《ただいま冷徹上司を調・教・中・!》仮がホントに変わるとき(6)

それからというもの。

私の部屋から帰る凱莉さんに向かって。

「スーツ、ウチに置いてればいいのに」

だとか。

自分の家に送ってもらう時に。

「著替え、置いてなきゃいけないですかねぇ」

だとか。

様々なことを言っては『お泊まり』をチラつかせてみたけれど。

凱莉さんは全然それに対しての反応を見せない。

なのに別れる間際に名殘惜しそうにキスをするなんて。

本當に狡い人だ。

モヤモヤと考え出して2週間。

いい加減にキツくなってきた時に思い出した。

妥協をするから、我慢するからいけないんじゃない。

『まぁいいか』『しかたない』

これを卒業するために凱莉さんとこういう形をとったはずだ。

ダメなところもいいところも、お互いに全部さらけ出したこの関係で、一何を抑え込む必要があるのだろう。

好きが大きくなりすぎて、関係に変化が起きたり壊れたりすることばかりを恐れ始めてた。

私が自分の気持ちを抑えないことで萬が一関係が解消してしまったら。

もう一度、私がお仕掛けてしまえばいいことだ。

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そう決めてしまえば、ずいぶんと気持ちが落ち著いた。

次の土曜日のデートで。

私は気持ちの全部を打ち明けよう。

そしてやってきた土曜日。

私は朝から気合がっていた。

今日は。

今日こそは。

ちゃんと凱莉さんに想いを伝えよう。

夜、部屋に戻ってきたら、凱莉さんと話をしよう。

そう決心して私は凱莉さんが迎えに來てくれた車に乗り込んだ。

著いた先は海浜公園だった。

家族連れが多く、子供たちの笑い聲が聞こえる中、私達はピクニック気分で散歩を楽しむ。

2人漕ぎの自転車をレンタルし、サイクリングロードを漕ぎあってはしゃいだ。

れ合えるという人気のコーナーでは、カンガルーやカピバラ、サルやマーラなど、たくさんのたちが迎えてくれた。

モルモットを膝の上に乗せ、優しく背中をでてやると、私の膝の上のモルモットは安心したように眠ってしまったが、凱莉のモルモットは何度もフンをする。

ケラケラと笑っていると、気持ちがいい時はフンをすることがあるのだと教えて貰った。

夕方までたっぷりと堪能したおかげで、スマホにはたくさんの思い出の寫真が増える。

それが嬉しくて、何度も何度もフォルダーを見つめた。

心に帰ったようにおもいっきり遊び、帰りがけには味しい手打ちパスタを食べて、心ともに大満足だった。

「本當に楽しかったです」

帰りの車の中でそう言うと、凱莉さんはまっすぐ前を見てハンドルを切りながら満足そうに微笑んだ。

「千尋はどこに行っても何をしても、本當に楽しんでくれるよな。だから俺も千尋と一緒なら楽しい」

「私だって凱莉さんと一緒だから、どこで何しても楽しいんです。凱莉さんがいてくれるおかげですね」

凱莉さんの橫顔を見つめてそう言うと、ちょうど信號待ちで車を停止させた凱莉さんがこちらを向き、左手で私の頭を引き寄せて素早く私にキスをした。

ずっとこのままキスしてたい。

けれど信號はこっちの都合なんて関係なく変わるわけで。

軽く音を立てて離れたを名殘惜しくじた。

……後で私からめっちゃくちゃしてやる。

私の気持ちを話しても、凱莉さんがれてくれるかどうかなんてわからないけれど。

車はゆっくりといつもの駐車場に停車した。

もう、當たり前とでも言うように、私と凱莉さんは車を降りて私の部屋に向かう。

「ただいま」

「ただいま」

まるでここが帰る家でもあるかのように、凱莉さんも最近は『ただいま』と告げるようになった。

なのにここからの『行ってきます』はない。

それがとっても切ない。

苦しい……腹ただしい……いや……もうムカつく?

私は自然の流れで凱莉さんと話せるように、凱莉さんが落ち著いて座った頃を見計らって、冷蔵庫の中に忍ばせてある缶ビールを確認した。

絶対飲ませてやる。

飲酒運転じゃ、絶対に帰れないんだから。

……帰してなるものか。

もはや意地と言えなくもないが、この関係が始まったのも私の意地からだ。

今さら恥ずかしくもなんともない。

「今日はたくさんかして気持ちよかったですね。先にお風呂っちゃってください」

「いや、風呂は家で……」

「この前せっかくおうちセット買ったんですから、使いましょうよ」

「いや、でも……」

「もういいから。さっさと行ってください」

かなり強引に凱莉さんを引き上げると、お風呂場に無理やり押し込んだ。

大人なんだから、いい加減に覚悟しやがれってんだ。

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