《ただいま冷徹上司を調・教・中・!》始まりは意地と恥(9)
「最近仕事がやりにくくて仕方がないんだが、何かあったのか?」
水曜日の仕事帰り、偶然にも帰宅時間が重なった平嶋課長から唐突にそう聞かれ、私はあんぐりと口が開いてしまった。
平嶋課長の発言と、梨央から私の宣戦布告をらされ、私と平嶋課長の噂は確実視されることとなり、常に私たちの一言一句は注目されることとなった。
それもこれも全部……。
「平嶋課長がいけないんですよ」
「俺の何が悪かったんだ?」
そうサラリと聞いてくるあたり、自分の失態がまるでわかっていないのだろう。
駅に向かい、私達は自然に並んで歩きだした。
「子社員に直接私との噂は本當なのかと聞かれたとき、きっちり否定しなかったからこんなことになったんですよ」
私とは全く関係ないと平嶋課長が口にすれば誰しも信じたというのに。
「ちゃんと否定したじゃないか。デートはしていないって」
「デートを否定するよりホテルを否定してほしかったですね」
「それは目撃者がいる以上、否定はできないだろう?事実は事実だしな」
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確かにシラを切ったとしても、絶対に見たとムキになって言われてしまうほうが面倒だが。
「事実を公にして私との関係を否定すればよかったじゃないですか」
そうすればもっと簡単に事は収まっていたはずなんだ。
ヒールに八つ當たりするかのように強めにアスファルトに叩きつける。
「俺はそれでもいいけど、久瀬は手痛いだろう?なんだから」
真っ直ぐ進行方向を向いたまま視線もぶつからない平嶋課長の心を、表から盜み見るのは無理があるようだ。
けれど嫌味じゃなく素直に解釈できてしまうのは、イケメンマジックというやつだろうか。
平嶋課長の口から『だから』と聞くと、とても扱いしてもらっていると勘違いしそうで恐ろしい。
しかしだと言うのに、いや、だからこそ、男に裏切られ、友達から見下される。
その度に自分の何か大切なものがしづつ削ぎ落とされていくような。
そんな切ない気持ちになるのだ。
けれど今はどうなんだろう。
私の隣を歩く平嶋課長をチラリと橫目で見ると、パチリと視線が絡まった。
「なんだ?」
自分を橫目で観察している私が気になったのだろう。
なので私は素っ気なく、「なんでもないです」と答えた。
つい數日前までは本當に仕事上のみの関係で、仕事以外の話なんてしたことがなかった。
同じ時間帯に會社を出ても、こうやって一緒に帰ることもなかった。
なのに今こうやって平嶋課長と肩を並べて歩いている。
それがとてつもなく大きな変化で、実の所は私自もどうしていいのか戸っているのだ。
急に近くなってしまった課長との距離に戸いながらも、自然と歩調を合わせるあたり打算がりじっている証拠だろうか。
裏切り者2人の顔が脳裏に浮かぶたび、平嶋課長の腕に手をかけたくなってしまう。
「……ばかみたい」
「俺が?」
私の獨り言をキャッチした平嶋課長は、怪訝な顔で私を見下ろす。
「課長のことをばかみたいと思う人なんていないでしょ。私のことですよ」
溜め息混じりにそう言うと、平嶋課長は口元に手をやり眉を顰める。
「バカなんて、けっこう言われてるぞ」
「めてもらわなくて大丈夫です」
私はすっぱりと話に幕を下ろした。
どうせ絡みでめたりして言われたりする、ってじだろう。
全くどこまでも嫌味なイケメンだ。
それからは大した會話もせず、私達は電車の上りと下りで別れてそれぞれの帰路についた……。
それからの私と平嶋課長の関係は付かず離れず。
この言葉がぴったりだろう。
今までよりも格段に近くなった距離だが、周りが期待するほどの進展はない。
きっとこのままでいってしまえば、いずれ私と平嶋課長の噂は消えてなくなってしまいそうなほど。
まだあの二人に何もしていないというのに。
「金曜の夜だっていうのに二人で帰るの?」
ノー殘業で先に會社を後にした紗月さんに遅れること一時間。
十九時を回って瑠ちゃんと二人で會社を出ようとしたとき、私のすぐ後ろで聞きたくもない梨央の聲が聞こえた。
私が顔をしかめて振り向かずにいると、瑠ちゃんが代わりに振り向いて返答してくれた。
「まだ平嶋課長が帰って來ていないことくらい、植村さんだって知ってるでしょ?平嶋課長は自分の時間に千尋さんを合わせたりしないんですよ」
「へえ……。私はてっきりもう別れたのかと思ったわ」
「そんなことあるわけないじゃないですか。平嶋課長は千尋さんのこと大切にしてますよ。植村さんは違う課だからわからないんですね」
かなり強気に話す瑠ちゃんだが、全くのデマだとバレないあたり違う課でよかったと思う。
平嶋課長が社員を大切にしてくれるのは前からだし、最近近しいのだってあんなことがあっただけではなく、私が事務窓口になっている病院が多いからだ。
事実を言ってしまえばなんてことはない。
「いまいち信じきれないところがあるのよね。ま、近いうちはっきりさせるから」
「植村さんには関係ないことなので、今度はくだらない事せずに大人しくしといてください」
梨央に怯むことなくそう返した瑠ちゃんは、「千尋さん、行きましょ」と私の腕を取って足早にその場から離してくれた。
駅まで向かう道のり、瑠ちゃんは気難しそうに眉を寄せていた。
「瑠ちゃん、さっきは本當にありがとう」
何も言えなかった私に変わって、梨央にハッキリと言ってくれた瑠ちゃんには謝している。
「千尋さん」
「なに?」
「どうにかならないんですか?」
瑠ちゃんの言いたいことがよくわからなくて、私は小首を傾げた。
「平嶋課長と千尋さんの距離、以前と比べるとまってるのは見ててもわかります。でもそれじゃ、まだまだ足りないんです」
もどかしいとでも言うように瑠ちゃんは言葉を紡ぐけれど、そう言われたところで簡単にどうにかならないのが私達の関係なのだ。
「なにかきっかけがあれば、ぐんと近付きようなんですけどね」
「スキのない平嶋課長がきっかけなんて」
あの一件以來、やはり平嶋課長はプライベートを垣間見せることもなく完璧に振舞っている。
どこにも付ける隙がないのが現狀だ。
「きっかけがあったら、絶対に見逃しちゃダメですからね」
「うん、わかった!」
しでもお近づきになれるチャンスがほしい私は、神にも祈る気持ちだった。
そして迎えた週末、私は神様の存在をじることとなった……。
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