《みんなは天才になりたいですか?僕は普通でいいです》85.夕凪花火の決意

「負けた~。みゆ、りすぎ~!」

いきなり3ポイントシュート対決を申し込まれたのはいいんだけど、5本先取で勝ちってルールで、5本連続で功されたら、勝ち目ないじゃん~。

「今日も超絶好調。神がかってる……私。もはや私が神」

「みゆってたまに変なこと言うよね~。じゃあ次は1on1で勝負する?」

「え? やだよ。勝てないもん」

「えー! 勝ち逃げずるい~」

シュート勝負ならいつでも再戦け付けるよ、と言いながら、もう自分の世界に戻っていった。

みゆはシューティングしてる時は、話しかけても返事が大概返ってこない。凄い集中力だ。しかも一人でなんかぶつぶつ言ってるから、余計に話しかけずらいんだよね~。

シュートが外れたら瞑想タイムにるし。いや、迷走タイムかな?

うちもシュートは得意な方だけど、やっぱりみゆには敵わないな~。

シュートがよくる人のプレーを見て、ボールが生きているみたいで、ゴールに吸い込まれていくって表現がされる事があるけど、みゆのシュートはそんなじじゃないんだよね。

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どっちかと言うと、機械の様に正確で、無機質で、るのが當たり前ってじなんだよな~。

努力が天才を倒せることを証明する。みゆはそう言った。今となっては、みゆにシュートの才能があったのか、それとも努力で実力をに著けたのか見極めることはできない。

普通に考えれば、このレベルでシュートがる人の事を、誰も才能が無いとは言わないでしょ。逆に、天才だと稱賛されるレベル。

じゃあ、レベルの高いとろこでプレーしている人はみんな天才なのかな? 上手くなれた人はみんな天才なのかな? だってさ、どこからが努力で、どこからが才能かなんて、誰にもはかることが出來ないんだもん。

なくとも今日、初めてみゆのシュートを見た人は、彼のことを天才だと思うだろう。でも、期からみゆをずっと見てきた人なら、みゆがどれだけ努力してきたか知っているから、同じ評価はしない。

つまり、【天才】とは、ひどく不確定で、定義の曖昧な存在であり、ある人から見れば【そう】、またある人からみれば【そうじゃない】なんだろう。

それなのに、みゆの事を何も知らない人が、彼のことを天才だの、シュートセンスがあるだの、知った風な口をきくのは耐えられない。

それはみゆだけでなく、もっちや、真琴っちゃんや、より……他のみんなについても同じだ。みんな、超がんばって、それぞれ自分にしかないスキルをに著けている。うちを除いて……だけど。

うちは、自分の才能に自覚がある。それは、ことバスケに限らず、全般にいたる。

こんな事を言うと、ひどく意地悪で、格の悪いやつに聞こえるんだろうけど、でも……出來てしまうものはしょうがない。

小さい頃からそうだった。別に頑張らなくても、大概の事は出來てしまう。人並み以上に。し頑張ってしまうと、人の足並みをす。

何をやってもクラスで一番、學校で一番。それが當たり前。小さい頃は、それでもよかった。みんなが凄いねと言ってくれて、もちろん悪い気はしないし。

けど、そんな日々は長くは続かない。

頑張らなくても結果が出せる。それは普通の人からしたら、酷く妬ましいことらしい。そりゃそうだよね。自分がいくら頑張っても出來ない事を、隣で簡単にやられっちゃったら、腹が立つよね。

幸いにも、嫌がらせとかいじめに発展する事はなかったけど、周りのみんなと心から打ち解けることは出來なかった。

なんとなくどころか、明確な壁をじる。分厚い壁を。まあ、それはそれで、別にいいやってじで、そこまで気にしてはなかったんだけどね。

バスケを続けたのも、ただなんとなく。他にやる事もなかったし。サッカーとか野球は、の子だけのチームが無かったから、男子に混じってやって、男子に勝っちゃうのが申し訳ないってのも大きかった。

うちの通ってた中學のバスケ部は、そこまで強くなかったし、楽しくやれればそれでいいと思って、とにかく手を抜いた。目立たない様に、無難に、適當に。

よりと一緒にバスケするのは楽しかったし、どんどん上手くなるあの子を見ているのが好きだった。今になって思うと、うちがバスケを辭めなかったのって、よりがいたからなのかもしれない。

後は、監督と鈴ちゃんに出會った事も大きかった。初めて會った時は、びっくりしたなあ。

無名校の無名選手に、なんで聲かけるんですか? って聞いたら、監督が「お前、本気でバスケ、やってみないか?」って……

意味が分からないですって答えたら、「うちの高校に來い。お前程度じゃ、歯が立たない選手ばかりだぞ」とか、いきなり煽られて。

周りの人からしたら、全然會話が噛み合ってない風に聞こえただろうけど、監督と鈴ちゃんには、全てお見通しだったんだろうね。煽り耐の低い、うちの格まで読んでた。

高校にってからは、凄く新鮮だった。先輩たちもめっちゃ上手だったし、同級生たちも皆ひかるをもっていた。一応うちがエースとして扱ってもらっているけど、それぞれ持っている【個】には、敵わない。

みゆのスリーポイントシュート然り、真琴っちゃんのリーダーシップ然り。

もっちのパスも、あふれてるし~♪ 奏っちの力強さにも憧れる!

頑張ってもいいんだって、必死にやってもいいんだって頭が理解した時、と……心が震えた。これが武者震いか~って思ったのを覚えている。

鈴ちゃんもうちを甘やかすことなく、他の選手と同じように怒ってくれた。分け隔てなく。凄く……本當に嬉しかったなあ。

なんて、まだ引退するわけでもないのに、なんでこんな傷に浸っているんだろ。らしくない。

流石のうちでも、高校最後の大會前という、一生に一回しかない特殊な狀態に、張しているのかな? 普段はそういうのとは無縁なんだけどなあ。

こんなうちをれてくれたチームに、恩返しをしたい。神様が與えてくれたこの才能を使って、チームを絶対に勝利に導く。

いままで、疎ましくさえ思っていたうちの【才能】。本気で使う時がきたみたいだ。

鈴ちゃーん」

「おい、何度言ったら分かるんだ。コーチと呼べコーチと」

鈴ちゃん、一つ質問!」

「っとにお前は人の話を聞かないな……なんだ?」

「うちってさあ、天才だと思う?」

「何言ってんだお前。大丈夫か……?」

「…………」

「ふっ……ふふ。そうか……。夕凪、自惚れるなよ。お前より上手いやつは、世の中にごろごろいる。上には上がいるんだよ」

「そっか。うん……うん! うち、頑張るね!!」

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