《ただいま冷徹上司を調・教・中・!》仮がホントに変わるとき(10)

「ちゃんと説明してくれます?」

泊まらないにしても泊まれないにしても、ちゃんと納得できる説明は必要だろう。

「説明したいんだが……上手く説明できなかったら、早々に千尋に捨てられる可能が……」

「仕事以外では説明下手だってことからい十分解してます。そんなことくらいで捨てるわけないじゃないですか。どれだけ好きだと思ってんですか」

「え……」

私のストレートな『好き』に、凱莉さんはほんのりと頬を染める。

ちょっとやめてよ。

そんな可い顔されたら、めちゃくちゃ恥ずかしいじゃない。

「不意打ちはやめてくれ。千尋の計算のない言葉は心臓に悪い」

「やです。慣れてください」

今まで人に対して好意の言葉なんて、あまり口に出したことはない。

でも凱莉さんには素直に自分の気持ちを言葉にして伝えたいの。

だって本當にずっと一緒にいたいから。

だから私のことは何だって知ってしいし、凱莉さんのことも何だって知りたい。

「上手く説明しようとしなくていいですから。ちゃんと話してくれれば理解できます」

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にっこり微笑んでそう言うと、凱莉さんは観念したかのように「わかった」と呟いて、ぽつりぽつりと説明し始めた。

「俺は人と一緒に寢たくない人間なんだ」

「どうして?」

「一人じゃないと眠れない。隣でモソモソかれるなんて無理だ。それに……」

誰だって二人より一人の方が楽に眠れるのは間違いないけれど。

どうも理由がありそうだな、とじた。

いくつか考えられることはある。

けれどどれが正解かはわからない。

「それに……なんですか?」

想像もできないほどの弾発言でも飛び出すのではないか。

そんなことを考えて、一人で勝手にドキドキしていたのだが。

凱莉さんの答えは、ある意味、私の想像の遙か斜め上をいっていた。

「腕枕で眠る、とか、抱き合って眠る、とか。誰でもやっている王道なこと苦痛で仕方ない。そんなことも千尋にしてあげられないのに泊まるなんて、俺は絶対に無理だ」

「……は?」

……なんだそれ。

あまりにもしょうもなさ過ぎて、私はあんぐりと口を開けた。

「何言ってんですか?」

あまりにも……あまりにもくだらなくないか?

「そんな理由?本當にそんな理由で今までお泊りNGだったんですか?」

「そんな理由って。重大な問題だろう?」

「噓だぁ。本當はもっと重大な問題を隠してるんじゃないんですか?」

「これ以上の重大な問題があるもんか。俺はの夢ともいえるものを葉えてやれないんだぞ?」

こんなことを力説しているにのだから、凱莉さんはやはり本気で言っているのだろう。

私がいろいろと頭を抱えて悩んでいた時間、まるっと返して戴きたい。

「もう……。一人で勝手に教科書が正しいなんて思いこまないでくださいよ」

凱莉さんの教科書には、きっとの理想がたくさん詰め込まれていて、その主人公たちはこの上ない幸せを噛み締めているのだろう。

綺麗に作られた語を、本気での王道の夢だと思い込んでいるなんて。

呆れるほどに可らしい拗らせ方じゃないか。

かなりアホらしいけど。

そのアホさまでも堪らなくしくじさせるなんて、凱莉さんはどれだけ私の中を侵食しているんだろう。

こういうところも貴重で可らしいのだが、の実態を教えてあげなければ、この先ずっと一緒に眠ることはできないであろう。

そのことを思うと、やはり答え合わせは必要だ。

「凱莉さんが王道だと思っている朝の迎え方が、現実問題として正しいのかどうか。ちゃんと解決してあげます」

の思い描いているとの朝の迎え方なんて、実際のところはほぼほぼにとっては迷なもが多いのだ。

理想が崩れ落ちるのは、側ではなくて男側なのかもしれない。

私はソファーの上で凱莉さんと向かい合うようにを斜めに向けて座りなおした。

凱莉さんも同じようにを向け、學ぶ準備は整った。

「まず始めに。朝まで抱き合って眠る、というのは実際では不可能に近いです」

「そうなのか?」

「そもそも抱き合うのも大変じゃないですか?上の腕は回せば済むけど、下の腕はどうすんです?お互いのの下に回そうもんなら五分と持ちません」

何かに気付かされたかのように、凱莉さんの目が見開かれる。

「お互いのに回さず自分のの下なりに置いていたとして。抱き合ってたら大寢返りだって自由に打てないじゃないですか。あれは眠る前にぎゅっと抱き合うだけで充分なんです」

凱莉さんは私の手を軽く握ると、「千尋はそれで満足?」と不安気に聞いてきた。

凱莉さんはどこまで私の気持ちを優先してくれる。

そんな彼にれるだけで、私はいつでも満足なんだ。

「當然です」

そろそろ自信を持っていただきたいものだ。 

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