自分でい目を合わせてからパス出してんだよね」
「えっ?! ぜ、全然気付かなかった……」
「あの子のパスは正確無比。寸分の狂いもなく、今しかないというタイミングで私の手元にボールが飛び込んでくる。正に至れり盡くせりってじ。桜はいいお嫁さんになるぞー」
「お、お嫁さん……」
「結局、何が言いたかったかと言うと、大事な事は數字じゃ測れないって事なんだよね。私が1試合でスリーポイントを何本決めたとか、花火が合計何點取ったとか、そんな事はどうでもいい。影ながら、チームの勝率をしでも上げるために、それをさも當たり前だと言う顔で、誰に自慢するわけでもなくやり続ける。そんなガードのいるチームでバスケが出來て、私は果報者だと思うよ」
桜先輩の本當の武は安定でも、冷靜さでもなかった。私はし勘違いをしていたみたいだ。
勝利に対する執念。そこまでやるか? と、普通の人が思うような事を平気でやってのける。やはり、うちの高校のスターティングメンバーに、只者は1人もいないみたいだ。
「あ、因みに月見里は、桜と対極に位置するタイプだね。良くも悪くも。私のパスに合わせてお前ら走れ! ってじだもんね。あれは、格の問題かな? あはは」
先輩は笑っているけど、全く笑えないよ……
「ちょっとわかる気がします……」
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