そうここは地獄なんかじゃない。むしろ天國天國だったのだ。と頭の中のもう一人の自分がガッツポーズをしている。いかんいかん。

こんなことで喜んでしまったら。と俺は我に戻り前髪をかきあげて一言。

『今は人いないよ』

俺は15年間生きてきた中で過去最高に低い聲で世にいうイケボというやつで言った。

『きゃぁー！かっこいい！連絡先換しよ！』

馬鹿でよかった。中學生活3年間學年最下位の座を1度も譲らず頑張ったかいがあった。この學校に來てよかった。勝ち組だ。

俺は學初日で高校生活の勝利を確信した。

『仕方ないなぁ、じゃあQRコーd』

ガラガラガラ

『おーい、席につけー。』

タイミング悪く擔任が來てしまった。

『學初日にスマホを使うとは何事だ！』

しまった、この學校ではスマホを使ってはいけないという校則があるらしい。

『誰だー？最初に出したやつは手を挙げろ』

あちゃー、、、いや待てよ？ここで俺があえて代わりになり自首すればさらに好度が...完璧だ。あ、あ、よし、イケボの準備はできた、

『あ、あの澤部先生！』

『なんだ？』

よし完璧なり出し。あとは正直に言うだ...

『こいつです先生』

後ろから予想もしてない聲が聞こえた。子にしては低い聲の主は続けた。

『小坂 君が連絡先を教えるためにLINEを開いてましたー』

『よし、分かった、小坂ちょっと來なさい』

そう擔任に言われたがそれどころではない。誰だ。俺は後ろを振り返り聲の主である犯人を探した。しかもあいつ俺の名前をなんで知ってるんだ。

『なに？文句ある？』

半笑いで俺に向かって言ってきた。いや俺はこいつの顔をどこかで見たことがある。

『やっほー久しぶり』

思い出した。中學2年生の時にクラスメイトだった志田ナナだ。しかも志田は當時俺をさんざんいじめてくれた憎いやつだ。毎日自分の殘飯を嫌というほど食わされ宿題をやらせて荷をもたされ...

『なんでお前が...』

『知らなかったの？私勉強できないの♡だからこの學校に來た。私以外にもう一人同じ中學から來ると聞いてたけどまさかあんたとはね』

笑い事ではない。天國だと思っていたこの空間がたった一人ののせいで一瞬で地獄へ変わった。

『とりあえず行くぞ。』

俺は擔任に首っこを捕まれ職員室へ向かう。聞きたくもない志田の笑い聲が廊下まで鳴り響いていた。