《ただいま冷徹上司を調・教・中・!》贅沢なのにもどかしい関係(11)

凱莉さんと一緒に部屋にると、コーヒーとスポーツドリンクを取り出した凱莉さんから袋をけ取り、中を冷蔵庫にしまっていく。

私の好みがわからず、悩んだ末に全部購した、という経緯が手に取るようにわかる買いの仕方だ。

私のことを思い浮かべながら一生懸命に選別してくれていたのかと思うと、なんだか本當に勘違いしてしまいそうになる。

吉澤さんに対して放ったこの場の數々を思い出すと、私の頭は混してしまった。

確かにあの言葉は人として最も適切で正解な答えだ。

けれどそれはこの前私が凱莉さんに求めたもので、決して凱莉さんの本心ではないだろう。

凱莉さんはあくまでも私の理想を形にしてくれただけなのだ。

自分のいいように解釈して舞い上がってはいけない。

そう言い聞かせて凱莉さんの元に戻った。

「お待たせしました」

今からどんな説教が始まるのだろう。

ドキドキしながら凱莉さんの前の床に正座すると、「ここ」と自分が座っているソファーの隣を軽くたたいて私を促した。

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凱莉さんの隣にちょこんと収まると、さっきとは違う意味で心臓がドキドキしはじめて、もう止まらない。

近いのよ。

さっき影に隠れてミントタブレットを數個食べといてよかった……。

「あのな……」

凱莉さんは、まるで新社員に……いや、子どもに諭すようにゆっくりと言葉を選ぶ。

「言いたいことはたくさんある。それを一言に集約すると、隙が多すぎるってことだ」

はい。

さすがに今回は自分でもわかってます。

「吉澤だとわかっていて玄関を開けたのか?」

「そんなわけありません。わかってたら一ミリも開けないどころか、居留守使ってます」

力を込めてそう言ったのだが、それは凱莉さんをさらに呆れさせる答えだったようだ。

「だったら何か?お前は誰かも確認せずに開けたということか?吉澤だったからまだマシだったものの、萬が一何かあった場合、俺は今、千尋のと遭遇してたわけだな」

……さすがにそれは話が飛躍しすぎていませんか?

そう言いたかったけれど、さらに問い詰められそうだったので、余計な事は言わずに一言だけ呟いた。

「ごめんなさい」

しゅんと落ち込んだ私の頭を、凱莉さんは溫かい手でゆっくりとでてくれた。

「俺だっていつもそう都合よく千尋の前に現れるわけじゃないんだからな。しは警戒することも覚えてくれないと、気が気じゃない」

「わかりました……」

なんだかんだと最後は優しい凱莉さんは、やっぱり私の心を包んでくれる。

もう、大好きだって言っちゃいたいくらいだ。

……まだ言う勇気さえないんだけど。

「もう熱は下がったのか?」

するっと頬を包まれて私の心臓は飛び跳ねた。

最近の凱莉さんは、なんだかとても優しくて、こんなふうに自然にれてくるようになった。

それがくすぐったいほどに嬉しくて、ちょっぴり切なくじる。

この溫もりが、本當に私のものになればいいのに。

そんな夢みたいなことを願ってしまうから。

「もうすっかり」

ニコリと笑って元気をアピールすると、凱莉さんはホッと安心したかのように微笑んだ。

こんな笑顔のひとつひとつが狡くて、苦しいくらいに隙を実させられる。

「疲れが出たのかもしれないな」

「疲れ……ですか?」

なんの疲れだろう。

先週もいつもの日常で、特別変わったことなんてなかった。

この熱も、凱莉さんとの約束がキャンセルになった後、雨に打たれてしまったのが原因で、完全に自分の不注意なわけだから。

「お母さんの合、大丈夫だったか?」

ん……?

お母さん……?

「え……誰の……?」

意味がわからず聞き返すと、凱莉さんこそ意味がわからないという表になった。

「や……千尋のお母さん……だろ?」

「私のお母さん……合悪いんですか?」

「それを俺が聞いてるんだ。もうよくなったのか?」

なんていうんだろう。

このちぐはぐな會話はどういうことだろう。

「凱莉さん。私、よく分かりません」

「俺もだ」

私達は間の抜けた顔で見つめ合った……。

「とりあえず俺から話していいか?」

凱莉さんにそう言われて、私は手でドーゾと合図する。

「土曜日なんだが……俺は千尋のお母さんが倒れたって聞いたんだ」

「なんですか、それ」

私のお母さん……。

數日前に電話があった時は、持ち前の明るさでメチャメチャ大笑していたくらい元気だった。

そのお母さんが倒れたなんて、あるはずがない。

「だから今日は來れなくなった……と」

「それ、誰報ですか?」

當然私であるはずがないし、が凱莉さんに連絡するはずもない。

あるとするならば。

「よく話しかけてくる、千尋と同期の……」

よく話しかけてんのか……。

「梨央ですね」

「そうそう。千尋がよくそう呼んでたな」

はぁ。

やられた。

「その子と偶然電車で會ったんだ。千尋が慌てててスマホを忘れたからって、わざわざ伝言しに來てくれたんだ」

「はぁ……」

私がそんなことする訳ないじゃないか。

どうして私が梨央なんかに伝言を頼むと思ってんだ、この人は。

「疑問、持ちませんでした?」

「だってあの子は千尋と仲がいいだろ?」

「…………」

そうか。

よく考えたら凱莉さんに、彼をした張本人の名前を教えてなかった。

給湯室で梨央とのやり取りを聞かれた時も、先に出たのは私で梨央の姿は見てないんだ。

凱莉さんの家までついてこさせた時も、凱莉さんは後ろを振り向いていない。

容を知ってはいても、人特定するほどの報量ではなかったということだ。

梨央の策略にまんまとハマってしまった……。

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