《ただいま冷徹上司を調・教・中・!》っていったいなんなんだ?(5)
淡々と業務をこなしていれば、時間が経つのは早くじられる。
正午になり、私はパソコンをスリープモードにして、大きなびを一つした。
「休憩室行きましょうか?」
「そうだね。お腹すいちゃった」
瑠ちゃんと紗月さんがそう言いながら、自分のデスクの一番下の引き出しを開けてお弁當を取り出す。
「あのっ」
そんな二人を焦って制止し、私はけない表で「今日はここじゃ駄目ですか?」と聞いた。
「そうか。千尋ちゃん、何か話があるんだったね。いいわよ、ここで」
紗月さんがニコリと微笑んでくれると、瑠ちゃんも同意してくれる。
「じゃあ私、給湯室でお茶だけ淹れて來ます。二人とも緑茶とほうじ茶、どっちがいいですか?」
気が利く瑠ちゃんがそう聞いてくれたので、紗月さんは緑茶、私はほうじ茶をお願いすることにした。
「すみません紗月さん。休憩室の方がゆっくり休憩できるのに」
この會社の休憩室は二か所あって、素早く移できれば隅に設置されている四畳の畳でゆっくりとくつろぐことができる。
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なので私達はいつもその場所を競い合っているのだ。
しかし今日は下手に移して梨央にだけは會いたくない。
「そんなこと気にしなくていいわよ。千尋ちゃんの顔を見てれば、なにかよほどのことがあるんだろうなってわかるもの」
「紗月さん……」
紗月さんのこのふんわりとした笑顔には、いったいどれほど助けてもらっただろうか。
できることならこんな姉がしかった。
一人っ子だけど。
明るく振る舞おうと努力はしているが、やはり気を抜くと昨日のことが思い出されてしまい、頑張っている私の笑顔を曇らせてしまう。
紗月さんはそんな私の心を、なんとなくじ取ってくれていたのだろう。
「まだ何もアクションを起こしてないんですけど……私、今日、吉澤さんと別れようと思ってます」
「別れる?ずいぶんと急な話ね。昨日の帰りまでは殘業後に彼の家に行くって笑ってたのに」
そう、昨夜は私の帰りが遅くなる予定だったため、和宏とのデートをキャンセルした。
けれど思いのほか早く終わったので、和宏の家まで行き、あんな場面に遭遇してしまったというわけだ。
「今となっては行かなきゃよかったと後悔してます」
「なにがあったのか話してごらん?」
始めから相談しようと思っていたのに、今さら口籠ってしまう私を待ってくれている紗月さんのデスクに、給湯室から戻ってきた瑠ちゃんがマグカップを置いた。
「ありがと」
ニコリと笑った紗月さんが瑠ちゃんにお禮を言うと、「いいえ」と言いながら私の方に回ってきて、「はい、千尋さん」と私にもカップを渡してくれた。
「ありがとう」
私もお禮を言うと、「いいえ~」ともう一度笑って席に著いた。
三人揃うと不思議と勇気が湧いてきて、私は意を決して簡潔に一言告げる。
「浮気されたので彼とは今日、別れます」
紗月さんと瑠ちゃんは目を丸くして固まった。
「浮気って……吉澤さんがですか?」
絞り出すように聞いた瑠ちゃんに、私はしっかりと頷いた。
「どうして浮気されたってわかったの?」
小さな聲で聞いた紗月さんに私が手招きすると、紗月さんはお弁當とカップを持って私の隣の席に移してきた。
「昨日、デートはドタキャンしたけど殘業が早く終わったから彼の家に行ったんです。そしたら玄関に鍵がかかってなかったんで中にったら……いたしてました」
「いたしてた……」
「まさか最中だったんですかっ?」
核心ある問いに、私は大きく溜め息をつく。
「ガンガンいたしてる真っ最中でした……」
私の言葉に二人とも頭を抱えた。
「なにやってんの、吉澤くんは」
「吉澤さんのくせに浮気するなんて、ふてぇ野郎ですね」
「浮気できるようなタマじゃないと思ってたんだけど……」
「そもそも浮気の相手をしてくれる人がいることに驚きですけどね」
小聲で私の代わりに文句を言ってくれている二人が和宏の浮気相手を知ったら、いったいどう思うだろうか。
「本人は私が昨日來たことも、浮気がバレたことも知りません。今日の帰りに取っ捕まえて別れてやります」
いくらなんでも、このまま付き合い続けるほど馬鹿じゃない。
もうれられるのも會話をするのも視界にれるのも嫌だ。
「浮気するような男はが腐ってます。間違いなく別れて正解ですね」
一度浮気を容認したら歯止めが利かなくなるのは経験済みだ。
心をれ替えることなど絶対に有り得ない。
「浮気は癖付くからね」
紗月さんの言う通り、浮気はかなりの高確率で再犯する。
「私、今まで男に裏切られてばかりだったから、吉澤さんみたいな人なら大丈夫だと思ってたんです。でも間違ってました」
そう、私の考えは恐ろしいほどに甘かったのだと痛した。
「和宏レベルでも浮気するなら、もうどんな男でも同じです。今度は打算的なじゃなくて、本當にいい男を探します」
私の宣誓ともとれる発言に、二人は小さく拍手をくれる。
「今まで千尋ちゃんは妥協しすぎてたのよ」
「そうです。男運なんて、自分のモチベーション次第で変わるもんなんですから」
そんなもので変わるなら、私はもっといいができていたんじゃないか。
ネガティブにそう思いもしたけれど、私はそんな暗い思考を振り切った。
「私、これからは頭で考えずに気持ちに素直になってする。無理しないで自然で、先読みなんかしないで、ちゃんと大好きだーって言えるようなするっ」
そうだ。
今やっと気づいた。
どんなに私一人が妥協して頑張って盡くしてしたところで、それが本のになることなんてないんだ。
獨りよがりは何も生み出さないんだから。
「は楽しく対等に」
「二人で築き上げてこそのですからね」
紗月さんはともかく、瑠ちゃんにガッツリ上からを語られると、さすがにへこんでくるけれど。
確かにその通りなんだ。
私にも大きな長と変化が必要な時期に來たのかもしれない……。
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