《みんなは天才になりたいですか?僕は普通でいいです》68.文人の出した答え
「へぇー、結構綺麗にしてるんですね」
「そうか? 普通だろ」
「そうなんです? 男子の部屋にったの始めてなので」
「……ふーん」
平靜を裝ってはいるが、心臓のドキドキが止まらない。
何故、二葉が僕の部屋に來たのかと言うと、ただ漫畫を読みに來ただけだ。
僕が今ハマってて、集めている漫畫に二葉が興味を示し、現在に至るというわけだ。
貸してあげることも出來たんだけど、巻數が多いので一度に持っていくわけにもいかないし、実際に読んでみて気にいるかどうか分からないから、始めの數巻だけ取り敢えず読んでみて続きが気になる様なら持って帰るってことで話が落ち著いた。
「さて、男子の部屋に來てまずやることと言えば……」
そう言いながらベットの下を覗き込む二葉。
「そんなベタな所にエロ本はないぞ」
「そんな所には? ではこの部屋の何処かにはあるということですね」
「ねーよ!」
なんの生産もない在り來たりなやり取りを終えた後、2人でしばらく漫畫を読みふける。
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2人掛けのソファーに並んで座っていると、客観的に見ると完全なるカップルだよな……なんて事を考えていると、読み返している漫畫の容が全く頭にってこないのは言うまでもない。
どれくらいの時間が経っただろう。パタンとコミックを閉じる音が靜かな部屋に響く。
「もう5巻まで読んだのか。読むの早いな」
「そうですか? 普通だと思いますよ」
「で、想は?」
「正直、私の好みではなかったみたいです。すみません」
「ははは」
本當に、変わった子だ。普通……いや一般的にと言うべきだろうけど、友達や先輩に勧められたものを自分の好みでは無いとはっきり言うのはかなり勇気がいるものだ。
それを口に出來る所が二葉の良いところでもあり、危うい所でもある。でも、そこに素直に好が持てる僕も多の変わり者なのかも知れない。
「先輩どうしたんです? にやにやして気持ち悪いです」
「あははは。いや、二葉のそういうとこ、好きだなって思って」
「………………」
「ん?」
二葉は黙ったまま僕に背を向けている。長い沈黙。
あれ? 何か怒らせる様な事を言ってしまったか?
二葉は黙ったまま本棚に単行本を戻し、ヒラリとスカートを翻しながらこちらを向き、スタスタと僕の方へ歩いてくる。
そして僕の目の前で歩みを止めた。
「えっと……ふ、二葉さん?」
「もう……我慢するのやめようかな……」 
油斷していたら聞き逃してしまいそうな小さな聲で呟く。
我慢……? お、おしっこでも我慢してたのかな? だとしたらここでされては非常に困るんですが……
「先輩、座っていいですか?」
「え? い、いいけど……」
さっきまで普通に座ってたのになんで許可をとり直すんだ?
「では失禮します」
抱いた疑問を査する間も與えず、二葉は僕の膝の上にちょこんと座った。
しかも、僕と向き合う形で。
正直に言おう。僕はパニックに陥った。
二葉のらかい太もものと溫もり、鼻腔を突くの子獨特のらかい香り。
目をそらす余地もない程の至近距離にある顔から、微かに聞こえる吐息。
その全てが思考力をこそぎ奪いにかかる。
「あ、あの……これは一……?」
二葉は何も答えずし潤んだ目でこちらを見つめている。
今までの経験から鑑みるに、こんな大膽な行をとってはいるものの、二葉の心は僕以上に余裕がないはずだ。
いつもそうだ。行に移す勇気のない僕に変わって、二葉は自らき、自分の意思を示してくれる。
それも二葉の魅力の一つであり、好きな部分だ。
そう考えると、し冷靜さを取り戻すことが出來た。ただ、ここで新たな問題が発生した。
やばい。非常にやばい。
の子とこんなに著した事ない高校生男子にとって、今の狀況はあまりに刺激が強すぎる。
文人の文人が反応してしまいそうになっている。
いや、しょうがないよね?!
「先輩」
「は、はい」
「キス……していいですか?」
「ま、待ってくれ! そういうのはちゃんと正式な手続きに則ってからじゃないと……」
手続きってなんだよ! 慌てふためく僕を見て、二葉はどう思っているのだろう。
格好悪いと幻滅しただろうか。
いや、この子はきっとそんな事は気にしない。それにもしそう思ったなら、[先輩はダメな奴ですね、だからモテないんですよ]と、皮たっぷりに口にするだろう。
「先輩……私の事、嫌いですか?」
「ま、まさか」
「じゃあ、好きですか?」
「それは……まだ言えない」
「頑固ですね。ま、それが先輩のいい所なんですけど。でも、今回ばかりは私も譲れません」
そう言いながら、行き場を失って空中を彷徨っていた僕の手を摑まえて、指を絡める。
「たまには流れにお任せてみるのも悪くないかもですよ……」
ゆっくりと二葉の顔が近付いてくる。
もう何も考えられない。頭がぼーっとする。
二葉が顔を近づけながらスッと目を閉じる。
それにつられて僕も目を閉じる。
たぶん、もうすぐ二葉と……
ピロンッ
突然なったスマホの音に一瞬2人のにびくっと張が走り、目を見開く。
あまりの顔の近さにお互い笑いがもれる。
ああ、びっくりした。
ラブコメお約束の展開だけど、殘念でありながら、どこかホッとしている自分がいる。
二葉はどう思っているんだろう。
いい加減、僕がはっきりしないと2人にしつれ……
「ちゅっ」
可らしい効果音が僕の鼓を振させ、にはらかい。
あまりの驚きにさっきの二倍くらいの大きさで目を開いている僕を見つめている二葉。
でも、よく見ると目の焦點が合っていない様子で、ぼーっとしているのが見て取れる。彼もかなり揺しているみたいだ。
「二葉?」
「は、はい!」
「えっと……」
話しかけたは良いけど、なんて言えばいいのか分からず言いどもってしまった。
「先輩」
「は、はい……」
「……」
次は二葉が黙ってしまった。どうしよう。凄く気まずい……
このままでは今後の関係に多大な影響がありそうだ。
それに、様々なしがらみを全て無責任に放り投げてでも、もう一度を重ねたい。そんな風に思えるほど今の二葉は魅力的だった。
「先輩……もう一回……」
言うが早いかくが早いか、二葉の言葉を認識した瞬間、僕から二葉へキスをする。僕はいつも二葉に引っ張られてばっかりのけない男だな。
「んっ……先輩……嬉しいです」
二葉の目には薄っすらと涙が浮かんでいた。
いつも気丈に振る舞い、余裕のある大人な対応をしている二葉も、やはり高校一年生の普通のの子なのだ。
「先輩……私、卑怯ですかね? こんな格の悪い私のこと、嫌いにならないですか?」
「卑怯なのは僕の方だろ。二葉は何も悪くない。辛い思いをさせてごめん」
「そんな事ないです。それと……今日の事は2人だけのです。誰にも言わないでくださいね? あと、付き合うのは先輩の気持ちの整理がつくまでお預けです」
「どこまで気を遣ってるだよ。僕がそう言ってしいから、言ってくれてるだけだろ?」
「あまり私を買い被らないでください。私が矢野先輩と気まずくなるのが嫌なだけですよ」
「そっか。ありがとな」
「ありがとって……人の話を聞いてくださいよ。まったく」
「先輩」
「ん?」
「もう一回」
その後、抱き合ったまま何度もキスをわした。
僕はケジメをつけなくちゃいけない。
僕は二葉が好きだ。
たよりにも、それを伝えなくちゃいけない。
あれ、なんで俺こんなに女子から見られるの?
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