《じるのは快楽だけ》悲しみの快楽
もう、つらい。
何をしようともカメラが気になってしまう。
まあ、ベッドとトイレしかない部屋だから特にないんだけど。
この狀況を変えるためにどうすればいいのか。
そんなことばかり考えたっていい案は思いつきそうにない。
一番手っ取り早いのは犯人に直接目的を聞くことだが、次いつ會えるかわからないし、なんたって目の前にしたら恐怖でそれどころじゃないだろう。
はぁ。
何日経ったんだ。
みんな元気にしてるかな、
お母さん仕事忙しいのに家事もしてくれてたから調崩してないかな。
お父さんにお酒好きだからって飲みすぎちゃダメだよっていつも言ってたけどちゃんと守っているかな。
優も中學生のくせに彼氏ができたって幸せそうだった。
小さい時はみんなでいろんなところに出かけたな。
最近は家族全員でどこか行くことってなかなかないけど、朝食は全員で食べるって決まってる。
今まで破ったことなかったのにな。
心配してくれてるのかな。
會いたいな。
なんか、泣きそう。
手で目元を拭う。
ガチャ
突然ドアが開いた。
ビクッとしてドアの方を見ると、前見た時と違う服を著た男がいた。
ベットの上を後ずさる。
驚きと恐怖で頰に涙が伝った。
男はこっちに近ずいて、言った
『どこか痛むのか』
驚きで目を見開いた。
確かに聲がした。
靜かで淡々とした穏やかな聲だった。
今まで一言もはさなかったのに。
今になって、なぜ。
男はそれ以外何も言わずこちらをじっと見つめている。
なかなか言葉が出てこない。
「特には、」
やっとの思いで口に出す。
ほんとうは拘束されていた手首とか、鎖が付いている右足とかが痛い。
でも言えなかった。
なんでそんなこと聞くんだ。
なんの心配をしている?
『じゃあ、なんで泣いているんだ。』
なんで?
家に帰りたいから?寂しいから?男が怖いから?
そんなこと言えない。
「なんでも、ないです」
男はこちらを見つめて、し間を開けて言った。
『泣くのに理由がないわけないだろ』
しまったと思った。
怒らせてしまっただろうか。
どうしよう。
思わず目を瞑る。
毆られたりとか、
と思ったが
『言いたくなかったらいいんだ。無理に聞いてごめんな。』
耳を疑った。
そんなこと言われるなんで思ってもいなかった。
驚いて男の顔を見る。
マスクをしているため表はわからない。
『何か食べられるか?持ってくるから待っててくれ。』
そう言って部屋から出て言った。
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