《ただいま冷徹上司を調・教・中・!》仮がホントに変わるとき(9)
凱莉さんの溫もりに包まれた私は、いったい自分のに何が起こったのか、脳処理ができない狀態だ。
「凱莉さん、私、凱莉さんのことが好きだって言っちゃったんですよ?」
「ちゃんと聞いた」
「この気持ちを伝えたら、もう仮じゃいられなくなっちゃうんですよ?」
「そうだな」
私達二人の関係が今日ここで終わる。
そう言っているのにもかかわらず、凱莉さんは笑って私のをし離した。
私の腰に腕を回したまま、右手で髪をでてくれる凱莉さんの仕草に、私の心臓は先ほどとは違う意味で苦しくなった。
この人は、どうしてこんなにおしそうに私を見つめて笑ってくれるんだろう。
その答えを、凱莉さんは直ぐに私に教えてくれた。
「千尋ごめんな。千尋が俺のことを本気で好きになってくれてたなんて気付かなかった。だから俺のほうこそ、もう仮でもなんでもいいと思ってたんだ。それで千尋がずっと俺の側にいるならそれで十分だって」
凱莉さんの言葉は、私が今まで思ってきたこと、そのままだった。
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「俺達の『仮』の始まりは千尋の言葉からだったな。だから今度は俺から言わせてくれ」
凱莉さんの顔から笑顔が消え、彼は真剣な表で私を見つめる。
「人ごっこは終わりにしよう。これからは俺の、本の人になってくれないか?」
凱莉さんの言葉が、凄く遠くに聞こえる。
まるで夢なのか現実なのかわからないくらいだ。
今の言葉は本當に現実なんだろうか。
本気でそう思ってしまうほど、私は凱莉さんの言葉が信じられなかった。
だって……こんな夢みたいな展開、全く予想していなかったんだもの。
本當に?
本當に私、凱莉さんの人になれるの?
ほんとにほんと?
「え……待ってください。これ……ほんと……?」
終わってしまうと覚悟した関係が、こんな形に変化してもいいの?
夢じゃ……ないよね?
「いつから千尋に惹かれてたか、なんて的にはわからない。かっこいい告白をするスキルも持ってない」
私はゆるゆると首を振った。
凱莉さんのことだ。
どうせ山ほどある漫畫のヒーローと自分を比べてるんだろうけど。
そんなこと、どうだっていいの。
たどたどしくて不用で。
それでもちゃんと真っ直ぐ伝えてくれる凱莉さんの言葉が嬉しいんだから。
「いつも俺と同じ目線で対等で。二人一緒に楽しめる千尋と、ずっと一緒にいたいと思ったんだ。俺の橫に千尋がいないということが、全く想像できなくなってしまった」
「私もです……」
どんなに格好いいセリフより、私の心は一番満たされた。
だって凱莉さんは、私と同じことを思ってくれていたということだから。
「千尋、俺と一緒にいてくれる?」
甘い甘い聲で、凱莉さんは私の耳元でそう聞いた。
「はい……。私とずっと一緒にいてください」
「……もちろん。ありがとう、千尋」
自分の意地のために、凱莉さんのとに平手打ちで振られたという恥を利用して、人ごっこという契約を取りつけ。
噓の関係と本當の気持ちに苦しんで。
そして、ごっこが本になった。
ずっとずっと、一緒にいられるんだ。
あれ……。
ということは。
もしかして今日こそはお泊り決行?
「凱莉さん、ビールで乾杯しましょう?」
人になったお祝いと、初めてのお泊りの記念に。
出しっぱなしでぬるくなったビールと冷蔵庫のビールを換しようと立ち上がろうとしたとき。
「いや、俺はお茶でいい」
凱莉さんは私のきを止めた。
「え。どうしてですか?」
「酒飲んだら帰れなくなるじゃないか」
「……え?帰る気ですか?」
「帰るだろ……」
開いた口が塞がらない。
この人の思考回路はいったいどうなっているのだろう。
ついさっき、ずっと一緒に、と甘い約束をわしたではないか。
なのにもう帰るだと?
「ありえないでしょ、それ」
もう遠慮なんてしないし、我慢もしない。
言いたいことはちゃんと言葉にして伝える。
「この狀況で私を置いて帰ろうっていうんですか?」
「置いて帰るとか、人聞きが悪いな」
「今まで凱莉さんと朝まで一緒に過ごせないのは、私達の関係が偽だからだと思ってましたけど。違うんですか?」
そうだと思っていたから、今まで苦しんだし悩んだし諦めようとしてた。
でもこうなったからにはちゃんと答えてもらう。
「千尋……」
凱莉さんは私を見つめてバツが悪そうに眉を下げた。
「俺は……一緒に朝まで過ごしたくないんじゃない。過ごせないんだ」
……どういう意味?
note+ノベルバ+アルファポリス+電子書籍でエッセイ、小説を収益化しつつ小説家を目指す日記
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